EVENT
2023.12.15
アートを通して青森の魅力を再発見。「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」を開催!
本州最北部に位置し、豊かな自然と文化を有する青森県。そこには青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC] 、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館の5つの現代美術を楽しめる美術館とアートセンターが存在します。
目次
その5館は2020年より連携し、「5館が五感を刺激する―AOMORI GOKAN」プロジェクトを発信してきましたが、 2024年4月13日(土)から9月1日(日)にかけて「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」を初めて開催。各館のキュレーターが協働し、展覧会やプロジェクト、パフォーマンスなど、それぞれの館の特徴を活かした多様なプログラムを展開します。
2024年度のテーマは「つらなりのはらっぱ」。そこに込められた思いとは?
まず2024年度のテーマ「つらなりのはらっぱ」とはどのような意味を持つのでしょうか。「はらっぱ」と聞いて思い浮かべる風景は人それぞれ違うように、青森には「はらっぱ」にたとえられるような5つの現代美術を扱う館が揃っています。
そして「はらっぱ」は、訪れることでなにかと出会い、またなにかが起こる、特別だけれど日常とも地続きの場所です。本テーマには、5つの美術館やアートセンターが「はらっぱ」のように機能し、それぞれの活動のつらなりから新たな関係性が紡がれていくようにとの想いが込められています。
展示も建築も個性的な5館それぞれの「つらなりのはらっぱ」をとおして、これまでにない風景がいま、ここに立ち上がることを目指しています。
5館をめぐり、その「つらなり」を体感したい。連携のシンボルとなるような企画、または作品の設置(予定)も!
弘前れんが倉庫美術館 外観 ⒸNaoya Hatakeyama
「AOMORI GOKAN アートフェス」の特徴を見ていきましょう。まずフェスでは5館の学芸員が約4年あまりにわたって議論を重ね、コンセプトやテーマを練りあげていきました。これは新しい文化芸術ネットワークの在り方を探り、青森県の文化的多様性と魅力を伝えていく試みとなります。
5館は青森市、弘前市、十和田市、八戸市に点在し、文化圏や都市機能の異なる地域で、それぞれの活動を行っています。フェスは5館がゆるやかにつながり、その効果を県全域に波及させていくことを目指した「芸術文化体験+観光」プロジェクトです。各館の特徴を活かした展覧会の開催と、連携のシンボルとなるような企画、作品の設置(予定)も行います。
フェスでは各館の展示やプロジェクトをより深く楽しむため、子どもや親子を対象とした様々なラーニング・ プログラムを5館が連携して開催します。5館をめぐり、その「つらなり」を体感できるプログラムが実施されます。
伝統、自然、食文化など青森県の多彩な魅力を発信していくのも目的のひとつです。フェスでは、工芸、建築、自然などをテーマに周遊コースを設定し、国内外からの観光客、また県民や周辺地域に在住の方に向けて、アートを通じた新しい体験を提案していきます。
「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」の展覧会とプロジェクト一覧
それでは各館にてどのような展覧会やプロジェクトが行われるのでしょうか。青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC] 、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館の順にご紹介します。
【青森県立美術館 『かさなりとまじわり』】
会期:前期2024年4月13日(土)〜6月23日(日) 、後期:2024年7月6日(土)〜 9月29日(日)
参加作家:原口典之、吉田克朗、他
参考図版 吉田克朗 《work 9》 1970年 ユミコチバアソシエイツ蔵
同美術館を設計した青木淳氏が提唱した「原っぱ」論を援用し、展示室のみならず、コミュニティ ギャラリーやワークショップエリア、屋外ヤードなども展示やプロジェクトに活用。展示室を含めた諸室をそれぞれの「原っぱ」に見立て、館内外の至るところでアートを発見、鑑賞、体験できる場を設けることで、美術館全体を有機的につなげていきます。
原口典之 《F-8E CRUSADER》 (「十字路-CROSSROAD」ART BASE 百島広島での展示風景) 2014年 ©ART BASE MOMOSHIMA
メイン作家の原口典之は小学校時代に青森に在住。またもの派として知られる吉田克郎は、青森の三戸にある町立の現代版画研究所の立ち上げに尽力した存在として知られています。
【青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC] 『currents / undercurrents -いま、めくるめく流れは出会って』】
会期:前期:2024年4月13日(土)〜6月30日(日)、 後期:2024年7月13日(土)〜9月29日(日)
