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STUDY

2021.8.20

西洋美術史を流れで学ぶ(第5回) ~キリスト教編~

難しく語られがちな西洋美術史を、おもしろおかしくフランクに紹介していくこの連載。前回は独自の建築手法などを生み出しつつ、ギリシャ美術熱狂的フォロワーだったローマ美術を紹介しました。

・関連記事:西洋美術史を流れで学ぶ(第4回) ~ローマ・エトルリア編~
https://irohani.art/study/4513/

今回はローマが弱くなった後にヨーロッパ全土に広がることになる「キリスト教」にまつわる美術作品を紹介します。

ローマ分裂とキリスト教の広がり

キリスト教は1世紀にユダヤ教から分派する形で独立します。その後、ローマ帝国内でスマホくらいの猛スピードで普及します。

キリスト教は「一神教」。つまり「キリスト最高!あなただけを崇拝します!」という考え。しかし1世紀から3世紀ごろまでのローマは強烈な帝政です。ローマとしては「皇帝すら神」くらいのテンションで帝国を愛してほしかったので、最初はキリスト教を禁止にしていました。

ただローマは4世紀に弱くなって東西に分裂。もはや国としてもキリスト教を認めざるをえなくなったんです。この4世紀末からローマ一強時代は終わり、堂々とキリスト教が広がりだします。ここから15世紀くらいまでを「中世」といいます。

偶像崇拝禁止により「シンボル」が誕生

さて、東西に分裂したローマのうち西は速攻でゲルマン民族に滅ぼされてしまいます。いっぽう東は15世紀まで隆盛します。両方とも最初は「偶像崇拝禁止」という約束事がありました。

例えばキリストの絵を描いて、毎朝「おはようございます」とか言うのは背信行為なんです。「キリスト」と「キリストの偶像」があると、存在として2つになります。一神教とはそれほどまでにリアルガチなんですね。

でも崇拝するキリストを描きたい。そこで西ローマでは「シンボル」として「魚」や「羊飼い」が描かれました。

ガッラ・プラキディア廟堂(びょうどう)にあるモザイク画『よき羊飼い』Meister des Mausoleums der Galla Placidia in Ravenna, Public domain, via Wikimedia Commons

「魚」は「イエス」「キリスト」「主の子」「救い」の頭文字を並べると「イクティス(魚)」を意味することからシンボルとなり、「羊飼い」はキリストが福音書で羊飼いと自称していたことから描かれるようになったんです。

東ローマでは「イコン」が発達

東ローマ帝国はビュザンティオンに都を置いたので「ビザンティン」といわれます。西ローマと同様に東ローマでも偶像崇拝は禁止で「聖像破壊運動」まで起きていました。

キリスト教側としては「偶像崇拝やめろー!」と怒ってました。ただ絵画は当時としてはキリスト教布教に最も効果的なメディアだったのも確かです……。

だんだんと「『モーセの十戒』にはダメって書いてあるけど……別によくない?」とブレてきます。9世紀には「イコン(聖なる器)」とめっちゃ良いようにいわれ「う〜ん、個人で拝むならOK」となりました。

『ウラジーミルの生神女』(イコン)Tretyakov Gallery, Public domain, via Wikimedia Commons

正当化された後も聖像破壊運動の対象になりましたが、だんだんと聖書の一場面のキリストを描けるようになります。

中世のサブカル・ケルト美術

ローマがめちゃめちゃ領土を広げていましたが、今のアイルランドなどにはケルト人という独自の文化を継承している民族がいました。彼らは4~5世紀ごろにキリスト教化するも、動植物や渦巻の文様などユニークな文化を誇っていました。

ケルト美術はギリシャやローマに比べて、テキスタイルっぽい、おしゃれな柄が特徴。今でいうところのサブカルチャーって感じで、ヴィレッジヴァンガードにひっそり置かれていてもいいくらいの作品なんです。

なかでも緻密すぎる装飾があしらわれた「写本」は真骨頂。十字架をかたどったうえでその周辺に幾何学模様を散りばめた作品は、今見てもキュートでおしゃれです。「レディ・メイド」なんていわれて大量生産のデザイナーズ工業品が出てくる遥か前から、人類はデザインパターンを知っていたんですね。

『リンディスファーン福音書』の『カーペット・ページ』Meister des Book of Lindisfarne, Public domain, via Wikimedia Commons

今回は初期キリスト教の美術に関して紹介しました。偶像崇拝禁止の時代からだんだんと変化しキリスト自身を描けるようになった、とっても面白い時期ですね。なお、ここから長い間、キリストはモチーフとして描かれまくります。「キリスト像を見れば西洋絵画史が分かる」といわれるくらいです。

さて、次回は今でも人気の高い、10世紀から14世紀あたりのロマネスク・ゴシック美術についてご紹介します。

ジュウ・ショ

ジュウ・ショ

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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。