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2023.2.8
Netflixで話題の『ONI』の世界をダイナミックに空間演出!PLAY! MUSEUMで展覧会が開催中
ピクサー出身の堤大介とロバート・コンドウが率いる、アメリカのアニメーションスタジオ「トンコハウス」。2014年のデビュー作『ダム・キーパー』 は、アカデミー賞短編アニメーション賞にもノミネートされて注目を浴びました。
2022年10月には、堤大介が監督を務める初の長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』 が Netflixオリジナル作品として公開。日本で古くから描かれてきた鬼を題材に、森に暮らす妖怪や神々たちが心に潜む恐れと向き合いながら成長する全4話(計154分)の3DCGアニメーション作品です。
目次
トンコハウス・堤大介の「ONI展」展示風景。特設シアターを除き撮影ができます。
その『ONI』を空間演出で味わう新しいエンタテインメント型の展覧会が、東京・立川のPLAY! MUSEUMにてスタート。見どころをご紹介します。
神々山に住むおなりとなりどん。鬼と戦うために必要な「クシの力」とは?
「なりどん」と「おなり」 dwarf studios 2019年
まず会場に入って出迎えてくれるのが、10歳の女の子で主人公の「おなり」と、父とされる「なりどん」の人形です。ヒーローに憧れ、鬼から村を守る使命に燃えるおなりは、神々小学校に通っていて、言葉を持たずに遊んでばかりいる少し変わった雷神さまのなりどんとふたりで暮らしています。
神秘的な森に囲まれた神々山の村では、100年に1度に浮かぶ「鬼月」の日に、鬼が襲ってくると伝えられていて、学校では来るべき日に鬼と戦うため、それぞれが先祖から受けついできた「クシの力」を目覚めさせようと訓練します。
『ONI ~ 神々山のおなり』場面写真 © 2022 Tonko House Inc.
お皿の水をこぼすと気絶してしまうおっちょこちょいのかっぱは、おなりを信じて寄り添う大切な親友です。そして生徒の「クシの力」を引き出そうとする天狗先生のもと、娘で成績優秀なアマテンや体力自慢のなま&はげ、そして流行に敏感なアン・ブレラなど、日本の民話から現代にアップデートされたユニークなキャラクターたちによって物語が進行します。
もはや実写を超える!トンコハウスによる美しい自然描写と光と陰影の映像表現
『ONI ~ 神々山のおなり』場面写真 © 2022 Tonko House Inc.
展示では『ONI』のさまざまな場面が映像で紹介されていますが、とりわけ目を見張るのはトンコハウスが得意とする美しい自然描写と圧倒的な光や陰影の映像美です。
『ONI ~ 神々山のおなり』場面写真 © 2022 Tonko House Inc.
神々山のモデルとなったのは屋久島ですが、精霊が住んでいるような森の光景を3DCGにて極めて精緻に表現。もはや実写では表せないような美しい光と色が画面から溢れ出ています。
掛軸のように手漉きの和紙へと映像を投影しているのも見どころの1つ。ちょうど空調によってゆらゆらと揺れていて、それが映像の中の風や光の移ろいとマッチしています。あくまでも偶然に過ぎませんが、『ONI』の映像表現の真髄を感じることができました。
おなりが鬼の村で見た驚きの光景とは?なりどんを助けるべく立ち向かう仲間たち
「雷神太鼓の轟」展示風景。手前に「戻り橋」の再現展示があります。
鬼の村とおなりが住む神々山をつなぐ「戻り橋」を渡って、さらに先へと進みましょう。薄暗がりの空間に広がるのは「迷いの森」です。実はおなりはなりどんから受け継がれているはずの「クシの力」、つまり雷神の力が出て来ずに思い悩んでしまいます。
会場内に再現された祭りやぐら。『ONI』のクライマックスシーンに登場します。
そして自分の過去と鬼について何か隠していることに気づいたおなりは、真実を知るべく「戻り橋」を渡って鬼の村へと行ってしまうのです。そこで目にした驚きの光景とは…。物語は思いもよらない展開へと大きく動き出します。
音によって無数の森の精霊「モリノコ」が発光し、空間を巡るインスタレーション。実際に太鼓を叩いて光らせることができます。
ついにやって来た鬼月の夜、なりどんは心の中に潜んでいた恐れが黒い影になり、鬼の力に飲み込まれてしまいます。おなりは鬼の村にて本当の自分を知ることになりますが、それでもなりどんを助けようとして仲間たちと一緒に立ち向かうのです。
トンコハウス・堤大介の「ONI展」展示風景。映像は『ONI』のクライマックにおけるアマテンのすがたです。
そこで聞こえてくるのが「おなり」や仲間による「どんつこつこつこ わっしょい!わっしょい!」の掛け声です。さらに展示では物語のクライマックスに登場するやぐらを再現し、太鼓を叩くことで森の中の精霊であるモリノコの光を生み出す演出も行われています。
メイキングの展示や特設シアターも見どころ。現代の新しい民話『ONI』の世界を体感する
今回の展覧会は、DRAWING AND MANUALを率いる映像作家の菱川勢一とブルーシープによる共同制作。手づくりの和紙提灯やお面、それに凧や祭りやぐらといった、日本の伝統的なものづくりを表すような作品と『ONI』の映像美とが渾然一体となり、まるで異空間へトリップしたような体験を得ることができます。
「パイロット版のためのセット」 dwarf studios 2019年 当初想定されたコマ撮りのために作られたおなりの寝室のセットです。
『ONI』の制作プロセスを紹介したメイキングの展示も見どころです。パイロット版のためにつくられたドワーフのコマ撮り用の人形やスタジオセットから、キャラクターを描いたスケッチ、さらにカラースクリプトやライティングといったトンコハウスの映像づくりがパネルなどにて展示されます。
最後の特設シアターでは『ONI』をはじめとしたトンコハウスの4つアニメーション作品を上映。『ONI』は1日数回時間指定で、会期中期間を区切って全4話が上映されます。スケジュールは公式サイトをご確認ください。
PLAY! SHOP。おなりやかっぱのぬいぐるみなどのトンコハウスによる関連グッズをはじめとした、『ONI』のキャラクターをあしらったアイテムが販売されています。
おなりの成長を通じて、見えないものを恐れる心の闇と そこに差し込む真実の光、さらに親子の絆や友情を描き出した『ONI』。それだけに留まらず、社会におけるヘイトや分断、自然環境と人間の共存など現代の抱える諸問題も問われていて、奥深い作品に仕上がっています。
あらゆる世代が楽しめる現代の新しい民話『ONI』の世界を、PLAY! MUSEUMにて体感してください。
展覧会情報
トンコハウス・堤大介の「ONI展」 PLAY! MUSEUM
開催期間: 2023年1月21日(土)〜2023年4月2日(日)
所在地: 東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 2F
アクセス:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
開館時間: 10:00~17:00
※土日祝は18:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休。ただし3月5日(日)を除く
観覧料:一般1800円、大学生1200円、高校生1000円、中・小学生600円、未就学児無料
※当日券で入場可。ただし休日および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)を販売。
https://play2020.jp
画像ギャラリー
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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