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STUDY

2021.7.15

西洋美術史を流れで学ぶ(第2回) ~エーゲ美術編~

何かと難しく語られがちな西洋美術史を、気取らずに楽しく紹介するこの企画。前回は原始時代からエジプト・メソポタミアの美術について紹介しました。

第2回はエーゲ美術です。ゆるキャラみたいなかわいい彫像や、色鮮やかなフレスコ画など、地中海近辺の豊富な資源を用いて作られた作品を見ていきます。

前期キクラデスII期の群像Smial, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

エーゲ美術はキュクラデス・クレタ・ミュケナイの3つの文化に分かれる

エーゲ美術は紀元前3000年ごろから、今のギリシャ地方で発展しました。銅や銀、鉛などの名産地として知られ、周辺諸国よりも裕福だったギリシャ地方は2000年近くも盛り上がることになります。超大国です。

そんなギリシャ地方で紀元前1200年くらいまで流行ったのがエーゲ美術。時期や場所よって「キュクラデス美術」「クレタ美術」「ミュケナイ美術」の3つの順番に分かれます。


シュールすぎるキュクラデス美術の大理石人形

前半のキュクラデス文化でメインとなる創作物は大理石の超抽象的な石偶です。なんか『パーマン』のコピーロボットみたいな……顔は鼻だけが隆起しており、すべて前を向いているのが特徴です。

前期キクラデスII期の群像Smial, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

見てください。謎のファミリー組体操です。演目はおそらく「自慢の我が子」です。子の"ドヤ感"がすごいですが、キュクラデス文化の特徴として多くの像が腕を組んでいます。(おそらく技術も発達していない時代だったので、掘りやすかったのかな)。

全員が「無」の表情ですね。デート当日に鳥の糞を食らった瞬間みたいな顔をしています。西洋美術史ではこの後にも石像がどんどん出てきますが、間違いなくそのスタンダードになったのはキュクラデスのものです。


クレタ文化

クレタ文化ではこの石偶が近い形で引き継がれます。『竪琴弾きの男』など、キュクラデス文化の人形に比べて、少し複雑になっています。

また加えて宮殿が作られたりし始めました。なかでも有名なのが「クノッソス宮殿」です。エーゲ美術で最大の宮殿で入り口には雄牛のフレスコ画が描かれています。

雄牛と二人の女性が描かれたフレスコ画unknown ancient artist, Public domain, via Wikimedia Commons

当時、雄牛は大事な家畜であり、なぜかクノッソス宮殿では男女3人で雄牛を飛び越えるスポーツが流行っていたそうです。なんだそれは。なんで男女3人なんだ。何がどうなれば勝敗がつくんだ。などツッコミどころ満載ですが、そっとしときましょう。

このフレスコ画を見ても分かる通り、クレタ美術では壁画を描く文化も浸透していました。アクロティリ遺跡にもゴージャスな壁画があり、当時の人々の暮らしがよくわかります。


黄金のマスクなどが出てくるミュケナイ文化

エーゲ美術後期のミュケナイ文化では死者の顔を覆うマスクが現れるなど、だんだんツタンカーメンやピラミッドのようなエジプト文明のフォロワー感が出てきます。「エジプトと交流してんなぁ〜」ってのがわかります。

アガメムノンのマスクDieBuche, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

しかしツタンカーメンが人間離れしていたのに対して、ミュケナイ美術の黄金のマスクは、眉毛や髭までがくっきり彫られていて人っぽさMAXです。エーゲ近辺では「神は人と同じ姿のはずだ」という考え(神人同形説)だったため、人と同じ造形の副葬品などが作られました。


突如「暗黒時代」に突入し、ギリシャ美術へ

しかしミュケナイ文化は、この後の紀元前1200〜700年ごろまで、突如として文献がなくなるんです。この事件を「前1200年のカタストロフ」といい、空白の期間は「暗黒時代(厨二心をくすぐるネーミング)」といわれます。

おそらく海の民に滅ぼされたのではないか、といわれていますが、文字を含む文化そのものがなくなったため、直接的な原因は推察すら難しいんですね。美術の観点でいうとフレスコ画で触れた彩色画も失われてしまいました。

しかし逆に鉄器が持ち込まれたことで食器に絵を描く「壺絵」が発達するなど、よくよく考えたら文化としてはポジティブな効果もあったとされています。


さて、次回はそんな暗黒時代明けの「ギリシャ美術」についてご紹介します。特にエーゲ美術の彫像がどのように進化を遂げたのか、またその背景には古代ギリシャ人のどんな考えがあったのかについてみていきましょう。

ジュウ・ショ

ジュウ・ショ

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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。