EVENT
2023.3.10
名作椅子も大集合!『ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展』が開催中
「美が人生を豊かにする」(※)という考えのもと、有機的で美しく、また機能的なデザインを生み出してきた北欧。その北欧デザインの魅力をたどる展覧会が、現在、東京の日本橋高島屋S.C. 本館8階ホールにて開かれています。(その後、名古屋、大阪へと巡回予定)
※スウェーデンの社会思想家、エレン・ケイの『Beauty in the Home(住まいの中の美)』より。
目次
『ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展』展示風景。映像を除いて撮影も可能です。
会場には椅子研究家の織田憲嗣(おだ のりつぐ)氏が長年かけて収集、研究し、北海道東川町が所有する「織田コレクション」 から、北欧のデザイナー70名以上による約300点の作品を展示。さらに北欧の部屋を再現するコーナーや映像を通し、当地の人々の「美しいデザインとともにある暮らし」を紹介しています。
「トイッカの鳥」から北欧の名作椅子まで。充実の「織田コレクション」
オイバ・トイッカのデザインした「トイッカの鳥」が並ぶ展示風景。ひとつひとつが熟練の職人の手吹きにて制作されています。
オイバ・トイッカ(フィンランド)のデザインした「トイッカの鳥」が並ぶエントランスに続くのが「椅子と生きる」(第1章)。つまり1350脚を超える「織田コレクション」の椅子より選ばれた、北欧デザインを代表する名作椅子の展示です。
アルフ・スチューレ(ノルウェー)の「イージーチェア」は、ノルウェー家具のアイコン的な作品と呼ばれる椅子です。無駄をできるだけ排除し、機能主義的な要素を構造に取り入れつつも、どこか素朴で柔らかい印象を与えます。
右:カール・マルムステン「ストックホルム市庁舎のための椅子」 1916年
「ストックホルム市庁舎のための椅子」をデザインしたのはカール・マルムステン(スウェーデン)。脚部先端を太くするというスウェーデンの伝統的なスタイルを用い、市庁舎の家具コンペで1位を獲得しました。
右:ウルヨ・クッカプロ「カルセリ ラウンジチェア」 1964年
ウルヨ・クッカプロ(フィンランド)の「カルセリ ラウンジチェア」の「カルセリ」とは、メリーゴーランドを意味しています。体をすっぽりと包み込むようなフォルムは、雪に倒れ込んだ時に思いついたという逸話が残されていて、座り心地も良さそうな快適性の高い椅子が作られました。
北欧を代表する10名のデザイナーに着目。そこから浮かび上がる「オーガニックデザイン」とは?
アルヴァ・アアルト展示風景。家具デザイン史に残る名作を生み出したアアルト。建築設計や都市計画、ガラス器や照明などのデザインにも才能を発揮しました。
北欧各国を代表するデザイナーを特集した「デザインの源泉」(第2章)も見逃せません。ここでアルヴァ・アアルト(フィンランド)、ティモ・サルパネヴァ(フィンランド)、フィン・ユール(デンマーク)といった10名のデザイナーの仕事に着目し、それぞれの特徴や美意識の違いを比べながら、北欧デザインの共通点でもある「オーガニックデザイン」、つまりシンプルな中にある有機的なあたたかさを感じることができます。
ティモ・サルパネヴァ展示風景。フィンランドを代表するプロダクトデザイナーのひとり。1950年からはイッタラでガラス製品のデザインを手がけました。
各デザイナーによる椅子をはじめとした家具やインテリアアクセサリー、それに食器など幅広いジャンルの作品が展示されていますが、どうして北欧家具にはパーソナルチェアが多いのでしょうか?
