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EVENT

2023.12.11

北斎の描いたサムライたちが大集合!すみだ北斎美術館にて『北斎サムライ画伝』が開催。

江戸時代に生きた浮世絵師、葛飾北斎(1760〜1849年)にとって身近な存在だったサムライ。北斎はサムライたちの姿を武者絵などに多く描いていますが、それらは鎧を着ていても人物の動きを絵として表現することが意識されています。

葛飾北斎「鎌倉の権五郎景政 鳥の海弥三郎保則」すみだ北斎美術館蔵(前期)

すみだ北斎美術館にて12月14日から開催される『北斎サムライ画伝』では、北斎や門人たちがサムライを描いた作品を紹介。あわせて刀剣博物館所蔵の「太刀 銘 信房作」(重要文化財)など、刀剣そのものと北斎作品に描かれた刀剣を見比べて、イメージをふくらませながら北斎の表現力を楽しむことができます。

見どころ①「サムライの姿」北斎や弟子たちの同時代のサムライと、それ以前の戦乱の世のサムライの姿とは?

葛飾北斎『絵本庭訓往来』 すみだ北斎美術館蔵(通期)

日本の歴史の中で、平安時代末期の平清盛の政権から江戸幕府が倒れる約700年の間、主に政権を握ってきたサムライ。このうちサムライの性格が大きく変わったのが、豊臣秀吉により天下が平定され、徳川家康によって江戸幕府が開かれた頃でした。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 従千住花街眺望ノ不二」 すみだ北斎美術館蔵(通期)※半期で同タイトルの作品に展示替えします。

平和な江戸時代のサムライは武力として期待されることが少なくなり、幕府や藩の政治を担う存在として重視されるようになります。第1章の「サムライの姿」では、そのような北斎や弟子たちと同時代のサムライの姿と、それ以前の戦乱の世の武力の担い手として北斎たちが描いたサムライの作品を展示し、江戸の人々のサムライのイメージの一端に触れることができます。

葛飾北斎「美人と弁慶の耳かき」 すみだ北斎美術館蔵(後期)

ここでは江戸市中のサムライや旅するサムライ、それに北斎の描いた凛々しい源頼朝や表情豊かな弁慶なども登場。さらに江戸時代の風俗の美人が弁慶の耳かきをする姿を描いた北斎の「美人と弁慶の耳かき」が、同館にて初めて公開されます。

見どころ②「戦いの場面」歴史上実際にあった戦いから、読本などの挿絵として描かれた場面まで。

葛飾北斎「楠多門丸正重 八尾の別当常久」すみだ北斎美術館蔵(前期)

サムライは自らの戦闘技術を磨き、編成した家臣の武力を用いて戦ってきました。その目的は、家の存続や財産の維持・拡大、政治的・私的紛争の解決のためでもありました。サムライは生死をかけた戦いを繰り返すことで、相手の武力・政治的権力の縮小・滅亡を重ね、最終的に幕府を開いて政権を担う存在となります。

葛飾北斎『絵本武蔵鐙』下 那須の与市宗高 扇の的のほまれ すみだ北斎美術館蔵(通期)

第2章「戦いの場面」では、江戸時代の情報に基づいて北斎たちが描いた歴史上実際にあった戦いから、当時の小説である読本などの物語の挿絵として描かれた戦いの場面までを紹介します。またサムライは魔を払うという考えもあったことから、怪異との戦いのシーンを描いた作品も取り上げます。

葛飾北斎「仮名手本忠臣蔵 十一段目」 すみだ北斎美術館蔵(前期)

江戸時代に起こった事件、忠臣蔵も、歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」として上演され、人々によく知られていました。北斎の「仮名手本忠臣蔵 十一段目」とは、忠臣蔵を題材とした全11枚の錦絵シリーズの一図で、吉良邸へ討ち入ろうと門に登る場面が描かれています。

