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2026.10.9

【東京・レポート】「歌川広重 江戸のベストアングル」東博初の本格的な広重展!見どころ紹介

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東京国立博物館 本館A室(東京・上野公園)では現在、特別展 内山晋コレクション受贈記念「歌川広重 江戸のベストアングル」が開催されています。

「歌川広重 江戸のベストアングル」会場入口

内山晋(1893〜1980年)旧蔵の浮世絵1,025点の受贈を記念し、広重の代表作である「東海道五拾三次」(1期)、「木曽海道六拾九次」 (2期)、「名所江戸百景」(3期)の三大シリーズを中心に、風景画、花鳥画の名作を3期に分けて紹介。意外にも東京国立博物館では初めてとなる、本格的な歌川広重展として注目を集めています。

浮世絵を愛した蒐集家・内山晋(うちやま・すすむ)とはどんな人物?

左:「江戸名所之内 両国花火」 歌川広重 江戸時代・天保3〜6 年(1832〜35)頃 右:「江戸名所之内 永代橋佃沖漁舟」 歌川広重 江戸時代・天保3〜6年(1832〜35)頃

まず旧蔵者の内山晋とはどのような人物なのでしょうか。静岡県に生まれた内山氏は、商事会社を営むかたわら、歌川広重を中心とした浮世絵コレクションを築いた蒐集家です。出版物や展覧会を通して浮世絵の魅力を発信するとともに、日本浮世絵協会(現在の国際浮世絵学会)の設立に携わるなど、その研究と普及に貢献しました。

幼い頃から内山氏と暮らしていた親族の富樫明さんは、「秋晴れの日になると、内山は直射日光の当たらない部屋にて浮世絵を開き、一枚一枚丁寧に風を通していた」と振り返ります。

この内山晋コレクションの最大の特徴は、卓越した保存状態の良さにあります。どこかで一度は見たことがある広重の名作も、約200年前に生まれたとは思えないほど色彩が鮮やか。まるで江戸の風景が目の前によみがえるような没入感を味わえます。

1期は出世作「東海道五拾三次」全点がずらり

「歌川広重 江戸のベストアングル」展示風景

それでは「名所江戸百景 するかてふ」(3期)に着想を得た、富士山を望む立体的なゲートをくぐって、展示室の中へと進んでみましょう。まず目に留まるのが、「木」という素材を意識した展示デザインです。

浮世絵の展示では、白い壁面に額装した作品を並べる方法が一般的ですが、本展では浮世絵が木版によって生み出されることに着目し、木目を生かした板材に落ち着いた色調を施したバックパネルを用いています。そのおかげなのか、作品の美しい色彩がいっそう引き立っているように思えました。

「歌川広重 江戸のベストアングル」より、「東海道五拾三次」展示風景

1期では出世作の「東海道五拾三次」全55点を公開。あわせて初期の江戸名所シリーズ「東都名所」や、「東海道五拾三次」の成功を受けて作られた「東海道物」と呼ばれる作品群などが並んでいます。

なお「東海道五拾三次」は、新興版元である竹内孫八(保永堂)と大手版元の鶴屋喜右衛門(仙鶴堂)の共同で出版されました。しかし、実質的に制作を主導したのは保永堂であり、55図のうち43図を同版元が出版しています。そのため、このシリーズは通称「保永堂版東海道」として親しまれています。

「変わり図」って何?浮世絵の異版の世界

「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」 歌川広重 江戸時代・天保4〜6年(1833〜35)頃

江戸の日本橋から京都の三条大橋まで、東海道の宿場を題材にした風景画の連作である「東海道五拾三次」。天保4(1833)年頃、数え37歳だった広重が手がけたこのシリーズは、西洋画に由来する遠近法を取り入れつつ、風雨や雪といった天候、時刻の移ろいを表現し、その土地の情景を巧みに描きだしました。さらに、街道を行き交う人々の豊かな表情や旅の営みも緻密に表されており、当時の暮らしぶりが鮮やかに浮かび上がってきます。

冒頭に展示されるのは「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」です。舞台は、旅のはじまりを告げる早朝の日本橋。木戸の向こうには魚や野菜を売りに出かける棒手振(ぼてふり)といわれる商人と、国元へ出立する大名行列の先頭が見えます。シリーズのなかでも特に有名な一枚で、朝の澄み切った空気までが伝わってくるようです。

「東海道五拾三次之内 日本橋 行烈振出」 歌川広重 江戸時代・天保4〜6年(1833〜35)頃

そのすぐ左に並ぶ作品に目を向けてみましょう。こちらも同じ日本橋を描いた「東海道五拾三次之内 日本橋 行列振出」。画面を枠どる木戸、日本橋と大名行列の表現は「朝之景」と同じですが、手前に大勢の人が描き替えられていることが分かります。「ちょっと人が多すぎでは…」と思ってしまうほどです。

