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STUDY

2021.7.7

葛飾北斎を10倍楽しむ!「絵に魂を売りすぎた男」のぶっ飛びエピソード

「葛飾北斎」といえば国内外問わず最も知名度の高い日本画家といっていいでしょう。「漫画」という言葉を定義したり、ゴッホ、ドガなどの西洋画家に影響を与えたり……彼が国内外にもたらした功績は大きすぎます。

「絵」に関しては超天才だった葛飾北斎。そんな彼のプライベートは、ちょっと常人の我々では理解できないものでした。今回は葛飾北斎のスゴさを振り返るとともに絵に情熱を燃やし過ぎて、ちょっとおかしくなっちゃった彼のおもしろエピソードを紹介します。

葛飾北斎の功績をざっくり振り返ってみる

はじめに「葛飾北斎っていったい何がすごいのか」をざっくりと紹介します。

もともと貸本屋の丁稚などをして幼いころから働いていた彼は、19歳で勝川派に所属。本格的に浮世絵の道に進みます。しかし他の流派の技法を学びにいき35歳で破門。数年後にはどこの流派にも属さず、自由に絵を描き始めました。

そして50歳を超えてから発表した「北斎漫画」が大ベストセラーになります。葛飾北斎は「漫(そぞ)ろな感じでさらさら~っと描いたから『漫画』だよ」と言いました。

北斎漫画Katsushika Hokusai | Random Sketches by Hokusai, Volumes 1 to 11 | Japan | Edo period (1615–1868) | The Metropolitan Museum of Art

ちなみに北斎漫画を出す少し前に葛飾北斎のライバル・北尾政美が「略画」を書いています。北尾は葛飾北斎について「こいつは昔からマネばっかりする」とキレてましたが、ともかく葛飾北斎は漫画をはじめて定義した人物としても知られるようになったのです。

また葛飾北斎の代表作である「富嶽三十六景」は70歳を超えてから初版が刊行されたものです。特に有名な「神奈川沖浪裏」の波の形状は、ハイスピードカメラで写したものと酷似していると話題にもなりました。

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏葛飾北斎,Katsushika Hokusai『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』(東京富士美術館所蔵) 「東京富士美術館収蔵品データベース」収録

この背景には「波の伊八」こと彫刻師・武志伊八郎信由の影響があるという声もあります。たしかに武志伊八郎信由の代表作「波に宝珠」と葛飾北斎の絵がかなり似ているのは事実です。

しかしもちろん画法として確立したのは葛飾北斎の功績であり、「覗画法」としてゴッホ、セザンヌ、ドガなどの海外の画家にも影響を与えました。

冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二葛飾北斎,Katsushika Hokusai『冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二』(東京富士美術館所蔵) 「東京富士美術館収蔵品データベース」収録

Paul Cézanne | Mont Sainte-Victoire | The Metropolitan Museum of Art

改名30回、引っ越し93回の背景にあった「本物の絵描き」への憧れ

さて、国内の画壇だけでなく、漫画界や西洋画壇にまで影響をもたらした葛飾北斎。彼のプライベートはとにかくはちゃめちゃで「天才とはかくあるべき」という感じです。

例えば彼は30回も改名しています。勝川春朗から始まり、北斎、可侯、辰政、戴斗、為一など次々に名前を変えては弟子に号を渡していたそうです。そんな彼が70歳を超えてから名乗った名が「画狂老人卍」。うっすらと感じる中二病っぽさがたまりません。また春画(現代のエロ本)を描く際のペンネームが「鉄棒ぬらぬら」。葛飾北斎がいかにユーモラスなひとだったかが分かります。


また葛飾北斎は極度のずぼらでした。出前には給料袋ごと投げて渡す。9月から4月まではずっとこたつに入って生活する。掃除なんてせずゴミ屋敷で娘・応為と絵を描き、限界がきたら引っ越す。という暮らしだったので日本一の画家だったのに常に困窮しており、引っ越しは93回にもなりました。

また人付き合いが極端に苦手で話しかけられたくないので外を歩く際には常にぶつぶつと呪文を唱えていたそうです。「しっ、見ちゃダメ」と言われそうなおじさんだったんですね。

この奇行の背景にあったのは「本物の絵描きへの憧れ」でした。改名したのは「初心を忘れないため」という説があります。また掃除をしないのも会話を嫌がるのも絵に集中したいからだったといわれます。

今年7月からは生誕260周年を記念した特別展がスタート

そんな葛飾北斎は今年で生誕260周年。記念企画として7月22日から東京都港区六本木の東京ミッドタウン・ホールで『特別展 北斎づくし』が開催されます。北斎漫画、富嶽三十六景、富嶽百景がぜんぶ展示されるかなり力の入ったイベントです。

「絵に魂を売りすぎた男」のストイック過ぎる作品を、実際に体感してみてはいかがでしょうか。


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ジュウ・ショ

ジュウ・ショ

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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

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