フィン・ユール展示風景。家具をはじめとするプロダクトデザイン、住宅設計、展覧会の展示計画などで業績を残しました。
薄暗い白夜の続く北欧は夜が長く、家にいる時間が長いといわれています。そして家族や友人との時間を家で楽しむのが好きだからこそ、自分の場所の居心地を大切にしているのです。
北欧の部屋を再現!朝から夜への光を移ろいを感じながら名作椅子に座ってみよう
ダイニングルーム再現展示。ポール・ケアホルムの「ダイニングテーブル PK54」(1963年)を中心にアルヴァ・アアルトの「900 ティートロリー」(1937年)などが置かれています。
北欧の部屋が日本へとやって来ました。「心の居場所」(第3章)では、北欧の建材メーカーの窓枠、床材を使用してダイニングルームとリビングルームを再現。そこへ織田コレクションの家具を配置し、朝から夜へと移る1日を北欧の照明器具(現行の商品)にて演出しています。
リビングルーム再現展示。右手前がベント・ヴィンゲの「イージーチェア」(1940年)。センヤ・スヴァー・ダムケアの「ペンダント ブーケ5」が室内を照らしています。
リビングルームにはベント・ヴィンゲ(ノルウェー)が手がけ、世界で唯一現存する「イージーチェア」といった極めて貴重な作品も展示されています。照明の光による演出は約3分。また再現展示の前にはアアルトの「69チェア」やハンス J・ウェグナー(デンマーク)の「PP68 / ファイナルチェア」(ともに現行の商品)といった椅子も置かれ、実際に座って北欧デザインを体感することもできます。
リビングルーム再現展示。左奥がヨーゼフ・フランクの「キャビネット」(1940年)。フランクの代表作で、アール・デコ調にデザインされています。なお引き出しの取っ手に日本の箪笥を思わせる金具が用いられていますが、そこにはジャポニスムの影響が指摘されています。
日本では窓というと南向きが一般的ですが、一年を通して太陽光度の低い北欧では弱い光をできるだけ長い時間取り入れるべく、西向きがベストとされています。名作椅子の座り心地を試しながら、光の移ろいによって表情を変える北欧の部屋の光景を楽しみましょう。
東京・名古屋・大阪にて開催。北欧デザインから暮らしを豊かにするヒントを探る
グンナル・ニールンド(スウェーデン)の「ティーポット」や「フラワーベース」など。(ともに1940〜60年代)
これに続く「美しき同居人」(第4章)では、北欧の生んだインテリアアクセサリーや食器などアートピースをデザイナーごとに紹介。ラストの「ていねいに暮らす」(第5章)では北欧で暮らす人々にクローズアップし、実際にどのような暮らしを送っているのかを映像で紹介しています。
リサ・ラーション(スウェーデン)の「陶による動物シリーズ」 1958〜78年
北欧を中心とした椅子やテーブルから照明、食器やカトラリー、木製のおもちゃなど多岐にわたる織田コレクション。それは写真や図面、文献などの資料を含めた系統立てた集積として知られ、近代デザイン史の変遷を俯瞰できる学術的にも重要な資料とされています。
モーエンス・ラッセン(デンマーク)の「エジプシャンテーブル」(1922年)など。
単に良い家具やうつわをデザインすることを目標としただけでなく、良いデザインによってより良い暮らしを作ろうとした北欧のデザイナーたち。その作品を愛でつつ北欧に思い巡らせながら、日々の生活を豊かに生きるためのヒントを探してみてください。
モーエンス・コッホ(デンマーク)の「フォールディング コーヒーテーブル」(1932年)など。
『ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展』巡回スケジュール
日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール:2023年3月1日(水)〜21日(火・祝)
ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階特設会場:2023年4月20日(木)〜5月7日(日)
大阪高島屋 7階グランドホール:2023年8月9日(水)〜20日(日)
※作家名は会場のキャプションに準じます。
展覧会情報
『ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展』 日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール
開催期間:2023年3月1日(水) 〜3月21日(火・祝)
所在地:東京都中央区日本橋2-4-1
アクセス:東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅より直結。都営浅草線日本橋駅から徒歩4分
入場時間:10:30~19:00
※19:30閉場
※最終日3月21日(火・祝)は17:30まで(18:00閉場)
会期中無休
料金:一般1000円、高校・大学生800円、中学生以下無料
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/hokuou/
画像ギャラリー
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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