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2023.2.1
【2月のおすすめ展覧会5選】ヒグチユウコからマリー・ローランサンとモード、速水御舟まで
1月末に10年ぶりとも言われる大寒波が日本列島を襲い、全国的に寒い冬を迎えています。そうした中、2月は春に向けて新たな展覧会が開幕する時期です。人気画家のヒグチユウコの個展からマリー・ローランサン、日本画家の速水御舟の回顧展などと見逃せない展覧会が少なくありません。おすすめ5選をご紹介します。
目次
『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』の会場となる三菱一号館美術館。4月9日までの会期を終えると、施設・設備機器の機能更新のため大規模修繕工事のため長期休館します。再開は2024年度を予定。
おすすめ展覧会①
貴重な原画で彩られた「サーカス」が出現!画家で絵本作家としても人気のヒグチユウコの個展が開催
空想と現実を行き交うような発想とタッチによって、作品制作のみならず絵本の刊行でも活躍する画家のヒグチユウコ。初の大規模個展が2019年に世田谷文学館(東京)ではじまると、神戸や愛知、岡山などを全9会場にて開かれ、大変な人気を集めました。その全国を巡った約500点の作品に加え、巡回では紹介しきれなかった作品をあわせた約1000点もの展示品にてヒグチユウコの画業を紹介するのが、森アーツセンターギャラリーで行われる『ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END』です。
ここでは絵本のデビュー作「ふたりのねこ」にはじまる原画を展示しつつ、貴重な原画で彩られる「サーカス」の空間を構築。さらに可愛くも不穏なヒグチ流ホラーともいえる作品や、本の装画や企業への作品提供、映画にまつわる作品など、ますます幅を広げる最近の仕事も明らかになります。また全9会場ごとに描き下ろされたメインビジュアルが一挙に公開され、本展のための最新作『終幕』(2022年)もお披露目されます。
『ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END』 森アーツセンターギャラリー
開催期間:2023年2月3日(火)~4月10日(月)
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52F
アクセス:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩3分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩6分
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
会期中無休
料金:一般・大学生・専門学生2000円、中高生1600円、小学生600円
https://higuchiyuko-circus.jp/
おすすめ展覧会②
あの「サトちゃん」の生みの親!キャラクターデザインの先駆者、土方重巳の仕事をたどる
1915年に生まれた画家の土方重巳(ひじかた しげみ)は、帝国美術学校(武蔵野美術大学の前身)にて図案を学ぶと、東宝映画株式会社に入社してポスターや広告の仕事を手がけました。そして戦後、作家の飯沢匡と出会ってからは、子どもに向けた仕事を中心に企業の人形アニメーションCMなどにも取り組みます。今も愛される佐藤製薬のキャラクター「サトちゃん」の生みの親としても知られてきました。
その土方の仕事を関東にて初めて本格的に紹介するのが、横須賀美術館にて開かれる『キャラクターデザインの先駆者 土方重巳の世界』 です。展示では土方が東宝で戦前戦中に手がけた名作映画や文化映画のポスター、また戦後フリーのデザイナーとして手がけたバレエやオペラの公演ポスターやチラシも多数紹介。NHKテレビ「おかあさんといっしょ」の人気を集めた人形劇「ブーフーウー」にちなむ原画をはじめ、子どもたちに愛された「人形絵本」のためのデザイン画も公開されます。
『キャラクターデザインの先駆者 土方重巳の世界』 横須賀美術館
開催期間:2023年2月11日(土)~4月9日(日)
所在地:神奈川県横須賀市鴨居4丁目1番地
アクセス:京浜急行線馬堀海岸駅1番乗り場から京急バス「観音崎」行(須24、馬24)、「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前」(約10分)下車、徒歩約2分
開館時間:10:00~18:00
休館日:3月6日(月)、4月3日(月)
料金:一般1000円、大学生・高校生・65歳以上800円、中学生以下無料
https://www.yokosuka-moa.jp/
おすすめ展覧会③
時代を切り開いた同い年のふたりのアーティスト。Bunkamura ザ・ミュージアムで見たいローランサンとシャネルの創作世界
ふたつの世界大戦に挟まれた1920年代のパリ。それはともに1883年生まれの画家マリー・ローランサンとデザイナーのココ・シャネルが、美術とファッションの境界を交差するように活躍した時代でした。そうした2人の活動を軸に、ポール・ポワレやジャン・コクトー、またマン・レイといった表現者によるパリの芸術界を俯瞰するのが、Bunkamura ザ・ミュージアムにて開かれる『マリー・ローランサンとモード』です。
