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EVENT

2021.12.23

100年使っても大丈夫?!クリエイター×職人のコラボレーション。チャリティーイベント『百年前掛け』展が開催中

室町時代まで起源をさかのぼるとされる前掛け。正式には「帆前掛け」と呼ばれ、古くから重いものを運ぶ時に腰を支える仕事着として使われてきた一方、いまでは広告宣伝のためやユニフォームなどに活用されるアイテムとしても愛されています。

前掛けの産地である愛知県豊橋市の職人たちが丁寧に織り上げ、144人のクリエイターらが創意工夫を凝らしてデザイン。染め抜いたオリジナルの作品を展示、販売し、収益金をチャリティーとして寄付するイベントが、東京の2つのギャラリーで開かれています。

『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』クリエイションギャラリーG8 展示風景『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』クリエイションギャラリーG8 展示風景

セーブ・ザ・チルドレンへ寄付。1990年から続く恒例のチャリティープロジェクト

クリエイションギャラリーG8入口。土橋交差点に面した銀座8丁目のリクルートGINZA8ビルの1階に位置しています。クリエイションギャラリーG8入口。土橋交差点に面した銀座8丁目のリクルートGINZA8ビルの1階に位置しています。

2つのギャラリーとは、ともに銀座にあるクリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンです。JR線の新橋駅、もしくは東京メトロの銀座駅にほど近く、歩いて5分とかかりません。そして同ギャラリーではアートやデザインの楽しさを感じてもらおうと、1990年から毎年チャリティープロジェクトを実施。例えば一昨年は京都のふろしき、昨年は大垣の職人によるヒノキの升をクリエイターがボランティアにてデザインし、販売した収益金を寄付してきました。

ガーディアン・ガーデン会場入口。銀座ウエスト銀座本店の隣のビルの地下1階にあります。ガーディアン・ガーデン会場入口。銀座ウエスト銀座本店の隣のビルの地下1階にあります。

過去には東日本大震災や熊本地震の復興のために寄付されましたが、2017年からは子どもの貧困問題の解決や虐待の予防などに取り組むセーブ・ザ・チルドレンに寄付が続けられています。新型コロナウイルス感染症の影響により、経済的に困難となった家庭への食の提供も行われているそうです。

クリエイターが創意工夫を凝らしてデザインした前掛けがずらり

宇野亞喜良のデザインの前掛け。プリントではなく、一度染め上がった生地から、絵柄の部分の色を抜く「染め抜き」の技法で作られています。宇野亞喜良のデザインの前掛け。プリントではなく、一度染め上がった生地から、絵柄の部分の色を抜く「染め抜き」の技法で作られています。

それではクリエイターのデザインした前掛けを見ていきましょう。まずイラストレーターの宇野亞喜良は、少女や猫といった得意のモチーフを描きつつ、カリグラフィを入れるために寺島修司の俳句をデザイン。艶やかなでかつ甘美な世界を表現しています。

左がひびのこづえ、右が日比野克彦のデザインによる前掛け。左がひびのこづえ、右が日比野克彦のデザインによる前掛け。

広告やテレビなど多方面に活躍し、昨年秋にはそごう美術館にて個展「森に棲む服」が開催されたひびのこづえは、汚れたら早く洗いたくなるように愛着の湧く前掛けを作るべく、ほほえんだ女の子を描きました。隣に並ぶ日比野克彦による妻有トリエンナーレでのアートプロジェクトの前掛けとは対照的なデザインではないでしょうか。

仲條正義の前掛け。世話になった居酒屋のおやじに使ってもらいたいとしています。仲條正義の前掛け。世話になった居酒屋のおやじに使ってもらいたいとしています。

今年10月に88歳にして亡くなったグラフィックデザイナーの仲條正義もチャリティーに参加し、桃をあしらった前掛けを提案しています。「ボクとしては、今年のケッサク」とコメントを寄せるほどの自信作でしたが、残念ながら遺作になってしまいました。

子どもたちがデザインした前掛け。グラフィックデザイナーの佐々木俊が講師をつとめ、オンラインのワークショップで作られました。(こちらはプリント)子どもたちがデザインした前掛け。グラフィックデザイナーの佐々木俊が講師をつとめ、オンラインのワークショップで作られました。(こちらはプリント)

「クリエイション・キッズ・ラボ」と題し、子どもたちがオンラインのワークショップにて作った前掛けも見どころの1つです。こちらはもちろん非売品ですが、子どもたちのさまざまなアイデアが反映された前掛けは、決して大人のデザインに見劣りしているようには思えませんでした。

かわいい動物も登場!あなたのお気に入りの前掛けはありますか?

