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2024.11.15
アートセラピーとは?効果、セラピスト資格を取る方法、おすすめの本、ワークショップなど
アートセラピーとは、芸術を通じて心の内側にある感情や思考を表現し、心理的・精神的な癒しを促す療法です。
絵画や彫刻、コラージュなど、さまざまな芸術的手法を活用し、参加者が自己表現を行うことで内面的な気づきを得ることができます。近年、ストレス社会の中でアートセラピーは心のケア方法として注目を集めています。
この記事では、アートセラピーの概要、効果や実践するための資格、ワークショップや書籍について詳しく解説します。
目次
アートセラピーの概要
アートセラピーは、20世紀初頭にヨーロッパやアメリカで発展しました。心理学と芸術療法を組み合わせた療法です。
特に、言葉では表現しづらい感情を芸術を通して表現することで「心の内面で何を考えているか」など、複雑な感情を整理できます。心理療法の一環としても用いられ、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に適用されています。
アートセラピーの歴史
アートセラピーは芸術教育や心理学の分野から発展しました。心理学者のカール・ユングや芸術教育家のマーガレット・ナウムバーグなど、初期の実践者たちは、芸術が持つ自己表現の力に注目し、それを心理療法に応用した歴史があります。
日本でも1970年代以降、精神科や教育現場でアートセラピーの導入が進んでいます。
アートセラピーの効果
アートセラピーの効果について紹介します。
心理的効果
アートセラピーは心理的な効果が非常に高いです。参加者は自己表現を通して内面の感情を解放できます。これにより、抑圧されていたストレスや不安を軽減し、心のバランスを整えることが期待されます。
例えば以下の岡山心理学会の論文では以下の成果が認められています。
・「抑うつ・不安」や「倦怠感」のスコアが、作品鑑賞後および制作後に有意に減少した。
・「満足感」や「自己理解」などの評価も高得点を示し、アートセラピーがリラックスや安定感をもたらすことが示唆された。
参考:J-STAGE「岡山心理学会 大会発表論文集」
身体的効果
アートを通じた活動は心身のリラクゼーションにもつながります。創作活動中、心拍数が下がり、ストレスホルモンの分泌が抑制されることが分かっています。
社会的効果
アートセラピーは個人の心のケアだけでなく、社会的なつながりを促進する役割も果たします。
グループセッションでは、参加者同士のコミュニケーションを深め、共感や理解を生み出すことで、孤独感を減少させる効果があります。特に高齢者施設や学校など、社会的な場でのアートセラピーは集団の心の健康を向上させるのに役立っています。
アートセラピーに必要な資格
アートセラピーを行うためには「アートセラピスト」になる必要があります。
アートセラピストの資格取得要件
日本国内では、一般社団法人やNPO法人が認定するアートセラピスト資格があります。日本でのアートセラピスト資格は、民間資格のみです。
様々な団体がアートセラピー資格取得講座を開いていますので、気になるものに申し込みましょう。資格を取得するには、指定の講座やプログラムを受講し、一定の実習や試験をクリアする必要があります。
学習内容には「心理学の基礎」や「実践的なアート技法」が含まれています。資格取得までの期間は半年から2年程度が一般的です。
資格を活かせる仕事
アートセラピストとして働ける場は多岐にわたります。病院や介護施設、学校、企業のメンタルヘルスサポートなど、心のケアが必要な場所で活動できる資格です。また、独立してワークショップを開催したり、個人セッションを提供したりすることも可能です。
アートセラピーに関するおすすめの本
アートセラピーを学びたい方向けにおすすめの本を3冊紹介します。
『増補新版 はじめてのアートセラピー』吉田エリ 著
増補新版 はじめてのアートセラピー』吉田エリ 著
この書籍は、アートセラピーの基本概念や実践方法をわかりやすく解説しています。写真やイラストが豊富で、初心者でも理解しやすい内容となっています。特に、グループワークやすぐに実践できるワークが追加された増補新版で、実践的なアプローチを学ぶのに最適です。
河出書房新社
『臨床アートセラピー―理論と実践』関則雄 著
『臨床アートセラピー―理論と実践』関則雄 著
本書は、アートセラピーの理論的背景や歴史、そして実践的な手法を詳しく紹介しています。具体的な事例や病態別のアプローチも掲載されており、専門的な知識を深めたい方におすすめです。アートセラピーの教科書的存在として、多くの専門家から支持されています。
『癒しと成長の表現アートセラピー―EXPRESSIVE ARTS THERAPY』小野京子 著
『癒しと成長の表現アートセラピー―EXPRESSIVE ARTS THERAPY』小野京子 著
この書籍では、表現アートセラピーの理論や実践方法を詳しく解説しています。絵画や造形、ダンス、音楽など、さまざまな芸術表現を統合的に活用する手法について学ぶことができます。具体的なエクササイズも紹介されており、実践的なスキルを身につけたい方に適しています。
アートセラピーのワークショップとは
アートセラピーではワークショップ形式を用いることが多いです。ワークショップ形式では複数の参加者が講師と一緒に作品を作ります。
対面形式とオンライン形式があります。対面ワークショップでは、実際にアート作品を制作しながらセラピストや参加者と交流できます。一方、オンラインワークショップは自宅で気軽に参加でき、遠方の方でも受講可能です。
アートセラピーのワークショップに参加するメリット
ワークショップならではのメリットを紹介します。
専門家からの直接的なフィードバックと指導
ワークショップでは、アートセラピストがその場でフィードバックを行い、参加者に具体的なアドバイスを提供します。
これにより、自分自身の表現をより深く理解し、個々の課題に応じた指導を受けることができます。
コミュニティと共に創作活動を共有する体験
ワークショップに参加することで、他の参加者と創作活動を共有し、互いの作品を鑑賞し、意見を交換できます。他者の視点を取り入れることで新しいインスピレーションを得るとともに、孤独感を軽減できます。
アートセラピーを生活に取り入れる方法
アートセラピーはできる限り、アートセラピストのもとで行うことが推奨されています。ただし、自宅などで個人で創作をすることで内面を見つめ直すことも可能です。
自宅でも簡単にアートセラピーを取り入れることができます。例えば、自由に絵を描く、紙粘土で形を作る、好きな色を使ったコラージュを作るなど、創作活動を通じて気持ちをリフレッシュできます。
また家族と一緒に行うことも可能です。気軽にコミュニケーションを取れる家族と一緒に創作をすることで、会話につながり、アドバイスや感想をもらいやすいことが魅力です。
まとめ
アートセラピーは、心理的・身体的な癒しを提供し、個人の心の健康をサポートする力を持っています。
資格を取得して専門的に活動する方法もありますが、日常生活の中で簡単に取り入れることも可能です。
またワークショップに参加することで、専門的な指導を受けたり、コミュニティとの交流を楽しんだりと、特別な体験が得られます。アートセラピーに興味を持った方は、ぜひ書籍を読んだり、実際にワークショップに参加したりしてみてください。
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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。
アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。
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