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EVENT

2021.11.1

「おうこくさん」からポンポン、それに民藝まで。11月に見たい展覧会おすすめ5選

今年も残すところあと2ヶ月。新型コロナウイルスの感染状況は一定の落ち着きを見せ、これまで休止していた夜間開館を再開する美術館も出てきました。また久しぶりに遠方の美術館へのお出かけを考えている方も多いかもしれません。今月は東京以外の地域にも目を向けておすすめの展覧会をピックアップします!

『いちはらアート×ミックス2017』より『森ラジオステーション』『いちはらアート×ミックス2017』より『森ラジオステーション』

江戸琳派の師弟の傑作が同時に公開!根津美術館の『重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風』

東京・南青山の根津美術館にて『鈴木其一・夏秋渓流図屏風』が開催されます

江戸時代の琳派の絵師で、近年、シャープな造形感覚などから人気が高まる鈴木其一(すずき きいつ)。2020年には代表作『夏秋渓流図屏風』が重要文化財に指定され、ますます注目を集めてきました。その指定を記念し、東京・南青山の根津美術館にて『鈴木其一・夏秋渓流図屏風』が開催されます。

展覧会では其一に影響を与えた師・酒井抱一の『青楓朱楓図屏風』をはじめ、『夏秋渓流図屏風』に構成と構図が類似する円山応挙の『保津川図屏風』や山本素軒の『花木渓流図屏風』などを公開。其一がどのような絵師の作品に学び、『夏秋渓流図屏風』を制作したのかを検証していきます。

さらにもう1つ注目したいのは、酒井抱一の畢竟(ひっきょう)の名作である『夏秋草図屏風』が12月7日から19日の間、期間限定にて公開されることです。ちょうどこの時期、根津美術館の庭園では紅葉のピークを迎えます。深山幽谷の趣き深い庭園は都心の穴場の紅葉スポット。お庭の散策をかねて出かけることをおすすめします。

『重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風』 根津美術館
開催期間:2021年11月3日(水・祝)~12月19日(日)
所在地:東京都港区南青山6-5-1
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅A5出口より徒歩8分
開館時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月曜日
料金:一般1500円、学生1200円、中学生以下無料
 ※オンラインでの日時指定予約制
https://www.nezu-muse.or.jp

近代日本の動物画の名手!木島櫻谷の動物たちへの優しい眼差し

『木島櫻谷 究めて魅せた「おうこくさん」』 福田美術館

明治から昭和にかけて活躍し、「狸の櫻谷」と呼ばれるほど動物画の名手として知られた木島櫻谷(このしま おうこく)。鹿や猪、それに猫や栗鼠(りす)などを描いたかわいい作品が多く、最近でも回顧展がたびたび開かれるなどファンを増やしています。

その櫻谷が生涯を過ごした京都の2つの美術館にて行われるのが『木島櫻谷 究めて魅せた「おうこくさん」』です。まず第一会場の福田美術館では『駅路之春』や『和楽』、それに約110年ぶりの公開となる『細雨・落葉』など約60点の作品を展示。動物画だけでなく、人物や山水の絵画も通して、櫻谷の画業をたどります。

それに続く第二会場の嵯峨嵐山文華館では、櫻谷が30代後半にて拠点を構えた京都市北西部の衣笠の地に着目。約30点が初公開となる櫻谷に加えて、同じく衣笠にて活動した菊池芳文、堂本印象、福田平八郎らの作品を紹介します。

ともに嵐山に位置し、渡月橋にほど近い福田美術館と嵯峨嵐山文華館は歩いてもすぐ。5分とかかりません。入館料が割引となる両館の共通券も販売されていますので、はしごして見ておきましょう。

『木島櫻谷 究めて魅せた「おうこくさん」』 福田美術館
開催期間:2021年10月23日(土)~2022年1月10日(月・祝)
所在地:京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
アクセス:嵐電(京福電鉄)嵐山駅より徒歩4分。阪急嵐山線嵐山駅より徒歩11分。JR山陰本線(嵯峨野線)嵯峨嵐山駅より徒歩12分
開館時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:火曜日(祝日の場合は翌平日)
料金:一般・大学生1300(1200)円、高校生700(600)円、小中学生400(300)円
 ※( )内は20名以上の団体割引料金
 ※嵯峨嵐山文華館両館共通券(一般2000円)あり
 ※オンラインでの日時指定予約制
https://fukuda-art-museum.jp

里山に囲まれ、湖に面した美術館で見る現代彫刻家・戸谷成雄の豊穣な作品世界

『戸谷成雄 森―湖:再生と記憶』 市原湖畔美術館

現代美術家、戸谷成雄(とや しげお)を知っていますか? 「彫刻とはなにか」を問い続ける戸谷は、チェーンソーで木を彫り込む作品で知られ、これまでに国内の美術館で個展を開いたり、海外の国際展に参加するなどして活躍してきました。

そして戸谷は今回、人工のダム湖の畔に位置する市原湖畔美術館にて、巨大なアトリウム空間を中心に、「森」や「土地」、そして「水脈」に着想を得た作品を公開します。戸谷の彫刻は単にオブジェというよりも、空間全体を取り込むインスタレーションとしても魅力が感じられますが、千葉の房総丘陵の野山に囲まれ、水辺に面する美術館の空間ならではの引き立つ展示となりそうです。

また市原では、新型コロナウイルス感染症に伴い2度も先送りされた芸術祭、『いちはらアート×ミックス2020+』(https://ichihara-artmix.jp)がいよいよ11月19日より12月26日まで開催されます。市原湖畔美術館も会場の1つですが、ローカルな小湊鉄道沿いに点在する現代アートを巡りながら楽しむのも良いのではないでしょうか?

