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EVENT

2022.11.8

めくるめく空想と想像の物語。junaidaの初の大規模個展がPLAY! MUSEUMにて開催中!

『Michi』や『の』、それに『怪物園』(すべて福音館書店)など、近年出版した絵本が人気を集める画家のjunaida(ジュナイダ、1978年生まれ)。東欧や北欧を思わせるような街並みを背景に、人物や生き物などが細かく描かれた絵本は、美しさやはかなさを感じさせ、多くの人々の心をとらえています。

『junaida展「IMAGINARIUM」』(PLAY! MUSEUM)から「浮遊の宮殿」展示風景。展示室内の撮影もできます。(動画は撮影不可)

junaidaは作品を描くだけでなく、2010年には京都にギャラリー&ショップである Hedgehog Books and Gallery を立ち上げ、Hedgehog Booksから画集を出版するなどますます幅広く活動しています。そのjunaidaの初めての大規模個展が、東京・立川のPLAY! MUSEUMでスタート。見どころをご紹介します。

タイトルの「IMAGINARIUM(イマジナリウム)」に込められた意味とは?

「輪郭の扉」展示風景。会場内の5ヶ所に隠れキャラクターも描かれています。

まず会場へと足を踏み入れて驚くのが、いきなりすがたを現す「輪郭の扉」です。扉の前には赤い布で作られた円形の作品が吊るされていて、中には展覧会のメインビジュアルでタイトルにも付けられた「IMAGINARIUM」が描かれています。

メインビジュアル「IMAGINARIUM」のバナー

「IMAGINARIUM」とは、イマジネーションの「IMAGINE」とアクアリウムなどの語尾「RIUM」をミックスした言葉。junaidaはイマジネーションを自分の作品に共通する言葉だとしていて、その上に美術館という「ミュージアム」の響きが欲しいと考え、「MAGINARIUM(イマジナリウム)」と名付けました。

「交錯の回廊」展示風景。作品原画は『TRAINとRAINとRAINBOW』原画(Hedgehog Books、2011)©junaida

扉から直接中を伺うことはできませんが、思い切って開けてみましょう。するとそこに広がるのが、junaidaによる「MAGINARIUM」、つまり「想像の美術館」の世界です。まず緩やかにカーブする回廊を舞台とする「交錯の回廊」では、初期の『TRAINとRAINとRAINBOW』(Hedgehog Books、2011)や三越のクリスマスディスプレイのために描いた作品『HOME』(サンリード、2013)などの原画を見ることができます。

怪物たちに誘われながら、宮殿をイメージした展示空間へと進もう!

『怪物園』アニメーション。TVCF、Webムービーなどで活動する映像作家の新井風愉が制作しました。

こうした一枚一枚の原画をじっくり堪能して、さらに回廊を奥へと進みましょう。するとにわかに辺りは暗くなり、色鮮やかな怪物たちが動く様子が見て取れます。これこそが今回初めて公開された『怪物園』のアニメーションです。

『怪物園』怪物行進アニメーション

まさに怪物たちが百鬼夜行さながら闊歩していますが、それぞれの性格が表されているのか、1体1体の動きがユニークで異なっています。怪物たちのすがたと重ね合わせながら、一緒に行進するのも楽しいのではないでしょうか。

「浮遊の宮殿」展示風景。柱や壁の下を金色に装飾し、ゴージャスな空間が広がっています。展示デザインは、ブランドの企画や空間のディレクションなどで幅広く活躍する建築家の張替那麻が担いました。

怪物たちの行進の先に登場するのが、3連作「IMAGINARIUM」をはじめとする約100点もの絵本原画が展示された「浮遊の宮殿」です。ここではアニメーションとなった『怪物園』をはじめ、絵本デビュー作である文字のない絵本『Michi』、またすべての文が「の」で連なり循環する絵本『の』の原画などを楽しむことができます。

「残像の画廊」展示風景

さらに続く「残像の画廊」では、宮沢賢治へのオマージュ「IHATOVO」シリーズや、伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(集英社、2020)の装画なども展示。最後の「潜在の間」では、「闇」をテーマとした連作の『UNDARKNESS』 (Hedgehog Books、2021)や、junaidaが宮沢賢治と並んで愛するミヒャエル・エンデ『鏡のなかの鏡』をオマージュした最新作『EDNE』など4作品の原画が並んでいます。

「潜在の間」展示風景。「浮遊の宮殿」と「潜在の間」にはJunaida自らが作曲した音楽がBGMとして流れています。

真紅の空間に浮かび上がり、光と闇の世界を行き交うような原画の美しさと言ったら…。もう、ため息が漏れるほどでした。

junaidaの描く絵本の魅力とは?想像や空想が織りなす物語へと沈み込む

絵本『怪物園』原画(福音館書店、2020)©junaida

改めてjunaidaの描く絵本の魅力とは何なのでしょうか。いずれの原画も基本的に透明水彩を用いて描かれていますが、瑞々しくも深みのある色彩、さらにはどれほど拡大してもブレないような緻密でかつ構造的とも言えるような表現には凄みがあります。

「滞在の間」展示作品

そして明るさと闇が同居するような作品は、幻想的であったり耽美的であったりと、さまざまな雰囲気を醸し出していますが、時に現実から空想の世界へと引き摺り込まれるような感覚にもとらわれます。一度、絵本の中の異世界へ身を委ねると、もう戻れないような気持ちにさせられるのです。

絵本『Michi』原画(福音館書店、2018)©junaida

また絵本からエッシャーの描いただまし絵のような構造物を思い浮かべたり、ヒエロニムス・ボスの魑魅魍魎な絵画を空想したりするのも楽しいかもしれません。junaidaの世界からはさまざまなイメージが立ち上がります。

PLAY! CAFEでのjunaidaの絵本をイメージしたメニュー。「怪物ギョロギョロプレート」などが楽しめます。

展示作品は実に約400点。プレス内覧時にPLAY! プロデューサーの草刈大介(ブルーシープ)は、「鑑賞に7時間かかる」と冗談っぽく語りましたが、1点1点の原画の緻密な情報量、あるいは表現力を鑑みるとあながち誇張ではないかもしれません。当日は再入場も可能なので、カフェなどで途中に休憩を挟むのもおすすめです。

junaida展「IMAGINARIUM」展示風景。絵本の中を空間として体感できるようなデザインになっています。

宮殿のような空間で原画を浴びるように体験するPLAY! MUSEUMのjunaida展「IMAGINARIUM」。光と闇とがともにあり、想像や空想が織りなす物語を、あなたも深く沈み込むように体感してください。

PLAY! SHOPから。junaida展のオリジナルグッズが数多く販売されています。

展覧会情報

junaida展「IMAGINARIUM」PLAY! MUSEUM
開催期間: 2022年10月8日(土)~2023年1月15日(日)
所在地: 東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 2F
アクセス:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
開館時間: 10:00~17:00
 ※土日祝は18:00まで
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:2022年12月31日(土)〜2023年1月2日(月)
観覧料:一般1800円、大学生1200円、高校生1000円、中・小学生600円、未就学児無料
※当日券で入場可。ただし休日および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)を推奨
https://play2020.jp

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はろるど

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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