上田三根子のデザインによる前掛け。上田三根子のデザインによる前掛け。

かわいい動物を描いた前掛けが多いのも特徴です。LION「キレイキレイ」シリーズのキャラクターでも知られる上田三根子は好きな犬のテリアをモチーフにして、トリミングの時にあったら嬉しくなるような前掛けを作りました。愛犬家にとって欲しくなるデザインではないでしょうか。

左が大黒大悟、右が関本明子の前掛け。左が大黒大悟、右が関本明子の前掛け。

グラフィックデザイナーの大黒大悟は、アメリカ・ユタ州の洞窟に描かれていたネイティブアメリカンによる謎の動物をデザイン。そして関本明子もシンプルな線でシマウマを描いています。

関川航平の前掛け関川航平の前掛け

「自分が欲しい前掛け」を作ったという美術作家の関川航平は、スカジャンにもしたいというトラをモチーフにしました。口を大きく開けて勇ましい姿を見せていますが、ちょうど来年の干支でもあり、人気が集まるかもしれません。

『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』ガーディアン・ガーデン 展示風景『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』ガーディアン・ガーデン 展示風景

出品作家はクリエイションギャラリーG8が106名、ガーディアン・ガーデンが38名です。特に順番はありませんので、2つの会場を訪ねてお気に入りの前掛けを探すのが楽しいかもしれません。

1つ1つの前掛けを職人が手作り。完全受注生産のオンライン発売

前掛け販売の案内。販売期間は2021年12月9日(木)〜2022年1月22日(土)です。前掛け販売の案内。販売期間は2021年12月9日(木)〜2022年1月22日(土)です。

さてこのチャリティーイベントですが、前掛けの購入に際して1つ注意があります。というのもすべて受注生産となるため、会場での在庫販売はありません。展覧会会期中、オンラインショップ「ポンパレモール」(https://store.ponparemall.com/rcc-gallery/)にて予約注文販売されます。発送は3月末の予定です。

前掛けの産地である豊橋市は、1950年〜70年代にかけ、多い日に1日1万枚もの前掛けを出荷していました。前掛けの産地である豊橋市は、1950年〜70年代にかけ、多い日に1日1万枚もの前掛けを出荷していました。

前掛けは1点6,500円(税込)。丈52センチのショートタイプと、67センチのロングタイプの2種類とも同じ価格です。決して安くはありませんが、1つ1つが職人の手作りであることを鑑みれば、妥当なお値段といえるのではないでしょうか。今回の企画に協力した有限会社エニシング(愛知県豊橋市)では、100年間使える丈夫な前掛けを実現するため、最高級の生地を用い、古いトヨタ製のシャトル織機によって製造しています。同社は豊橋の職人から技術を学び、2005年から前掛けの企画販売を続けていて、品質に間違いはありません。

『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』 展示風景『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』 展示風景

オンライン販売のために「銀座までなかなか行けない…」という方にも参加可能なチャリティーです。お店や会社はもちろん、アウトドアやキッチンなどさまざまシーンで長く愛用できる前掛け。自分で使うのはもちろん、大切な人へのプレゼントにも良いかもしれません。まずは公式サイトをチェックしてみてください。

『Creation Project 2021 144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる「百年前掛け」』 クリエイションギャラリーG8、ガーディアン・ガーデン
開催期間:2021年12月9日(木)~ 2022年1月22日(土)
所在地:東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F(クリエイションギャラリー G8)、東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F(ガーディアン・ガーデン)
アクセス:JR線新橋駅、東京メトロ銀座線新橋駅5番口より徒歩3分(クリエイションギャラリー G8)。東京メトロ銀座駅C2出口より徒歩5分(ガーディアン・ガーデン)。
開館時間:11:00〜19:00
休館日:日曜・祝日。年末年始(12月26日〜1月5日)
無料
http://rcc.recruit.co.jp/creationproject/2021/
https://store.ponparemall.com/rcc-gallery/

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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