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2022.10.24

国宝以外も見どころ満載!『国宝 東京国立博物館のすべて』でたどる東博150年の歩み

2022年、創立150周年を迎えた東京国立博物館(通称:東博、トーハク)。日本で最も長い歴史を持つ博物館として活動を続け、150年の間に積み重なった所蔵品は実に約12万件にも及びます。

『国宝 東京国立博物館のすべて』から第2部「東京国立博物館の150年」展示風景。右奥は天皇が行幸に用いる際に乗った『鳳輦(ほうれん)』(江戸時代・19世紀)

そのうち国宝89件、重要文化財648件のコレクションは日本有数として知られ、収蔵品や寄託品で構成される「総合文化展」などで期間や作品を入れ替えながら公開してきました。

しかし国宝89件をまとめて展示したことは過去に1度もありません。そこで東博では創立150周年を記念し、展示替えを挟みながら、すべての国宝を公開するという空前絶後の『国宝 東京国立博物館のすべて』を開いています。

日本中の国宝の約1割が東博に。眼福の国宝絵画コレクション

第1部「東京国立博物館の国宝」展示風景から。奥:長谷川等伯『松林図屛風』 安土桃山時代・16世紀 (展示期間 : 10/18~30)、手前:狩野長信『花下遊楽図屛風』 江戸時代・17世紀 (展示期間 : 10/18~11/13)

2部構成の前半が国宝です。国宝を絵画、書跡、東洋絵画、東洋書跡、法隆寺献納宝物、考古、漆工、刀剣の8分野に分けて順に展示。まず絵画では、誰もが知る名宝、長谷川等伯の『松林図屛風』をはじめ、江戸時代の肖像画の傑作である渡辺崋山の『鷹見泉石像』、それに合戦絵巻の代表作として伝わる『平治物語絵巻 六波羅行幸巻』などを公開しています。

李迪『紅白芙蓉図』中国・南宋時代・慶元3(1197)年(展示期間 : 10/18~11/13)

続く書跡や東洋絵画では、原装幀のまま『古今和歌集』を完存する最も古い『古今和歌集(元永本)上帖』や、南宋の花鳥画の優品として伝わる李迪(り てき)の『紅白芙蓉図(こうはくふようず)』も見どころ。そのうち『紅白芙蓉図』には、1日で白から紅に変化する酔芙蓉が描かれていますが、2図の中で朝から夕方への時間の経過を表し、1図でも蕾から満開までの展開が示されているというから驚きます。

法隆寺献納宝物とは?飛鳥時代と江戸時代の国宝の意外な出会い

『竜首水瓶』 飛鳥時代 (展示期間 : 10/18~12/11)

法隆寺献納宝物とは法隆寺に伝来し、1878年に皇室へと献納された飛鳥から奈良時代の仏教美術を中心とする作品群のことです。会場では聖徳太子の生涯を絵画化した最古でかつ最大規模の秦致貞(はたのちてい)の『聖徳太子絵伝』や、有翼馬といった線刻が見事な『竜首水瓶』などが紹介されています。

手前:本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)『舟橋蒔絵硯箱』 江戸時代・17世紀 (展示期間 : 10/18~11/13) 奥:秦致貞『聖徳太子絵伝』 平安時代 延久元(1069)年 (展示期間 : 10/18~12/11)

この展示室ではあわせて考古や漆工も公開されていますが、本阿弥光悦の『舟橋蒔絵硯箱』越しに『聖徳太子絵伝』が見えたりするなど、普段は一緒に展示されることのないような作品同士の出会いも面白いかもしれません。

入れ替えなし!日本最多の国宝刀剣コレクションが一挙公開!

相州正宗『刀 金象嵌銘 城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押)(かたな きんぞうがんめい じょういずみのかみしょじ まさむねすりあげ ほんあ(かおう))』 鎌倉時代・14世紀 (全期間展示)

近年人気上昇中の刀剣も極めて充実しています。会場では「国宝刀剣の間」と題し、日本最多のコレクションを誇る19件の国宝刀剣のすべてを、1つの展示室にて全期間にわたって公開しています。

「国宝刀剣の間」展示風景

いずれの刀剣も暗がりの中で浮かび上がるように展示されていますが、特に目立っているのが中央に置かれた『太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)』です。豊臣秀吉の正室高台院や徳川秀忠が所持し、徳川将軍家に伝来する天下五剣の1つに数えられる名刀で、鋭くも優美な太刀姿を見せています。

三条宗近『太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)』 平安時代・10~12世紀 (全期間展示)

今回コラボグッズを展開する「刀剣乱舞ONLINE」でもお馴染みの名品ということもあり、会期中も人気を集めるのではないでしょうか。

東博の成り立ち、知っていましたか?東博150年の歴史の原点をたどる

第2部「東京国立博物館の150年」展示風景

さて見渡す限りの国宝、国宝…。前半だけでも満足してしまいますが、後半にこそ展示の要があると言って良いかもしれません。とするのも、明治から令和に至る東博150年の歩みを、各時代に収蔵された作品や資料を通して紹介しているからです。

湯島聖堂博覧会の再現コーナーより名古屋城金鯱の実物大レプリカ。


1872年、旧湯島聖堂大成殿で開催された博覧会をきっかけに東京国立博物館は誕生します。これは日本初の官設博覧会で、古美術品から動植物の標本など620件余りが展示され、約50日の会期に15万人が来場するなどして話題を集めました。そのうち最も人気が高かったのが名古屋城の金鯱だったと言われています。

