EVENT
2021.12.17
見る人を幸せな気持ちにさせてくれる愛らしい動物彫刻「フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家」
フランソワ・ポンポンを知っていますか?
まだ日本ではあまり知られていないフランソワ・ポンポンですが、フランスでは「動物彫刻と言えばこの人の右に出るものはいない」と多くのアーティストに刺激を与え続けています。
彼は私たちのよく知る身近な動物や異国の動物たちの愛らしさを残し、見る人を幸せな気持ちにさせてくれる作品を生み出しました。
現在、群馬県立館林美術館にて開催されている『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家』をご紹介します。
動物彫刻の歴史を変えた革新者のフランソワ・ポンポン
《フランソワ・ポンポンと鳩ニコラ》 撮影年不詳 群馬県立館林美術館
フランソワ・ポンポンは20世紀初頭のアール・デコ期に人気を博した動物彫刻家です。
近代彫刻の父と言われるオーギュスト・ロダンを師事していた彼は、ボリュームと動きの表現を学びました。その後、動物観察から身体や動作などの特徴を掴み、古代エジプト美術や日本美術にならい、形態の単純化を試みるようになっていきます。
フランソワ・ポンポン《ほろほろ鳥》
そして、細部を削ぎ落として滑らかでシンプルなフォルムの作品を生み出し、それまで細かく毛並みを再現するような写実的表現が主流であった動物彫刻において、ルネサンス以来格が低いとされてきた動物彫刻の歴史に大きな革新をもたらしました。
ポンポンはオールドルーキーだった?!
フランソワ・ポンポン《シロクマ》1923-1933年、群馬県立館林美術館
しかし、ポンポンが彫刻家として認められたのは、晩年の1922年、67歳の時です。
サロン・ドートンヌにて長さ2.5mの大きな石膏の《シロクマ》を出品し、しなやかで力強い生命感と堂々とした安定感から、この作品で初めて高く評価され名声を得ていきました。
ポンポンはその生涯のほとんどを他の彫刻家の手伝いに費やしましたが、晩年に独立してからの10年で多くの作品を制作し、その単純化された独特なラインを持った彫刻は、モダニズム彫刻への橋渡しをしたとも言われています。
多彩な動物を生み出してきたポンポン
展示風景 フランソワ・ポンポン《大黒豹》
彼の作品の特徴は、鳩、猫、犬などの身近な動物から、豚、牛など農場でみる家畜、キリン、ヒグマ、シロクマなど動物園で見ることのできる異国の動物までを題材にし、生命感のあるフォルムと美しいシルエットを与えていることです。
そして、幸福さをたたえたポンポンの彫刻は生きる喜びを体現し、鑑賞者に幸せな気持ちと微笑みをもたらします。
展示風景 フランソワ・ポンポン《ヒグマ》
群馬県立館林美術館で開催中の本展覧会では、当館所蔵のポンポン作品はもちろん、フランスの美術館からの借用作品を加えて、初期から晩年までの代表作を紹介。さらに写真、絵はがき、道具などの豊富な資料を通して、ポンポンの美しい動物彫刻の誕生の背景と魅力に迫ります。
国内で一番!ポンポンの作品と資料を持つ、群馬県立館林美術館
別館「彫刻家のアトリエ」
群馬県立館林美術館は、国内で唯一のまとまったポンポンの作品や資料をコレクションし、長年にわたって調査研究をつづけてきました。
会場ではこれまで全国を巡ってきた作品とともに、群馬県立館林美術館のポンポン関連資料から約150点余りを合わせて展示。
展示風景 ポンポンの道具
さらに、当館敷地内にある彼のアトリエを再構成した別館「彫刻家のアトリエ」や、彫刻作品の制作過程を追うコーナーもあるので、より深くポンポンのことがお楽しみいただけると思います。
私たちのよく知る動物たちが愛らしさを残した作品となり、見る人を幸せな気持ちにさせてくれる本展覧会に、ぜひ足を運んでみてください。
取材・撮影・文:新 麻記子
【展覧会情報】
企画展示
「開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家」
会期:2021年11月23日(火・祝)~2022年1月26日(水)
会場:群馬県立館林美術館
開館時間: 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日・振替休の場合はその翌日。ただし、4月29日から5月5日までの間及び8月15日を含む週は休館しません)年末年始(12月29日から翌年1月3日まで)
このほか、展示替え等のため臨時に休館する場合があります。
観覧料:一般900円(720円)、大高生450円(360円)

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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