STUDY
2025.12.31
浮世絵の種類はこれだ!版画技法とジャンルにみる江戸の多様な美
浮世絵は江戸時代に花開いた、世界に誇る日本の大衆文化です。その魅力は美人画や風景画など題材の多様性はもちろん、版画技法の革新性にもあります。
また、絵の種類は多岐にわたり、細かく分類することが可能です。本記事では、浮世絵の種類について「色数」「作り方」「サイズ」「ジャンル」の4つの観点から解説し、多様な美の魅力を紹介します。
歌麿筆「江戸名物錦画耕作」より『画師・板木師・礬水引』、木版画, Public domain, via Wikimedia Commons.
浮世絵の色数
浮世絵は墨刷りから始まり、次第に色が加えられ、最終的に多色摺り版画である錦絵(にしきえ)へと発展しました。
墨一色から手彩色へ
恋のみなかみ : 全 / [菱川師宣], Public domain, via Wikimedia Commons.
初期の浮世絵版画である墨摺絵(すみずりえ)は、浮世絵の祖といわれる菱川師宣の時代に登場しました。絵師が描いた下絵を彫師が版木に彫り、それを墨一色で摺ったシンプルな形式です。
そこに筆で彩色を施したものを、墨摺筆彩(すみずりひっさい)といいます。色数は限られていましたが、彩色することで表現の幅が広がりました。
彩色版画の始まり
作者: 初代鳥居清信 歌舞伎役者, Public domain, via Wikimedia Commons.
やがて、手作業による彩色から、版木を使って色を摺り重ねる彩色版画の時代へと移行します。初期の彩色版画では、赤い色が主役となりました。
丹(に)という赤土の顔料を使用した丹絵(たんえ)、ベニバナから抽出した紅色を使用した紅絵(べにえ)など、素材にも工夫が見られます。また、膠(にかわ)を混ぜて光沢を出し、あたかも漆器のような重厚な質感を出した漆絵(うるしえ)なども描かれ、浮世絵の色彩表現は多様化しました。
多色摺りの完成
鈴木春信 (1724–1770) 『座舗八景 塗桶の暮雪』, Public domain, via Wikimedia Commons.
浮世絵の歴史を大きく変えたのは、多色摺り技術の完成です。まずは赤や紅と緑など、数色の版木を重ねて摺る技術が確立され、紅摺絵(べにずりえ)が登場しました。
その後、1765年頃に鈴木春信によって大成された錦絵(にしきえ)が、多色摺り木版画の総称です。十数色、あるいはそれ以上の色数を使用可能にし、「東錦絵(あずまにしきえ)」とも呼ばれました。高度な彫りと摺りの技術によって、浮世絵は一気に華やかさを増し、誰もが手軽に購入できるものとして大衆に広まりました。
浮世絵の作り方
浮世絵は作り方によって、木版画と肉筆画の大きく2種類に分けられます。
木版画は彫師、摺師、絵師、版元による分業体制で制作されたもので、大量生産を可能にしました。安価で手に入りやすく、庶民の娯楽として流通したことが特徴です。一方で肉筆画は、絵師が絹や紙に筆で直接描いた、一点ものの豪華な絵画です。大名や富裕層への贈答品、高級な注文品としてニーズがありました。
また、浮世絵の絵師たちは、絵入版本(えいりはんぽん)という本の挿絵も多く手掛けました。戯作、洒落本、黄表紙、狂歌本など当時流行した読み物には挿絵が入り、庶民を楽しませました。また、いわゆる画集である「絵手本」も作られるなど、さまざまな出版物が存在しました。
浮世絵のサイズ
一枚摺(いちまいずり)と呼ばれる一枚の紙に摺られた版画には、用途や時代によってさまざまなサイズ規格がありました。主に大判、中判、間判、細判、柱絵判があり、需要に応じて大きさが決まることもあったといいます。
また、数枚の大判を横に並べて一つの絵にする続絵(つづきえ)では、大画面で風景や合戦などを表現しました。
浮世絵の主な絵画ジャンル5つ
浮世絵は絵のジャンルも多様性に富んでいます。以下では、主な題材について解説します。
人物画
喜多川歌麿《寛政三美人》, Public domain, via Wikimedia Commons.
人物画の中でも、代表的なものが美人画です。遊女や町娘など、当時の人気女性やそのファッションを描きました。女性の繊細な表情や、流行の着物の模様などが細密に描かれ、鑑賞において見どころとなっています。
また、江戸では芸能が盛んで、役者絵や歌舞伎絵も流行しました。歌舞伎役者の舞台姿やブロマイドを描いた浮世絵は、観劇に訪れるファンから大きな支持を得て流行したものです。浮世絵の主要なジャンルの一つとして、当時の芝居熱を支えました。
風景画
東海道五拾三次之内 金谷 大井川遠岸, Public domain, via Wikimedia Commons.
風景を描いた名所絵は、江戸時代後期、庶民の間で旅がブームとなったことで一気に発展しました。葛飾北斎の富士山を主題としたシリーズ《富嶽三十六景》や、歌川広重が宿場町の風景を描いた《東海道五十三次》は後世でも人気が高く、特に有名です。
これらの作品は、遠近法や大胆な構図も取り入れられ、浮世絵の国際的な評価を高めるきっかけとなりました。
歴史画
歌川国芳 「川中島百勇将戦之内 勇将荒川伊豆守」, Public domain, via Wikimedia Commons.
武者絵や歴史画は、豪快な武士や歴史上の英雄、伝説の怪物などを主題としたジャンルです。中でも、歌川国芳は豪傑たちの勇猛な姿を描き、庶民から絶大な人気を博しました。
また、月岡芳年は血みどろ絵(無惨絵)と呼ばれる、凄惨でグロテスクな描写を得意としたことで広く知られています。
花鳥画
葛飾北斎《芍薬 カナアリ》, Public domain, via Wikimedia Commons.
花鳥画は鳥や花、動物などを描く専門的なジャンルで、浮世絵よりも前の時代から日本画の題材として親しまれてきました。葛飾北斎も優れた観察眼と描写力で、この分野の作品を残しています。
戯画
歌川国芳《たとゑ尽の内》, Public domain, via Wikimedia Commons.
滑稽な表現や風刺、だまし絵の要素を含むなど、娯楽性の高い浮世絵を戯画といいます。歌川国芳は猫や金魚などをユニークに描き、ユーモアあふれる作品を多く残しました。
浮世絵の種類はこんなにも多様
浮世絵はシンプルな墨摺絵から始まって以来、さまざまな種類と技法によって、江戸時代の文化を記録し続けました。
その多様性と、大胆な構図や色彩の感覚は、現代のグラフィックデザインやマンガ・アニメにまで影響を与えています。創意工夫の豊かな大衆芸術であったことこそ、浮世絵の魅力といえます。ぜひ、美術館や博物館でもお楽しみください。
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文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。アートと日本伝統文化を専門としつつ、現代美術やカルチャーなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信する他、Podcastでは伝統芸能にまつわるトークを配信中。
文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。アートと日本伝統文化を専門としつつ、現代美術やカルチャーなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信する他、Podcastでは伝統芸能にまつわるトークを配信中。
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