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STUDY

2023.8.14

初期ルネッサンス画家フラ・アンジェリコの人生とは?特徴や見どころも

フラ・アンジェリコは『受胎告知』などで知られる初期ルネッサンスのイタリア画家です。15世紀前半のイタリアで活躍し、多くのキリスト教作品を残しました。

フラ・アンジェリコ『プラドの受胎告知』, Public domain, via Wikimedia Commons

フラ・アンジェリコの「アンジェリコ」はイタリア語で「天使のような」という意味があります。この記事ではローマの大学院で美術史を専攻する筆者が、宗教芸術に捧げられたフラ・アンジェリコの人生と作品の特徴・見どころを紹介します。

「天使のような」フラ・アンジェリコの人生

フラ・アンジェリコ『聖母と幼子』, Public domain, via Wikimedia Commons

フラ・アンジェリコ(1390/1395-1455年)の本名はグイード・ディ・ピエトロ (Guido di Pietro)と言います。フラ・アンジェリコ(「天使のような」の意)の名はいわゆるあだ名で、彼が多くの宗教作品を残したことが由来です。

フラ・アンジェリコは10代の頃から修道会に入信しており、生涯を通して何度も修道会の重要な役職に就いていました。ルネッサンスの美術家列伝を残したジョルジョ・ヴァザーリによれば、フラ・アンジェリコは装飾写本のイラストレーターとして芸術活動を始めたそうです。

1436年にフィレンツェの修道院に移ったことをきっかけに、フラ・アンジェリコは芸術家として大きな刺激を受けることになります。当時のフィレンツェはルネッサンスの機運の真っただ中にあり、多くの芸術家が新しい芸術の追求に切磋琢磨していました。

フラ・アンジェリコが残した作品のなかでもっとも有名なものは、『受胎告知』でしょう。実際、スペインのプラド美術館所蔵の『プラドの受胎告知』をはじめとした受胎告知3部作 と『サン・マルコの受胎告知』は、フラ・アンジェリコのキャリアの中で重要な作品でした。

しかしフラ・アンジェリコの生涯においてもっとも栄誉ある仕事は、おそらくヴァチカン宮殿のニッコリーネ礼拝堂のフレスコ画だったはずです。教皇のプライベートな礼拝堂として設けられたこの小部屋を、フラ・アンジェリコは聖ステファノと聖ラウレンティウスの物語で装飾しました。

フラ・アンジェリコ,ニッコリーネ礼拝堂, Public domain, via Wikimedia Commons

機能的理由により残念ながらニッコリーネ礼拝堂には入れませんが、作品に込められた繊細で慎ましい美しさはフラ・アンジェリコの謙虚な性格を表しているかのようです。

ヴァザーリは、フラ・アンジェリコがニッコリーネ礼拝堂のためにローマを訪れた際、教皇ニコラウス5世からフィレンツェ大司教の座を任命されて断ったという逸話を残しています。この逸話は真偽が問われているものの、そんな話が信じられるほどフラ・アンジェリコは慎ましい人物でした。

フラ・アンジェリコ作品の特徴は「神聖な静けさ」

フラ・アンジェリコ,ニッコリーネ礼拝堂, Public domain, via Wikimedia Commons

フラ・アンジェリコの作品の特徴は、神聖で落ち着いた雰囲気です。フラ・アンジェリコが制作した作品はほとんどが宗教画であり、ときには金箔をふんだんに使用した豪華なものもあります。

しかし彼の作品は、絢爛な装飾による威圧的な主張というよりは、荘厳な静けさを携えています。初期ルネッサンスの作品は後期ゴシックの潮流を残し静的な構図のことが多いですが、フラ・アンジェリコはそれ以上に、神聖さの表現方法を深く理解していたように感じます。

フラ・アンジェリコは初期ルネッサンスの大発明であった遠近法を取り入れつつも、聖なる存在を自然な形で際立たせています。彼の作品の美しさを支えているのは、絵画テクニックだけではなく、彼の敬虔で信心深い精神だったのでしょう。

フラ・アンジェリコ作品の見どころは「優しい色合い」

フラ・アンジェリコ『東方三博士の礼拝』, Public domain, via Wikimedia Common

フラ・アンジェリコの作品を見る際にぜひ注目してほしい点が、「色合い」です。フラ・アンジェリコははっきりとした色彩以外に、ニュアンスカラーを用いることがあり、作品全体の慎ましさをより引き立たせています。

『プラドの受胎告知』と『サン・マルコの受胎告知』の比較では、その違いは一層顕著です。『プラドの受胎告知』の受胎告知が祭壇画、つまり多くの信者の目に映る場所に設置するための作品であったのに対し、『サン・マルコの受胎告知』は修道院内部に描かれました。

フラ・アンジェリコ『プラドの受胎告知』, Public domain, via Wikimedia Commons

フラ・アンジェリコ『サン・マルコの受胎告知』, Public domain, via Wikimedia Commons

2つの受胎告知を比較するとはっきりわかるように、『サン・マルコの受胎告知』では意図的に簡素な構図と控えめな色味が用いられています。これは修道会全体を通じて大切にされた「清貧」の考え方を反映しているのでしょう。フラ・アンジェリコ作品の面白さは、美しさを通して芸術家の信仰心を感じられる点です。

作品鑑賞の際はぜひ神聖な雰囲気に注目してみてくださいね。以上、フラ・アンジェリコの人生、作品の特徴、見どころ紹介でした!

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はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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