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2025.3.12
ピカソ「青の時代」とは?作品・背景・影響を徹底解説
世界で最も多くの作品を作った画家・パブロ・ピカソ。ピカソという画家はかなり独特で、キャリアのなかで次々に作風を変えた。
そんななかでも、彼のキャリア初期には「青の時代」という時期がある。ピカソ作品のなかでも特に感情的で象徴的な時期だ。
この記事では、「青の時代」がどのように生まれたのか、その代表作品、作風の変化、そして後のピカソの画業に与えた影響までを詳しく解説していく。
目次
ピカソの「青の時代」とは?
Pablo Picasso 1969, Public domain, via Wikimedia Commons.
ピカソの「青の時代」は、彼が20代前半に迎えた芸術的転換点だ。正確な時期は分かっていないが、1901年から1904年までの約3年間続いた、とされている。
この時期の作品は、青を基調とした冷たい色彩と、孤独や苦悩を描いたテーマが特徴。一言でいうと、ものすごく暗くて地味な作品群だ。当時、ピカソはパリとバルセロナを行き来しながらこれらの作品を制作した。
1901 ~ 1902 年、Femme aux Bras Croisés (腕を組む女性), Public domain, via Wikimedia Commons.
次の「バラ色の時代」へとつながる重要な時期であり、彼の芸術の進化を象徴するものでもある。
ピカソに何があったのか?「青の時代」が生まれた背景
左からピカソ、アンヘル・フェルナンデス・デ・ソト、カルロス・カサヘマス (1900年頃), Public domain, via Wikimedia Commons.
なぜ「青の時代」は生まれたのか。その背景には、ピカソの親友であり画家でもあったカルロス・カサジェマスの自殺がある。
1901年、カサジェマスは恋愛のもつれから自ら命を絶った。ピカソはこの衝撃的な出来事にショックを受け、うつ病にかかってしまう。
元来、ピカソという画家は社交的だ。画家のコミュニティのなかでも、周りとのつながりが強い。「一人で黙々」というよりは、周りからの刺激を受けながら作風を変化させていくタイプだ。
しかしこの時期の数年間、ピカソはほとんど友人と会わなくなったという。それほど、カサジェマスの死は衝撃的だったのである。
ピカソはこの時期、すでに多くの仕事を持っていた。しかし、青の時代の作品は市場でまったくといっていいほど受けなかった。そりゃそうである。誰も、家にこんな暗い絵を飾りたくはない。
その結果、経済的にも困窮していく。若くして売れたピカソにとって、唯一といっていいほど経済的にしんどかった時期が青の時代だ。
「青の時代」の作品をモチーフ別に読み解く
1902–03年、「スープ」、キャンバスに油彩、38.5 x 46.0 cm、オンタリオ美術館、トロント、カナダ, Public domain, via Wikimedia Commons.
「青の時代」の作品は、単に青を基調としたものではなく、いくつかの重要なモチーフによって分類できる。例えば以下のようなモチーフが青の時代にはよく見られる。
・死
・盲目
・孤独
・貧困
・母と娘
「死」に関する作品では「死せるカサジェマス」が、「盲目と孤独」のテーマでは「盲人の食事」や「年老いたギター弾き」が代表作だ。
老いたギタリスト、油彩・パネル、122.9 x 82.6 cm (48 3/8 x 32 1/2 インチ), Public domain, via Wikimedia Commons.
この時期のピカソは「ただ家に引きこもっていた」というわけではない。バルセロナやパリを移動していた。その現地で見た人々からインスピレーションを得たうえで、これらのモチーフを得たのだ。
ピカソの作風の変化と「青の時代」の位置づけ
冒頭で記載した通り、ピカソは生涯にわたりさまざまな画風を試みた。「青の時代」の前は写実的な作品が多く、後に「バラ色の時代」へ移行し、より明るく柔らかい作風へと変化していく。
以下の表にピカソの作風の変遷をまとめた。
| 時代 | 特徴 |
|---|---|
| 初期(1895年~) | 写実的な画風、19世紀スペイン絵画の影響 |
| 青の時代(1901年~) | 青を基調とした陰鬱な雰囲気、孤独や悲しみの表現 |
| バラ色の時代(1904年~) | 温かみのあるピンクやオレンジの色調、軽やかな雰囲気 |
| アフリカ彫刻の影響(1906年~) | アフリカ美術からの影響、単純化されたフォルム |
| キュビズム(1907年~) | 物体を幾何学的に分解・再構成、視点の多重化 |
| 新古典主義・シュルレアリスム(1919年~) | 古典的な人体表現と幻想的要素の融合 |
| 戦争のテーマ(1937年~) | 戦争の悲惨さや社会批判的な作風 |
| 表現主義・再解釈(1945年~) | 過去の作品を独自のスタイルで再解釈 |
このなかでも、「青の時代」は、今世界中でとても高い人気がある時期だ。マンガ『ブルーピリオド』が出たときに、タイトルにハッとした方も多いのではなかろうか。
また、青の時代はピカソの芸術の中で特異な位置を占めており、彼の感情的な表現が最も顕著に表れた時期といえる。
「青の時代」の終焉と「バラ色の時代」へ
パブロ・ピカソ、1905年、ギャルソン・ア・ラ・パイプ、(パイプを持つ少年)、個人蔵, Public domain, via Wikimedia Commons.
そんな「青の時代」は1904年に終わりを迎え、ピカソは「バラ色の時代」へと移行する。1904年に何があったのか。モデルを務めていた、フェルナンド・オリヴィエと出会い、恋人関係に発展したのだ。
オリヴィエは『アヴィニョンの娘たち』のモデルとしても知られている。彼女との生活のなかでピカソはだんだんと精神的に回復し、作品の色調は明るくなる。また道化師やサーカスの演者など、より軽やかなテーマが多く描かれるようになった。
まぁ、とはいえ健康な恋愛というわけではなく、ピカソは嫉妬のあまりオリヴィエを束縛しまくっており、たびたび喧嘩に発展していたのだが……。ともあれ、オリヴィエは、絶望の淵にいたピカソをよみがえらせたミューズとして、今でも広く知られている。
まとめ
さて、今回はピカソの「青の時代」について解説した。彼の芸術的キャリアの中でも特に感情的な要素が強調された時期だったのは間違いない。
カサジェマスの死という個人的な悲劇、社会の底辺に目を向けた視点、そして戦略的な色彩の選択が、この時代の作品を形作った。
ピカソに理系的なイメージを強く持っている方も多いと思う。マーケティングもセールスも上手だし、キュビスムをはじめ、理系的な作品をたくさん作ったのは間違いない。
しかし、「青の時代」をあらためて理解すると「ピカソもやっぱり芸術家だな」と思う。この時期の作品を理解することで、ピカソの芸術感がより強くわかることだろう。
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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。
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