これは「変わり図」(異版)と呼ばれるもの。浮世絵は再摺の過程で、版木の彫り直しや色彩の変更が加えられることがあり、図様が変わった作品が生まれました。内山晋コレクションには、こうした貴重な「変わり図」が数多く含まれています。

ともに「東海道五拾三次之内 大津 走井茶店」 歌川広重 江戸時代・天保4〜6年(1833〜35)頃

「川崎 六郷渡舟」、「戸塚 元町別道」、「大津 走井茶店」などでも「変わり図」が展示されています。間違い探しとまではいえませんが、2つの作品を比べて違いを見られるのも、本展ならではの醍醐味といえるでしょう。

「ベストアングル」を探して、広重の名場面を巡る

「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」 歌川広重 江戸時代・天保4〜6年(1833〜35)頃

展覧会タイトルに「歌川広重 江戸のベストアングル」とあるように、広重の表現した画面構成に着目しながら、あなたにとっての「ベストアングル」な作品を探すのも楽しいかもしれません。

シリーズ指折りの名場面として高い人気を誇るのが、「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」です。突然の夕立に見舞われ、坂道を懸命に駆け抜けていく人々。背景の竹やぶも激しい風に大きく傾ぎ、荒天の凄まじさを物語ります。坂の傾斜と降りしきる雨が織りなす力強い斜線構図は、画面全体にドラマチックな躍動感をもたらしました。また人物の表情こそうかがえないものの、雨と風に抗いながら足早に去っていく姿からは、現場の緊迫した状況もひしひしと感じられます。

「東海道五拾三次之内 御油 旅人留女」 歌川広重 江戸時代・天保4〜6年(1833〜35)頃

「東海道五拾三次之内 御油 旅人留女」も、江戸時代の宿場の光景が臨場感をもって伝わる名作です。日が暮れる頃の御油(現在の愛知県豊川市)にて、旅籠の留女(とめおんな)たちが通りかかる旅人を逃すまいと、強引に引き留める様子が描かれています。御油は隣の宿場である赤坂と近かったため、客引き合戦が日常茶飯事のように繰り広げられていました。留女たちの迫力に揉まれ、苦悶の表情を浮かべる旅人には、思わず同情したくなってしまいます。

3期で全点入れ替え。展示スケジュールをチェック!

「歌川広重 江戸のベストアングル」展示風景

本展は3期制で、それぞれの会期で展示作品がすべて入れ替わります。スケジュールをご紹介します。

[1期] 「東海道五拾三次」と江戸名所:9月29日(火)〜10月25日(日)
[2期] 「木曽海道六拾九次」と諸国名所・花鳥画:10月27日(火)〜11月23日(月・祝)
[3期] 「名所江戸百景」の世界:11月25日(水)〜12月20日(日)


会期中は、本展の使用済みチケットを提示すると、本展の観覧料が100円割引となるリピーター割引を利用できます。(1回限り、他の割引との併用不可、使用済みチケット1枚につき本展の観覧料1枚分を割引。割引は当日一般観覧料のみ適用され、大学生観覧料は対象外。)

また、本展チケットでは、本館から平成館、東洋館、法隆寺宝物館などへと広がる、質量ともに膨大な東博コレクション展も観覧できます。本館2階20室の「浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)」も、浮世絵ファンならぜひ見ておきたいところです。

「広重が切り取った江戸」映像イメージ ©︎NHK/東京国立博物館

展示のラストを飾るのは、NHKの協力のもとに制作された「広重イマーシブシアター」です。160インチの高精細映像と画面から飛び出すような音響演出により、観る者を広重の描いた風景のなかへと誘います。

画面は「天気が、風景をつくる。」と「広重が切り取った江戸」の2つのテーマで構成。テンポよく展開する映像美が広重の卓越した構図や天候表現の魅力を教えてくれるとともに、展示鑑賞の余韻をいっそう深めてくれます。(上映時間5分)

会期ごとにがらりと表情を変える広重の世界。リピーター割引も活用して会場へと足を運びながら、あなたの「ベストアングル」を見つけてみてください。

※写真は主催者の許可を得て撮影したものです。

展覧会情報

◆特別展 内山晋コレクション受贈記念「歌川広重 江戸のベストアングル」
開催場所:東京国立博物館 本館A室
開催期間:2026年9月29日(火)〜12月20日(日)
※本展は以下のスケジュールで展示作品がすべて入れ替わります。
[1期]9月29日(火)〜10月25日(日)、[2期]10月27日(火)〜11月23日(月・祝)、 [3期]11月25日(水)〜12月20日(日)
所在地:東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9:30〜17:00
※毎週金曜・土曜日、10月11日(日)、11月1日(日)、2日(月)、22日(日)は20時まで
※入館は閉館の 30 分前まで
休館日:月曜日(ただし10月12日、11月2日、23日は開館)、10月13日(火)、11月24日(火)、 12月15日(火)
観覧料:一般1,500円、大学生500円(キャンパスメンバーズ学生は無料)
公式サイト:東京国立博物館


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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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