展示では「狂乱の時代のパリ」や「越境するアート」、それに「モダンガールの変遷」などをテーマに、ローランサンの絵画はもとより、シャネルの軌跡や1910〜1930年代のファッションを、オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館(※)などはじめとする国内外のコレクション約90点にて紹介します。ともに時代を切り開こうとした、ローランサンとシャネルの2人の女性の創作の真価が明らかとなります。
※マリー・ローランサンの世界で唯一の専門美術館。コレクションは現在非公開。
『マリー・ローランサンとモード』 Bunkamura ザ・ミュージアム
開催期間:2023年2月14日(火)~4月9日(日)
所在地:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
アクセス:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東京メトロ銀座線、京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線渋谷駅A2出口より徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日:3月7日(火)
料金:一般1900円、高校・大学生1000円、小・中学生700円
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_laurencin/
おすすめ展覧会④
東京以外では15年ぶりの回顧展!常に変化を求め、挑戦を続けた日本画家、速水御舟の軌跡
明治の末期から昭和初期にかけて活躍した日本画家の速水御舟(1894〜1935年。はやみ ぎょしゅう)は、約30年という短い画家生活でありながらも、画風を次々と変化させつつ、対象の真実に肉薄しようと日々絵筆をとり続けました。大正時代の細密描写による写実表現から、古典的な絵画への回帰を経て、単純化と平面性を伴う後期作品への変化は、型にはまることを嫌い、破壊と創造を繰り返した御舟の生き様が示されています。
茨城県近代美術館で開かれる『速水御舟展』では、本画約100点と素描によって御舟の画業を時間を追って紹介。横山大観や小林古径といった日本画家だけではなく、安井曾太郎や岸田劉生ら洋画家にも高く評価された作風の変遷をたどります。なお東京以外の地域で大規模な御舟展が開かれるのは約15年ぶりのこと。花卉画や花鳥画を中心とした、美しく、香しくも、はかない御舟の絵画世界を目の当たりにするまたとない機会となります。
『速水御舟展』 茨城県近代美術館
開催期間:2023年2月21日(火)~3月26日(日)
所在地:茨城県水戸市千波町東久保666-1
アクセス:JR線水戸駅南口より徒歩20分。JR線水戸駅北口8番のりばから「払沢方面、または本郷方面」行きのバスに乗車し、「文化センター入口」にて下車約5分
開館時間:9:30~17:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:3月13日(月)
料金:一般1100円、高校・大学生870円、小・中学生490円、満70歳以上550円
https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/
おすすめ展覧会⑤
長期休館前の最後の展覧会。明治時代の浮世絵師、落合芳幾と月岡芳年が目指した表現とは?
江戸後期を代表する浮世絵師、歌川国芳の門下で切磋琢磨した落合芳幾(1833〜1904年。おちあい よしいく)と月岡芳年(1839〜1892年。つきおか よしとし)。一時は幕末の風潮を反映した血みどろ絵を一緒に手がけるも、芳幾は発起人として関わった「東京日々新聞」(毎日新聞の前身)の新聞錦絵を描く一方、芳年は国芳から継承した武者絵を制作し、歴史的な主題の浮世絵を制作しました。ともに人生半ばの30歳前後で明治維新を迎えたふたりは、最後の浮世絵師と呼ばれています。
三菱一号館美術館の『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』では、幕末明治の浮世絵を網羅する「浅井コレクション」などの個人コレクションを中心に、ライバル関係にもあったふたりの絵師の創作を紹介。写真や石版画、それに新聞や雑誌といった新たな技術やメディアが入った明治時代、衰退する浮世絵の中で芳幾と芳年はどのように活動したのかをたどっていきます。なお同館は本展終了後、大規模修繕工事のために長期休館(2024年度中のリニューアルオープンを予定)に入りますが、その前の最後の展覧会となります。
『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』 三菱一号館美術館
開催期間:2023年2月25日(土)~4月9日(日)
所在地:東京都千代田区丸の内2-6-2
アクセス: JR線東京駅丸の内南口より徒歩5分。都営三田線日比谷駅B7出口、および東京メトロ千代田線二重橋前〈丸の内〉駅1番出口よりそれぞれ徒歩3分
開館時間:10:00~18:00
※金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日:3月6日(月)、3月13日(月)、3月20日(月)
料金:一般1900円、高校・大学生1000円、小・中学生無料
https://mimt.jp/
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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