参加作家:青野文昭、Jumana Emil Abbound(ジュマナ・エミル・アブード)、岩根愛、是恒さくら、光岡幸一、中嶋幸治、鈴木正治、Jasmine Togo-Brisby(ジャスミン・トーゴ=ブリスビー)、Robin White(ロビン・ホワイト)ほか。※会場構成:山川陸
「現在」という意味をもちながら、海流や気流をはじめとして、ある一定の方向に動く水や空気、電流などの変わり続ける流れを示す「current」と、表面や他の流れの下にある目に見え難い流れや暗示を意味する「undercurrent」をキーワードに、ある場所とかかわり合いながら表現をつむぎ出す国内外のアーティスト、そして青森ゆかりの表現者たちによる作品が集います。
青野文昭 《ここにいないものたちのための群像 - 何処から来て何処へ行くのか - サイノカワラ 2016》 2014ー2016年
前期と後期の出展作家は同じでありながら、会期半ばで展示替えをし、異なる2つの展覧会を行うことで、一回限りでない場所への働きかけや、変化し続ける「いま」をこの場に取り込みます。宿泊しながら地域住民や学生らと交流し、滞在制作を行うアートセンターとしての特性を活かし、滞在制作と展覧会を前後期で行うのも特徴です。
【弘前れんが倉庫美術館 ①『蜷川実花展 with EiM:儚くも煌めく境界』、②『弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考」】
会期 2024年4月6日(土)〜9月1日(日)
参加作家:①蜷川実花 with EiM[Eternity in a Moment] 、②狩野哲郎、佐藤朋子、永沢碧衣
参考図版 蜷川実花 《Untitled》 2022年 ©mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
弘前れんが倉庫美術館では展覧会とリサーチ・プロジェクトを実施します。展覧会「蜷川実花展 with EiM:儚くも煌めく境界」は、写真家・映画監督の蜷川実花が、データサイエンティストの宮田裕章、セットデザイナーの Enzo、クリエイティブディレクターの桑名功らと結成したクリエイティブチーム・EiM との協働により実現する大規模な個展です。
参考図版 永沢碧衣 《村景》 2019年 ©︎かみこあにプロジェクト(秋田)
弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考(しらかみのぞきみこう)」は、青森県南西部に位置し、津軽平野を流れる岩木川の源流の地でもある白神山地をテーマに実施するリサーチ・プロジェクトです。 狩野哲郎、佐藤朋子、永沢碧衣の3名のアーティストたちが、作品展示をはじめ、ワークショップやトークイベントなどを実施します。
【八戸市美術館 『エンジョイ!アートファーム!!』】
会期:2024年4月13日(土)〜9月1日(日)
参加作家:磯島未来、漆畑幸男、しばやまいぬ、蜂屋雄士、東方悠平 ※会場構成:佐藤慎也
5人のアーティストたち (左から磯島、東方、漆畑、しばやまいぬ、蜂屋)
開館2年を迎えた八戸市美術館のコンセプト「出会いと学びのアートファーム」を体現する企画を実施します。展覧会やプロジェクト、コミュニケーションを種として、そこに訪れた人々が得る出会いや学びが栄養となり、それぞれの感性や創造力が育まれる。美術館は、その畑(ファーム)として、多様な活動の土壌となり、まちの未来を創造していきます。
東方悠平 《TENGUBUCKS Cafe in Hue - Coffee Float》 2019年
そうした美術館を象徴する空間「ジャイアントルーム」で、八戸を拠点に活動する5人のアーティストが、来館者と共につくり、楽しむプロジェクトを展開していきます。絵画や版画、写真、ダンスなど、多様なジャンルで日々繰り広げられる活動により、来館者とアーティストが出会い、関わり合うことで、まるで畑に蒔いた種のようにどんどん育っていくことを期待します。
【十和田市現代美術館 『野良になる』】
会期:2024年4月13日(土)〜11月17日(日)
参加作家:丹羽海子、䑓原蓉子、永田康祐、アナイス・カレニン
参考図版 丹羽海子 《Metropolis Series: Good Egg Community》 2022年 Courtesy the artist and Someday, New York 撮影:Daniel Terna
「野良になる」展は、「はらっぱ」を自然と人間の交わるところと捉え、それらの複雑に絡まる関係性に注目した展覧会で、本展では近代が生み出した自律した理性的な主体としての「人間」を見直し、その成立過程で排除された存在や思考に目を向けます。
人々の思考を規定するさまざまな二項対立的な枠組みの境界を撹乱しつつ、強かに―野生でも飼われるのでもなく野良のように―息づくあり方、物語をご覧いただきます。
日本とアメリカにルーツを持ち、トランスジェンダー女性として生きるあり方を彫刻で表現する丹羽海子。10歳の頃に学校を離れ、独学の感性で空想的な心象風景を描く䑓原蓉子。
青森の食文化、品種改良や養殖業をリサーチし映像やコース料理形式の作品を手がける永田康祐。さらにブラジルに植民地時代以前から伝わる知識をもとに、植物と人間の関係性を問い直す作品を制作するアナイス・カレニンなど、多様な視点から自然を捉えるアーティストの表現を紹介します。
デザイナー、野間真吾によるAOMORI GOKANのシンボルマークも進化!