『戸谷成雄 森―湖:再生と記憶』 市原湖畔美術館
開催期間:2021年10月16日(土)~2022年1月16日(日)
所在地:千葉県市原市不入75-1
アクセス:小湊鉄道高滝駅より徒歩20分。駐車場あり。
開館時間:10:00〜17:00(平日)、9:30〜19:00(土曜・祝前日)、9:30〜18:00(日曜・祝日)
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、12/27(月)〜1/3(月)
観覧料:一般800(700)円、65歳以上・大学生600(500)円
 ※( )内は20名以上の団体割引料金
https://lsm-ichihara.jp

アトリエを再現した建物も見どころ。フランスの彫刻家、フランソワ・ポンポンの回顧展がいよいよ関東へ

『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』 群馬県立館林美術館

シンプルで滑らかな丸みを帯びた動物たち… 誰もが一目見るだけで心を引かれそうな彫刻を作ったのが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの彫刻家、フランソワ・ポンポンです。名前の響きからしてもかわいらしく思えてしまいます。

そのポンポンの日本初の展覧会が全国各地を巡回中。すでに京都市京セラ美術館や名古屋市美術館(11月14日まで開催中)などで開かれてきましたが、11月23日より関東へと場所を移し、群馬県立館林美術館にて『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』がはじまります。※その後、佐倉市立美術館他1館を巡回。

「巡回展だけにどこの会場で見ても同じでは?」と思ってしまいますが、あえて群馬県立館林美術館へ行くことをおすすめするのには理由があります。それはそもそも同館がポンポンの彫刻や素描などを数多く収集し、コレクションの核としているからです。しかも美術館の敷地には、ポンポンの生まれ故郷であるブルゴーニュ地方の農家をイメージし、アトリエを一部に再現した別館「彫刻のアトリエ」を開設。まさに日本における「ポンポンの館」が館林にあるのです。

『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展』 群馬県立館林美術館
開催期間:2021年11月23日(火・祝)~2022年1月26日(水)
所在地:群馬県館林市日向町2003
アクセス:東武伊勢崎線多々良駅から徒歩20分。東武伊勢崎線館林駅西口からバス多々良巡回線にて「県立館林美術館前」からすぐ。駐車場あり。
開館時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし1/10は開館)、12/29(水)~1/3(月)、1/11(火)
観覧料:一般900(720)円、大学・高校生450(360)円
 ※( )内は20名以上の団体割引料金
http://www.gmat.pref.gunma.jp

「民藝」の広がりと歴史を振り返る。東京国立近代美術館での『柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年』

『柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年』 東京国立近代美術館

「暮らし」を見つめ直す観点から、近年、改めて注目が集まる「民藝」。それは宗教哲学者であり文筆家でもあった柳宗悦(やなぎ むねよし)らによって推し進められた運動でもありました。

その柳の没後60年を記念したのが、東京国立近代美術館で開催中の『民藝の100年』です。展示では各地の民藝コレクションから選ばれた陶磁器、染色、木工などの道具から大津絵といった民画、さらに出版物や写真など約400点もの作品と資料が公開されます。いわゆる名品選というよりも、民藝運動の変遷を時間を追いながら体系立てて紹介しているのが大きなポイントです。

また会場内には民藝にまつわる幅広い商品を取り揃えた特設ショップもオープン。ポップアップストアとして会期中、東京の「諸国民藝 銀座たくみ」や岡山の「くらしのギャラリー本店」など、全国の4つの店舗が2週間毎に出店します。ミュージアムショップにてお気に入りの品を買い求めながら、展覧会の余韻を家に持ち帰りましょう。

『柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年』 東京国立近代美術館
開催期間:2021年10月26日(火)~2022年2月13日(日)
所在地:東京都千代田区北の丸公園3-1
アクセス:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口より徒歩3分
開館時間:10:00〜17:00(金・土曜日は20:00まで) 
 ※入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし1/10は開館)、12/28(火)~1/1(土)、1/11(火)
観覧料:一般1800(1600)円、大学生1200(1000)、高校生700(500)円
 ※( )内は20名以上の団体割引料金
 ※オンラインでの日時指定予約制(窓口にて当日券の販売もあり)
https://mingei100.jp/

※新型コロナウイルス感染症の状況等により、各展覧会の会期や時間の変更、また事前予約など入場の方法が変わる可能性があります。最新の状況は各館のウェブサイト、公式Twitterアカウントなどでご確認ください。

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はろるど

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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