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2023.6.20

北斎の作品と一緒に日本各地の山々をめぐる。すみだ北斎美術館にて『北斎 大いなる山岳』が開催!

日本一の高さを誇る富士山をはじめ、江戸時代にできた人工の低山・天保山など、全国各地の山を描いた浮世絵師、葛飾北斎。その作品には自然の風景だけでなく、山に登る人々の様子や山での暮らしや生業を描いたり、山にまつわる伝説からインスピレーションを得るなど、さまざまな要素を見ることができます。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 諸人登山」すみだ北斎美術館蔵(前期)

山の信仰、生業、伝説や怪談を紹介し、日本人と山の関わりをたどりながら、北斎の描いた山の表現と魅力に迫る『北斎 大いなる山岳』が、東京・両国のすみだ北斎美術館にて開催されます。

見どころ①天保山から筑波山、それに富士山まで。北斎と一門が描いた山々の魅力。

葛飾北斎「諸国名橋奇覧 摂州阿治川口天保山」すみだ北斎美術館蔵(作品を替えて通期展示)

まず1合目「富士山から低山まで ―北斎さまざまな山を描く―」では、日本各地の山を描いた作品をエリアごとに紹介し、北斎一門が工夫をこらした多彩な山岳表現を紹介。代表作『冨嶽三十六景』や『諸国名橋奇覧』、それに『北斎漫画』などから山をモチーフとした作品を楽しむことができます。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」すみだ北斎美術館蔵(作品を替えて通期展示)

このうち『冨嶽三十六景 凱風快晴』は、赤く染まる富士の山体から「赤富士」の名で親しまれる傑作です。「凱風快晴」の「凱風」とは南から吹いてくる夏のそよ風を意味していて、その風に吹かれて鰯雲が流れる空の下、朝日を浴びて中腹が赤みを増していく富士山の光景を見事に描いています。

葛飾北斎「諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし」すみだ北斎美術館蔵(後期)

『諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし』は、和銅6年(713)に行基上人の開創と伝えられる名刹、行道山浄因寺(栃木県足利市)を描いたもの。境内にある天高橋は、巨岩の上に建つ茶室清心亭に行く橋で、雲や霧に包まれながら天空の断崖上に位置するかのように表され、その高さが強調されています。

二代葛飾北斎「倣文晁山水図屏風」すみだ北斎美術館蔵(前期)

初公開となる二代葛飾北斎の『倣文晁山水図屏風』も見どころです。桜の咲き誇る奈良の吉野山、高峰(高見山)、音羽山を一望に捉えた屏風で、印文「鱸弘貞印」と記されていることから、絵師は二代北斎を襲名した鈴木氏と考えられています。

見どころ②アクロバティックな作業風景も登場!山の中で生き、働く人々たち。

北斎と一門による山の暮らしを描いた作品を通し、風景だけではなく人々にも注がれた北斎のまなざしをたどるのが、2合目「山のくらし」の展示です。

北斎は山のすがただけでなく、木こり、猟師、金山の採掘など山中で働き暮らす人々や、山麓での営みも描写しました。また高い木の上での伐採や断崖絶壁での岩茸採りなど、山ならではの危険と隣り合わせの仕事は、北斎の創造力や創作意欲を大いに刺激しました。

葛飾北斎『北斎漫画』十三編 岩茸取 すみだ北斎美術館蔵(通期)

『北斎漫画』十三編(岩茸取)のモチーフは、人が容易に近づけないような険しい岩場に生え、山菜や漢方として珍重される地衣類(ちいるい)の岩茸です。北斎はロッククライミングのように岩場に登ったり、吊り下げられた篭に乗って岩茸を採取する女性のアクロバティックな作業風景を緻密に描いています。

見どころ③烏天狗に狒々、山姥のすがたとは?妖怪の魑魅魍魎な世界。

ラストの3合目「山と伝説―山怪―」では、山の怪や山に伝わる伝説、またそれらをモチーフとした物語を取り上げています。古来より山は神聖な場であり、異界あるいは異界への入口とされていたため、山男や山姥、天狗、鬼などの不思議な存在がいると信じられてきました。

葛飾北斎『北斎漫画』三編 天狗 狒々 幽霊 山姥 すみだ北斎美術館蔵(通期)

魑魅魍魎とした『北斎漫画』三編(天狗 狒々 幽霊 山姥)も見ておきたい作品のひとつです。ここには深山に住む伝説上の生き物である天狗(烏のような嘴を持っているため、烏天狗だとされています。)、 猿が大型化したような妖怪の狒々(ひひ)、また幽霊や山奥に住む女性の妖怪の山姥(やまうば)などが描かれています。幽霊を除くと山に関係した存在が多く、山深い場所に豊かな妖怪世界が広がっていると考えられていました。

葛飾北斎「木曽路名所一覧」すみだ北斎美術館蔵(前期)

このほか、プロローグ(登山口)では「日本人と山」と題し、富士山を崇拝する山岳信仰の富士講や霊山を巡った江戸時代の人々の信仰と旅の関係を作品にて紹介。木曽街道(中山道)のほか、甲州街道、日光街道など複数の街道などを鳥瞰図法にて描いた北斎の『木曽路名所一覧』が同館では初めて公開されます。

魚屋北溪「諸国名所 肥前稲佐山」すみだ北斎美術館蔵(後期)

北斎や門人が描いた山は日本列島各地に広がっていて、本展に出品作に描かれた主な山だけも実に30にも及びます。またキャプションには作品解説をはじめ山の説明のほか、「登山好き学芸員の現地レポート」がある作品も見過ごせません。

葛飾北斎『富嶽百景』初編 不二の山明キ 辷リ すみだ北斎美術館蔵(通期)

すみだ北斎美術館の『北斎 大いなる山岳』にて、北斎と一門の作品と一緒に、日本各地の山々をめぐりましょう。

展覧会情報

『北斎 大いなる山岳』 すみだ北斎美術館
開催期間: 2023年6月20日(火) 〜8月27日(日)
 ※会期中、一部展示替えを予定。前期:6月20日(火)~7月23日(日)、後期:7月25日(火)~8月27日(日)
所在地:東京都墨田区亀沢2丁目7番2号
アクセス:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩9分
開館時間:9:30~17:30
 ※入館は17:00まで
休館日:月曜日
 ※7月17日(月・祝)は開館、7月18日(火)は休館
観覧料:一般1000円、高校・大学生700円、65歳以上700円、中学生300円
https://hokusai-museum.jp/

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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