Facebook X Instagram Youtube

EVENT

2024.7.23

【京都7/19〜】モネのように光に魅せられた画家の大規模回顧展『奥村厚一 光の風景画家 展』

京都市京セラ美術館で『没後50年 生誕120年 奥村厚一 光の風景画家 展』が開幕します。会期は7月19日(金)〜9月8日(日)です。

奥村厚一《海》1951年頃 株式会社 玉村本店蔵

奥村厚一(おくむら・こういち、1904-1974)は風景を追求した画家で、「山の画家」とも呼ばれています。風景に迫る目線や切り取り方が独特で、鑑賞者が一目で惹きつけられ、目が離せなくなる作品を数多く残しました。

2024年は生誕120年、没後50年を迎える年。京都市美術館で1976年に遺作展を開催して以来、京都市京セラ美術館では48年ぶりの回顧展となります。

奥村厚一《白緑の白樺》1955-1964年頃

初期から晩年までの作品が展示される本展は、奥村の画業の全貌に触れられる機会です。ぜひ足を運んではいかがでしょうか。

見どころ①新発見の作品も見られる大規模回顧展

奥村厚一

「そう言われても……奥村厚一ってどんな画家なんだろう?」と思ったそこのあなた。恥ずかしながら、私もまったく同じことを思いました。私も調べてみたので、ここからは一緒に理解を深めていきませんか?

1904(明治37)年、京都市に生まれた奥村は、京都市立絵画専門学校研究科へ進学。同時に、動物画などで知られる日本画家・西村五雲に師事しました。

奥村厚一《落葉の秋》1937年頃

1929(昭和4)年、25歳で第10回帝展に《山村》が初入選し、その後も入選を重ねて頭角を表します。写生に基づく精緻な描写と、考え抜かれた構図が響き合う作品を多く制作しました。

1946(昭和21)年には《浄晨》で戦後最初の日展で特選を受賞し、中堅実力作家として画壇における地位を確立していた奥村。ですが、2年後の1948(昭和23)年には日展を離れ、創造美術(現・創画会)の結成に加わりました。

奥村厚一《浄晨》1946年 東京藝術大学蔵

新しい日本画を創造する活動を通して、奥村の絵画にも変化が現れます。太い輪郭線を使ったり、対象を面として捉えた表現をしたりと、新たな風景表現を追求します。

波をクローズアップする構図など、対象を大写しにしたり、大胆に抽象化したりする表現も見られます。風景画でありながら、私たちの目に映る風景以上に想像力を掻き立てられるように思います。

奥村厚一《浪》1955年 文明堂東京蔵

本展では、奥村の各時代を代表する作品が展示され、その画業を振り返ることができます。さらに、新発見の新発見の作品《春晴》(昭和10年代)、《山雲紅葉》(昭和30年代頃)や、時を経て再発見された作品の数々も見ることができます。

見どころ②光に魅せられた風景画家

奥村厚一《照る海 潮の岬》1960-1964年頃

「モネのように光に魅せられた日本画家がいた」ということで、本展では「光」にも着目して作品を見たいところです。奥村は早い時期から光が風景にもたらす効果に関心を持ち、作品でも表現してきました。

たとえば《照る海 潮の岬》と《朝光の岬》は同じ場所から見た風景をほとんど同じ構図で描いた作品です。しかし光の色や角度、質感の違いが風景全体に影響し、同じ場所なのにまったく異なる印象の作品になっています。

奥村厚一《朝光の岬》1955-1964年頃

刻々と移り変わる光と風景を捉える目もさることながら、見たものを絵画として構成して表現する美的感覚にも感激します。光が溢れる奥村の作品、ぜひ直に見てみたいです。

関連記事:ビカミング・クロード・モネ~風景画家への道

見どころ③全国を旅して描いたスケッチ

奥村厚一《潮岬》京都市美術館蔵

奥村は生来の山好きだったそうで、生涯をかけて山を歩き、行く先々で風景のスケッチをしました。本展では、同館が所蔵するスケッチも数十点展示されます。

自身のスケッチについて、奥村は、

「わたしの素描は、あんまりおもしろくないのではないかと心配しているんです。まっすぐに、そのままに描いているのですから。なんにもデフォルメしたり、強く主張を押し出したり、変えて描くというようなことをしない。そのままの写生といいましょうか」

と述べたようですが……むしろ、それが見たいのがファンの心理では?

奥村厚一《大蛇嵒》1959年頃 京都市美術館蔵

まっすぐに自然と向き合い、その強さや深さを受け入れた奥村。スケッチからもその姿勢をうかがうことができ、奥村の作品の根底にある思想や価値観をも感じ取れるように思います。

展覧会情報

没後50年 生誕120年 奥村厚一 光の風景画家 展

会期:2024年7月19日(金)~9月8日(日)
時間:10:00~18:00(最終入場は17:30まで)
会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
展覧会ウェブサイト:没後50年 生誕120年 奥村厚一 光の風景画家 展

【写真10枚】【京都7/19〜】モネのように光に魅せられた画家の大規模回顧展『奥村厚一 光の風景画家 展』 を詳しく見る イロハニアートSTORE 50種類以上のマットプリント入荷! 詳しく見る
明菜

明菜

  • instagram
  • twitter
  • homepage

美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

明菜さんの記事一覧はこちら