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2024.2.19
数多くの異彩が世界から集まる。「ヘラルボニー」が国際アートアワードを創設!
「異彩を、放て。」をミッションに、アートを起点に新たな価値や文化の創造を目指す福祉実験カンパニーのヘラルボニー。国内外の主に知的障害のある作家の描いた2000点以上のアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスへと展開しています。
目次
「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニー・アート・プライズ)2024」記者発表会(1月31日)より。中央でマイクを握るのは東京藝術大学長の日比野克彦。 写真提供:ヘラルボニー
そのヘラルボニーが新たに国際アートアワード「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニー・アート・プライズ)2024」を創設しました。
福祉実験カンパニー「ヘラルボニー」。その名前の由来と創業のストーリーとは?
ヘラルボニーの創業ストーリーについて話す共同代表の松田崇弥(左)と松田文登(右)。(写真提供:ヘラルボニー)
まずヘラルボニーの誕生の経緯や活動についてご紹介しましょう。今から5年前に株式会社として設立したヘラルボニーは、共同代表の松田崇弥・松田文登に4つ上の兄がいたことから生まれました。
兄の翔太には自閉症の障害があり、周りの人々から「可哀想」と表現されることがあったものの、笑ったり、悲しんだり、怒ったりするなど、一人の人間としてのさまざまな感情を持っていました。
すると松田崇弥・松田文登は皆と同じ感情を抱いているにも関わらず、なぜ「可哀想」と言われるのだろうと疑問を抱き、障害のある人々に関わる仕事がしたいと考えるようになりました。
ヘラルボニーの社名も兄・翔太が7歳の頃に自由帳に記した謎な言葉にちなんで付けられました。ネットで検索してもヒットゼロ、本人に聞いても「分からない」という社名には、一見、意味がないとされるものを「価値あるもの」として魅せたいという願いが込められています。
現在、ヘラルボニーがパートナーを結ぶのは、全国37の福祉施設、153名の作家です。そして知的障害のある作家のアート作品のライセンスの管理だけでなく、ライフスタイルブランド「HERALBONY」のほか、商品や空間の企画プロデュース、さらに岩手・盛岡のアートギャラリー「HERALBONY GALLERY」の運営など、多角的にアート事業を展開してきました。
またいわゆる支援ではなく対等なビジネスパートナーとして、作家の意思を尊重しながらプロジェクトを進行し、ロイヤリティを支払う仕組みを構築しているのも重要だと言えるかもしれません。
10年、20年かけてアワードを育てたい。「ヘラルボニー・アート・プライズ2024」が目指す未来。
記者発表会にて笑顔で話す松田崇弥・松田文登。(写真提供:ヘラルボニー)
それでは「ヘラルボニー・アート・プライズ2024」とはどのようなアワードなのでしょうか。ヘラルボニー共同代表の松田崇弥・松田文登は次のようなコメントを寄せています。
「HERALBONY Art Prize」は、あたかも社会的な運動であるかのような風格を帯びる未来を想像しています。その本質は1880年代にイギリスで芽生えた「アーツ&クラフツ運動」のように、生活と芸術の調和を模索する志向に根ざしています。
この賞は多岐にわたる企業や公的機関のサポートを受けながらも、従来の健常者中心の資本主義経済に挑戦し、新しい「ふつう」の提案を目指しています。
ヘラルボニーが目指す世界「本当の意味で異彩が放たれた未来」。(写真提供:ヘラルボニー)
「才能は披露してはじめて、才能になる。」と考えるヘラルボニーは、世界中の障害のある表現者を対象に、作家のキャリアを新たな高みへと押し上げ、従来の「障害とアート」のイメージを塗り替えるべく「HERALBONY Art Prize」を創設しました。しかも1年、2年の取り組みではなく、毎年続け、10年、20年かけてアワードを育てたいとしています。
応募対象者は国内外で活躍を志望する障害(※)のある作家です。(※障害者手帳をお持ちの方)国籍・年齢・性別及びプロフェッショナル・アマチュアを問わず、作家本人、親権者(作家が未成年の場合)、親族・保護者、後見人、作家が所属する福祉施設その他団体によって申し込みすることができます。
「異彩(イサイ)の日」(1月31日)より応募期間がスタート!8月には展覧会や授賞式を開催。