左:歌川広重(三代)『東京名所上野公園内国勧業第二博覧会美術館図』 明治14(1881)年 右:ジョサイア・コンドル『上野博物館遠景之図』 明治時代・19世紀 (ともに全期間展示)

そして1882年に上野公園の現在地へ拠点を移し、活動を本格化させていきます。前年にはジョサイア・コンドルの設計により旧本館が落成。第2回内国勧業博覧会の主会場として利用されました。その後、博物館は宮内省の所管となり、のちに東京帝室博物館に改称され、国家の文化的象徴になるべく歴史・美術博物館としての性格を強めていきました。

生人形からキリンの剥製標本まで。東博の意外な収蔵品とは?

三代安本亀八の制作による生人形 (全期間展示)

こうした時代を伝える作品として興味深いのが、生人形(いきにんぎょう)や剥製標本です。生人形とは、まるで生きているように写実的に制作された日本人形の一種で、江戸時代末から明治時代にかけて見世物として流行しました。実は東博では1970年代までマネキンのように収蔵品を着付けした展示が行われていたそうです。

『キリン剥製標本』 明治41(1908)年 国立科学博物館 (全期間展示)

「東博にキリン?」と目を丸くしてしまうのが『キリンの剥製標本』です。これは1907年に初めて日本へ来た雌雄2頭のキリンのうち、雄の「ファンジ」の剥製標本で、東京帝室博物館にて展示されていました。ちょうど水を飲むキリンのすがたを表していて、関東大震災の後、現在の国立科学博物館へと譲渡されます。かつての東博はこうした自然史資料も重要な所蔵品だったのです。

戦後コレクションを拡充していった東博。未来へと受け継ぐための大切な取り組みを紹介

尾形光琳『風神雷神図屏風』 江戸時代・18世紀 (展示期間 : 10/18~11/13)

終戦後の1947年に国立博物館官制が公布・施行されると、東博は国民のための博物館としての一歩を踏み出します。戦後の復興期の活動で重要なのは、厳しい社会情勢の中、文化財の散逸を防ぐため、寄贈や購入により、国宝や重要文化財を含む多くの名品を収集したことです。

『摩耶夫人および天人像』 飛鳥時代・7世紀 (全期間展示)

また宮内省や文化財保護委員会(現文化庁)からも名品が加わります。例えばかつて皇室に献上されていた『摩耶夫人および天人像』といった法隆寺の献納宝物も東博へと移されました。

「金剛力士立像』 平安時代・12世紀 (全期間展示)

最後には「令和の新収蔵品」として、今年2月に新たに加わった『金剛力士立像』を展示。1930年代の台風に大きく損傷していましたが、近年の修復によってかつてのすがたを取り戻した様子も紹介しています。文化財を収集して公開するだけでなく、未来へと受け継ぐために保存や修復する活動も博物館にとって大事なことなのです。

主な会期は4期。展示期間や予約開始日をチェックしよう

手前:『扁平鈕式銅鐸』 弥生時代・前2~前1世紀 (展示期間 : 10/18~12/11) 奥:『埴輪 挂甲の武人』 古墳時代・6世紀 (展示期間 : 10/18~12/11)

最後に展示替えの情報です。はじめに「展示替えを挟みながら」とご紹介したように、89件の国宝が会期中すべて展示されているわけではありません。会期中に国宝の入れ替えが行われます。
※国宝刀剣は全期間展示

『国宝 東京国立博物館のすべて』会場内グッズ売り場。利用には観覧チケットが必要です。

展覧会公式サイトには出品リスト(PDF)も掲載されていますが、どの会期に行くのかは悩ましいところ…。そこでイロハニアートで本記事に先立ち、おおむね4期に分かれる会期毎の主なおすすめの展示品、27件をご紹介しています。また本展は事前予約制ですが、予約開始日も記載されているので分かりやすいのではないでしょうか。

▼関連記事:
4期に分かれた展示をさくっと紹介!「国宝 東京国立博物館のすべて」東博の国宝が集結!
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菱川師宣『見返り美人図』 江戸時代・17世紀 (展示期間:(展示期間 : 10/18~11/13。それ以降は複製を展示)

東博の誇る国宝をすべて公開しつつ、150年の歴史を名品とともにたどる『創立150年記念 国宝 東京国立博物館のすべて』。これからも会期の後半にかけて狩野永徳の『檜図屛風』や岩佐又兵衛の『洛中洛外図屛風(舟木本)』などの国宝をはじめ、酒井抱一の『夏秋草図屛風』といった重要文化財の名作も続々お披露目されます。まさに節目の年に相応しい充実した展覧会です。ぜひお出かけください。

『創立150年記念 国宝 東京国立博物館のすべて』 東京国立博物館
開催期間:2022年10月18日(火) ~12月11日(日)
所在地:東京都台東区上野公園13-9
アクセス:JR線上野駅公園口下車徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅下車徒歩15分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩15分
開館時間:9:30~17:00 
 ※金曜・土曜日は20:00まで
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般2000円、大学生1200円、高校生900円、中学生以下無料
 ※事前予約制(日時指定)
https://www.tnm.jp
https://tohaku150th.jp

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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