葛飾北斎『絵本魁』初篇 隠岐の次郎左ヱ門広有内裏に召れ化鳥を退治す すみだ北斎美術館蔵(通期)

『太平記』には鎌倉末期から室町初期のサムライ・真弓広有(まゆみひろあり)が矢を使用して怪鳥(けちょう) 退治をした話が収載されています。北斎による『絵本魁』初篇(隠岐の次郎左ヱ門広有内裏に召れ化鳥を退治す)では、闇夜に現れた怪鳥に、弓ではなく薙刀をかまえて対峙する広有が描かれています。

見どころ③「サムライの得物」北斎作品に描かれた刀剣と実際の刀剣を見比べよう!

「太刀 銘 信房作」(重要文化財)刀剣博物館蔵(通期)

サムライは、刀や弓などの得物(武器)を駆使して戦っています。本来サムライは、弓馬の芸に通じた家柄の者ともいわれ、射芸が重視されていました。実際の戦いでは、楯で防ぎながらの弓矢の射懸け合いからはじまり、すきが生じると接近して鑓(やり)や刀で戦ったと考えられています。江戸時代にはサムライは大小の刀の二本差しが定められ、平和な時代でも武器を携帯していました。

第3章「サムライの得物」ではサムライの象徴でもある刀や弓、他にも鑓や鉄炮などの武器、そして鎧を描いた作品を展示します。刀に関する作品は、刀鍛冶の姿を描いたもの、刀の意匠のデザインを北斎の門人が描いたものに加え、刀や鑓そのものも紹介し、描かれた刀や鑓と実物を見比べることもできます。

「太刀 銘 信房作」(重要文化財)は、享保3年(1718)に因幡藩藩主の池田吉泰が八代将軍の徳川吉宗から拝領し、以来池田家に伝来した太刀で、概ね平安時代(794〜1185頃)末期から鎌倉時代(1185頃〜1333)初期頃の作と考えられています。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 すみだ北斎美術館蔵(通期)※半期で同タイトルの作品に展示替えします。

北斎は波を繰り返し画題にしていますが、本展では「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」と、濤瀾刃(とうらんば)が特徴的な「刀 銘 津田越前守助広/延 宝九年八月日」を並べて公開し、北斎の絵画表現と工芸的表現としての濤瀾刃の刃文(はもん)から、江戸時代の異なる分野の名人が波をとらえて表現した作品を鑑賞することができます。

「刀 銘 津田越前守助広/延宝九年八月日」 刀剣博物館蔵(通期)

展示作品数は前後期あわせて171点と充実。(浮世絵作品など168点、刀剣類3点。)前後期で一部展示替えが実施されます。

葛飾北斎「鬼児島弥太郎 西法院赤坊主」すみだ北斎美術館蔵(後期)

フォトスポット「ARで北斎が描いたサムライたちと記念写真を撮ろう!」では、会場のQRコードをスマートフォンで読み取りフォトスポットにかざすと、北斎と弟子によるサムライたちが集まってきます。北斎が見つめた名のあるサムライや、太平の世の名もなきサムライに思いを馳せながら、記念撮影を楽しみましょう。

展覧会情報

特別展『北斎サムライ画伝』 すみだ北斎美術館
開催期間:2023年12月14日(木)〜 2024年2月25日(日)
 ※前後期で一部展示替えを実施。
 前期:2023年12月14日(木)~2024年1月21日(日)
 後期:2024年1月23日(火)~2月25日(日)
所在地:東京都墨田区亀沢2丁目7番2号
アクセス:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩9分
開館時間:9:30~17:30
 ※入館は17:00まで
休館日:月曜日
 ※開館:1月2日(火)、1月3日(水)、1月8日(月・祝)、2月12日(月・振休)
  休館:12月29日(金)~1月1日(月・祝)、1月4日(木)、1月9日(火)、2月13日(火)
観覧料:一般1200円、高校・大学生900円、65歳以上900円、中学生400円
公式サイト:特別展『北斎サムライ画伝』

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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