すでに3年前に先行して発表されていたAOMORI GOKANのシンボルマークが、フェス開催にあわせてさらなる進化を遂げました。
手がけたのはアートディレクターでデザイナーの野間真吾。5館の”5”と五感(Five Senses)の“S”をモチーフにしたシンボルマークの角に、GOKANシンボルの遺伝子を受け継ぐロゴタイプが新しく加わります。
そして青森の風景や空気感を取り込んでみようという試みから、青森ヒバ材の断面のテクスチャーがそのままマークへとうつしとられました。スタイリッシュでありながら、手業感も感じられる素敵なロゴマークではないでしょうか。
「開催を重ねて地域活性化をはかり、いずれは青森県内をまたぐアートイベントを開きたい」
全国8位の面積を誇る広大な青森県、5つの美術館とアートセンターをめぐるのは必ずしも簡単なことではありません。そこで本フェスにあわせて、青森県の豊かな自然、伝統文化を5つの美術館とアートセンターを中心に体験できる周遊コースを提案。
公共交通機関で巡るコースや「自然」、「工芸」をテーマにしたコースなどを案内するほか、今後ウェブサイトにて新しいテーマの周遊企画を提案します。
さらに美術館から出て、展示テーマをより深く楽しむため、周辺の文化施設や自然を巡る鑑賞ツアーや学芸員によるガイドなども予定されています。
またフェスの開催情報とあわせて各エリアのお薦めスポットを紹介するほか、「自然」「建築」「工芸」などのテーマ別、公共交通機関で巡る5館周遊などのモデルコースも充実する「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」の公式のガイドブックも発行されます。端的なフェスの案内だけでなく、青森アート旅に長く使える充実した1冊となります。
「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」の記者発表会にて挨拶する杉本康雄、青森県立美術館館長。
2023年11月6日に都内にて開かれた「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」の記者発表会において、フェスの実行委員長である杉本康雄(青森県立美術館館長)は、「個性豊かな5館の魅力を、フェスを通して全国へと発信し、特に20〜30代の若い世代に青森へ来てほしい」と語りました。
「青森県全体でアートへの関心を重ね、開催を重ねて地域活性化をはかり、いずれは5館で連携して芸術祭を開きたい」と続けました。
前列左から、狩野哲郎(弘前れんが倉庫美術館 出展アーティスト)、木村絵理子(弘前れんが倉庫美術館 副館長兼学芸統括)、杉本康雄(青森県立美術館 館長)、佐藤慎也(八戸市美術館 館長)、野間真吾(ロゴデザイン、NOMA Inc.)、後列左から、外山有茉(十和田市現代美術館 アシスタント・キュレーター)、慶野結香(青森公立大学 国際芸術センター青森 学芸員)、工藤健志(青森県立美術館 美術企画課課長)、平井真里(八戸市美術館学芸員)
青森県立美術館美術企画課の課長、工藤健志は、「青森には現代美術を楽しめる美術館とアートセンターが5館もあるのが強み」として、「それぞれの館の個性を接続させ、持続可能なフェスのあり方を探るとともに、青森ならではの新たな芸術体験ができるようにしたい」と話しました。
2024年4月13日(土)から9月1日(日)にかけて開かれる「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」。アートを通して青森の魅力を再発見するまたとない機会となりそうです。
「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」情報
テーマ:つらなりのはらっぱ
会期:2024年4月13日(土)〜9月1日(日)
会場および展覧会・プロジェクト名
・青森県立美術館: かさなりとまじわり
・青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC] :currents / undercurrents -いま、めくるめく流れは出会って
・弘前れんが倉庫美術館:蜷川実花展 with EiM:儚なくも煌めく境界、弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考しらかみのぞきみこう」
・八戸市美術館:エンジョイ ! アートファーム !!
・十和田市現代美術館:野良になる
*この他県内各地での連携企画を予定
「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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