EVENT
2026.10.8
静岡県立美術館「ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界」蛙が学び、猫又が踊る!「河鍋暁斎の世界」で出会う画力とユーモア
あでやかな着物に身を包んだ遊女の傍らで骸骨たちが踊り、三味線を弾く骸骨の頭の上では、一休和尚が片足立ちで楽しげにはしゃいでいる――。
奇妙でありながら思わず目を奪われるこの絵画を描いたのは、幕末から明治にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい)です。
河鍋暁斎《地獄太夫と一休》明治4~22年(1871–89) イスラエル・ゴールドマン・コレクション Photo: Ken Adlard
静岡県立美術館で開催される「ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界」では、ロンドン在住のコレクター、イスラエル・ゴールドマン氏の所蔵品から厳選した約110件を紹介します。その半数以上が日本初出品です。
冒頭で紹介した《地獄太夫と一休》をよく見ると、遊女の打掛には燃えさかる地獄の炎や閻魔大王の姿が緻密に描かれています。おどろおどろしい地獄の衣装と、その傍らで陽気に浮かれ騒ぐ骸骨たち。本来なら恐ろしいはずの組み合わせを、まるで賑やかな宴のように描き出してしまうところに、暁斎ならではの自由な発想がうかがえます。
見どころ① 狩野派で磨いた、確かな画力
幼くして浮世絵師・歌川国芳に入門した暁斎は、のちに名門・狩野派でも修業を重ね、古典に裏打ちされた確かな描写力を身につけました。
河鍋暁斎《烏瓜に双鴉図》明治4~22年(1871–89) イスラエル・ゴールドマン・コレクション Photo: Ken Adlard
その力量がよく表れているのが《烏瓜に双鴉図》です。
縦長の画面には、枝にとまって鳴く一羽と翼を広げて下へ舞い降りるもう一羽が上下に描き分けられています。黒々とした羽と赤い烏瓜の実の対比が鮮やかで、視線が自然と上から下へ引き込まれる構成です。
見どころ② 蛙が学び、猫又が踊る
動物たちが人間のようにふるまうユーモラスな絵も、暁斎は数多く描いています。
《蛙の学校》では、大きな蓮(はす)の葉を黒板に見立て、先生役の蛙が長い棒で葉を指し示し、その右側では2匹の蛙(生徒役)が蓮根に腰かけています。
蛙本来の姿を写したリアルな描写と、人間味あふれる仕草との落差に、暁斎の鋭い観察眼とユーモアが光っています。
河鍋暁斎《蛙の学校》明治零年代中頃(1870年代前半) イスラエル・ゴールドマン・コレクション Photo: Ken Adlard
《猫又図》の主役は、年老いた猫が化けたとされる妖怪の猫又です。
頭に手ぬぐいをかぶり、石灯籠の笠に後ろ脚一本で立ったまま、両方の前脚を高く振り上げて踊っています。
牙をのぞかせた顔には妖怪らしい不気味さもありますが、その滑稽な仕草には、どこか憎めない愛らしさがあります。
河鍋暁斎《猫又図》明治4~22年(1871–89) イスラエル・ゴールドマン・コレクション Photo: Ken Adlard
見どころ③ 朱で描かれた、象に乗る鍾馗
河鍋暁斎《鍾馗騎象図》明治零年代後半(1870年代半ば) イスラエル・ゴールドマン・コレクション Photo: Ken Adlard
《鍾馗騎象図》は、魔除けの神として知られる鍾馗が象の背に乗る姿を、朱で描き出した作品です。
空を見上げて悠然と構える鍾馗の足元では、2匹の小鬼が象のお供をして歩いています。鍾馗は本来、鬼を退治する神様です。その鍾馗が退治するはずの鬼を引き連れているところに、暁斎らしい遊び心を感じることができます。ぎょろりと目をむいたコミカルな象と、落ち着き払った鍾馗の対照的な表情も見どころです。
静岡展だけの見どころ
静岡会場では、新たにイスラエル・ゴールドマン・コレクションに加わった《桃太郎鬼征伐之図》がお披露目されます。華やかな彩色と細かな描き込みに、暁斎の技量が存分に発揮された作品です。
さらに暁斎の師にあたる歌川国芳、前村洞和、狩野洞白陳信の作品も特別に展示され、暁斎の原点を同時にたどることができます。
沼津で暮らす母を訪ねたり、地元の人々と交友を結んだりと、暁斎は静岡とも縁の深い絵師です。格調ある花鳥画から、動物や妖怪が生き生きと動き回る戯画まで、今年の秋は静岡の会場で、暁斎の多彩な表現を堪能してみてはいかがでしょうか。
展覧会情報
ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界
開催場所:静岡県立美術館 本館展示室
開催期間:2026年10月10日(土)〜12月6日(日)
所在地:静岡県静岡市駿河区谷田53-2
開館時間:10:00〜17:30(展示室への入室は17:00まで)
休館日:毎週月曜日(月曜が祝日の場合は翌日)
開館:10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝) 休館:10月13日(火)、11月24日(火)
観覧料(当日券):一般1,500円、70歳以上800円、大学生以下無料
※本展の観覧券で収蔵品展・ロダン館もご覧いただけます
美術館サイト:ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界
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大学院で哲学(環境倫理学)を学んだあと、高校の社会科教員に。子どもの誕生をきっかけに、ライターへ転身。西洋哲学史の書籍『世界と人間を深く理解するための哲学の教科書』(ナツメ社)の執筆も担当した。立場や考え方の違いを越えて、芸術には人と人をつなぐ力があると信じている。週末は海外サッカー(プレミアリーグ)に夢中。
大学院で哲学(環境倫理学)を学んだあと、高校の社会科教員に。子どもの誕生をきっかけに、ライターへ転身。西洋哲学史の書籍『世界と人間を深く理解するための哲学の教科書』(ナツメ社)の執筆も担当した。立場や考え方の違いを越えて、芸術には人と人をつなぐ力があると信じている。週末は海外サッカー(プレミアリーグ)に夢中。
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