Facebook Twitter Instagram

STUDY

2021.8.12

西洋美術史を流れで学ぶ(第4回) ~ローマ・エトルリア編~

なぜかやたら難しく語られがちな西洋美術史を、おもしろおかしく紹介していくこの連載。前回はギリシャ美術の筋肉ムキムキな彫刻の秘密を紹介しました。

今回はギリシャ美術と同時期に生まれて発展してきたエトルリア・ローマ文化を楽しくみていきます。『テルマエ・ロマエ』のような彫りの深い古代ローマのおじさんたちは、どんな考えで美術品を作っていたのでしょうか。

エトルリア人による巨大墳墓群「ネクロポリス」

エトルリア人による文明は紀元前10世紀から起こり始めます。実はいまだに謎に満ちた方々で起源や言語などは絶賛調査中です。分かっている部分だけを述べると、エジプト文明の影響を受けている一面もあり「来世思想」を持っていました。

ただエトルリア人独特の文化も多々あったのは確かです。なかでも強烈なのが「墳墓」。「ネクロポリス(死の街)といわれる巨大墳墓が、数百も見つかっています。もはや墓ではなく「都市」であり、エトルリア人が本気で「来世」を信じていたことが分かります。

ネクロポリスRoberto Ferrari from Campogalliano (Modena), Italy, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

エジプト人の場合、人間をミイラにして「魂が戻る場所」を確保しようとしました。そして来世では神々の審判を受けると考え、攻略本である「死者の書」を壁画に掘っています。
エトルリア人はもっとリアルで真剣です。墳墓内にはいくつかの通路があり、キッチン備えつけ。宴会場まであり、食器や調理器具まであります。

棺GerardM, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

棺にもにっこにこで長椅子に寝そべる夫婦が掘られているなど、もう「苦しみのないあの世でしこたま飲むぞー!」という気概に満ち溢れています(本当にこの棺が使われていたかは未確定)。

ローマ王の威厳を示すためにできたコロッセオにカラカラ浴場

さて、そんなエトルリア人は紀元前1世紀ごろにラテン人が建設したローマに吸収されます。ローマは徐々に文明を組み立て、ギリシャ美術の影響を受けつつ、独自の文化を発達させていきました。

なかでも「これぞローマ美術」というのが巨大建築です。これらの多くが王の威光を国民に示すために作られました。

コロッセオJean-Pol GRANDMONT, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

例えば闘技場「コロッセオ」は5万人を収容するほど巨大。大理石のブロックを積み上げ、アーチを支柱に使うことで円形に建築しました。剣闘士たちが本気で戦い、ときには公開処刑、罪人同士の殺し合いがおこなわれ、観客は熱狂していたというからドン引きです。今の後楽園ホールとか両国国技館とはわけが違います。

カラカラ浴場Agnete, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

またカラカラ帝がつくった「カラカラ浴場」も国民に権力をイメージづけるために作られました。館内には2,000から3,000の浴室があったほか、図書館や競技場などがあります。今でいうとバカでかいスーパー銭湯です。

パンテオンMacrons, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

また「パンテオン」も重要な建造物です。ギリシャ美術以前はこのようなドーム型の建築は不可能でした。これを可能にしたのが「コンクリートの発明」です。石材では重量が大きすぎて上部のバランスを保てませんでしたが、凝灰岩と軽石を組み合わせることで支柱の無いドーム型建築が可能になりました。

ギリシャ文明の影響が残る「彫像」

ローマ美術は可愛いのは、これだけ勢力を広げたにも関わらず文化に関して「ギリシャにはかなわないっす」と思っていたところ。そこでローマ人は彫刻だけはギリシャ人に作ってもらっていました。

ローマンズ・コピーRadomil (talk · contribs), CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

しかも国民から超人気だったので、元のブロンズ像を大理石でコピーしていました。これを「ローマンズ・コピー」といいます。で、なんと元のオリジナルは溶かして軍事兵器にしてしまったんです。ですので、今でもいろんな美術館に同じ作品が飾られていることもあります。

さて、今回はエトルリア・ローマ美術について紹介しました。ローマ美術はこの後の「ルネサンス期」などにも影響を与えることになります。特に建築の分野では西洋美術史全体に影響を与えました。
そんな大国ローマももちろん、衰退していきます。次回はローマ衰退後に隆盛していくキリスト教と、美術作品についてフランクに見ていきましょう。

ジュウ・ショ

ジュウ・ショ

  • twitter
  • note
  • homepage

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。