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2022.8.17

待望の開催!『ボストン美術館展 芸術×力』の見どころは?古今東西のおよそ60点が集結

新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年に中止となった『ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)』が、2年の時を経ていよいよ待望の開催を迎えました!

美術館風景

エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本などさまざまな地域で生み出された、「芸術と力」に焦点をあてた約60点もの貴重なコレクションがご覧になれます。

東京都美術館にて開催中の『ボストン美術館展 芸術×力』をご紹介します。

ボストン美術館とは?

会場風景_正面:《大日如来坐像》平安時代、長治2年(1105)

ボストン美術館は、1870年にボストン市民をはじめとする有志によって設立され、1876年のアメリカの独立100周年記念日(7月4日)に開館しました。

古代エジプト、アジア、ヨーロッパ、アメリカの美術をはじめ、古代から現代までの作品を収集し、そのコレクションの質の高さと百科事典的な幅の広さで知られています。

会場風景

2010年には、別館となるアメリカ館が設けられ、南北アメリカ大陸の美術の流れを見わたせるようになりました。また、2011年には現代美術のための新しい展示室が設けられ、これまでの作品とのつながりを意識しながら、今日の美術の動向にも触れることができます。

2020年に設立150周年を迎え、現在も拡張を続けており、開館当初およそ6,000点だったコレクションは、現在では50万点近くに及びます。

力とともにあった芸術の歴史を振り返る約60点の作品

会場風景_吉村周圭 《寛政内裏遷幸図屏風》 江戸時代 寛政2-7年(1790-1795)

本展覧会では、エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本などさまざまな地域で生み出された約60点の作品を紹介するとともに、芸術作品が本来担っていた役割に焦点を当て、力とともにあった芸術の歴史を振り返ります。

古今東西の権力者たちは、その力を示し、維持するために芸術の力を利用してきました。威厳に満ちた肖像画は権力を強め、精緻に描写された物語はその力の正統性を示します。

会場風景

また、美しい工芸品は宮廷を彩り、ときに外交の場で活用されてきました。一流の画家や職人につくらせた芸術品は、今も見る人々を圧倒する荘厳な輝きを放っています。

そして、多くの権力者たちは自らも芸術をたしなみ、またパトロンとして優れた芸術家を支援したほか、貴重な作品を収集しました。彼らが築いたコレクションは、今日の美術館の礎ともなっています。

2年ぶりとなる本展覧会…その見どころは?!

力を示す数々の絵画や彫刻に注目!

会場風景_手前 ローベル・ルフェーヴルと工房《戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像》1812年

会場では、世界有数のコレクションを誇るボストン美術館より、エジプトのファラオからヨーロッパの王侯貴族、日本の天皇・大名まで、古今東西の権力者たちに関わる作品がご覧になれます。

古代エジプトのファラオや19世紀のフランス皇帝ナポレオンをはじめ、統治者の姿は人々を圧倒するような姿で絵画や彫刻に表されてきました。大きさや威厳のある表情にくわえ、贅沢な衣装、装身具や紋章などによって富や知性、徳などが示され、その力が表現されています。

例えば、戴冠式に挑む35歳の皇帝ナポレオンを描いた肖像画では、金の月桂冠やワシの装飾のある笏(しゃく)により、ナポレオンが古代ギリシア・ローマなど、過去の偉大な統治者の後継であることが表されています。この肖像画のバージョンは30点以上現存し、宮殿や市庁舎などに飾られ、多くの人々に皇帝の権力と正統性を伝えていたそうです。

国内にあれば国宝級の二大絵巻が登場!

会場風景_《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》鎌倉時代、13世紀後半

本展では、いずれも国内に存在すれば国宝! と言われている海を渡った二大絵巻、《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》が揃って里帰りを果たしています。

遣唐使として唐に渡った吉備真備が、現地で数々の難題を吹っかけられるも、鬼となった阿倍仲麻呂の助けを借りてこれをことごとく退ける説話を生き生きと描いた《吉備大臣入唐絵巻》と、平安時代末期の上皇派と天皇派の対立を背景に起こった平治の乱をテーマに緊迫する戦いの様子を描き、合戦絵巻の最高傑作のひとつに数えられる《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》。

どちらの絵巻も物語の内容がわからなくても大丈夫! お話や鑑賞のポイントなどが丁寧に分かりやすくパネルやキャプションで提示されています。

宮廷の華やかなくらしを彩る調度品

会場風景 左上:《メアリー・トッド・リンカーンのイヤリング》1860年頃、左下:《メアリー・トッド・リンカーンのブローチ》1860年頃、中央:ラクロシュ・フレール社《日本風のブローチ》1925年頃、右:《ネックレス》1880年頃

贅を凝らして荘厳壮麗に飾り立てられた華やかなくらしを彩る調度品は、支配者の圧倒的な力と富の表象としての意味がこめられています。

宮廷の建築や庭園、室内の様子が描かれた作品のほか、元ファーストレディのアクセサリーやナポレオンの最初の妻・ジョセフィーヌの住まいであったマルメゾン城の食器セットなども展示され、さまざまな時代や地域の宮廷のくらしをご覧いただくことができます。

その中でも目が引くのは、世界で最も裕福な女性の一人とされたマージョリー・メリウェザー・ポスト(1887-1973)が所蔵していた、大粒のエメラルドにアイリスが施された煌めくブローチです。

最後に…

会場風景

今回、新型コロナウイルス感染症の影響から2年の時を経て開催となった『ボストン美術館展 芸術×力』。

さまざまな地域で生み出された貴重な作品を、それぞれの都市で栄えた歴史や文化、それを政治によって築いてきた権力者に思いを馳せながらご覧になってみてください。

また現在、静岡市美術館では『ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵 ─武者たちの物語』が開催されています。

▼東京展のレポートはこちら:ボストン美術館所蔵の武者絵&名⼑を一挙公開!「THE HEROES 刀剣×浮世絵-武者たちの物語」
https://irohani.art/event/6655/

こちらは同じくボストン美術館から、『平家物語』に代表される軍記物語や武勇伝説に登場する英雄たちの華々しい活躍を描いた武者絵の優品118点が展示されています。

関東圏内にボストン美術館の日本美術コレクションが揃う、またとないチャンス! ぜひ本展覧会と合わせて足を運んでみてください。


※全てボストン美術館所蔵

取材・撮影・文:新麻記子

『ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)』

会期:開催中~10月2日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
休室日:月曜日、9月20日(火)
    ※ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
チケット:日時指定予約制。当日券あり(ご来場時に予定枚数が終了している場合あり)
展覧会公式ホームページ:https://www.ntv.co.jp/boston2022/

【写真9枚】待望の開催!『ボストン美術館展 芸術×力』の見どころは?古今東西のおよそ60点が集結 を詳しく見る
新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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