「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニー・アート・プライズ)2024」記者発表会の様子。(写真提供:ヘラルボニー)
「HERALBONY Art Prize」の応募期間はヘラルボニーが「異彩(イサイ)の日」と定める2024年1月31日(水)より3月15日(金)まで。特設サイトからエントリーが可能で、4月中旬に一次審査(画像審査)で通過作品を選出、その後、二次審査(現物審査)でグランプリと企業賞を選出し、8月上旬には受賞者及びファイナリストの作品を公開する展覧会や授賞式などが開かれます。
■審査基準
・独自の視点を持ち、新たな芸術創造性があるか
・社会に新たな視点や変化を投げかけるような独創性があるか
・多様性を体現する、自由な発想があるか
■賞
・グランプリ (1名):賞金 300万円
・企業賞(協賛企業より複数賞、各1名)
※企業賞は、本プライズの協賛企業から複数社が選出する賞です。
三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン。写真はヘラルボニー主催にて同会場で行われた『ART IN YOU アートはあなたの中にある』の展示風景(会期:2023年5月20日~6月17日)。(写真提供:ヘラルボニー)
■展覧会概要
会期:2024年8月10日(土)~ 9月22日(日)
会場:三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン(東京都千代田区丸の内1-3-2)
■審査員
黒澤浩美:株式会社ヘラルボニー アドバイザー / 金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター
日比野克彦:アーティスト / 東京藝術大学長
盛岡笑奈:LVMH メティエ ダール ジャパン ディレクター
クリスチャン・バースト:ギャラリー クリスチャン・バースト創設者
「障害の有無ではなく、そのままの存在を肯定する社会を目指したい」
1月31日の「異彩(イサイ)の日」に東京の渋谷サクラステージにて行われた記者発表会において審査員の日比野克彦は「障害に線引きができるのだろうか?」と問いかけ、「一人一人がその人らしさを発揮できるような機会を作りたい」と語りました。
株式会社ヘラルボニー アドバイザーで金沢21世紀美術館チーフ・キュレーターの黒澤浩美。
また同じく審査員の黒澤浩美は「芸術表現は作品そのものだけでなく、生み出した人の人生が現れている」として、アワードを「障害とそうでないアートの垣根を超えて、どういった表現者がどのような表現をしているのかを見るプラットフォームにしていきたい」とコメント。
「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニー・アート・プライズ)2024」記者発表会の様子。(撮影:はろるど)
最後にヘラルボニー共同代表のひとりである松田崇弥は、「障害の有無ではなく、そのままの存在を肯定する社会を目指したい」と言い、「そこへの道筋の一つの段階として、また障害とは欠落ではないことを示すために、アワードを2040年、50年頃の社会を見据えて行っていきたい」と意気込みを語りました。
「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニー・アート・プライズ)2024」記者発表会のフォトセッション。左から松田文登、松田崇弥、黒澤浩美、盛岡笑奈、日比野克彦。(写真提供:ヘラルボニー)
「障害」へのイメージを変え、80億人の異彩がありのままに生きる社会の実現を目指すヘラルボニーが新たに創設した「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニー・アート・プライズ)2024」。かつてないアワードのチャレンジングな取り組みに期待しつつ、異彩に満ちた作品との出会いを心待ちにしましょう。
展覧会情報
『HERALBONY Art Prize (ヘラルボニー・アート・プライズ)2024』
・応募期間:2024年1月31日(水)10:00~3月15日(金)23:59まで(JST)
・賞:グランプリ (1名)賞金300万円、企業賞(協賛企業より複数賞、各1名)
・展覧会概要
受賞者及びファイナリストの作品は8月上旬より開催される展覧会で展示する予定。
会期:2024年8月10日(土)~ 9月22日(日)
会場:三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン(東京都千代田区丸の内1-3-2)
主催:株式会社ヘラルボニー
特設ウェブサイト: 『HERALBONY Art Prize (ヘラルボニー・アート・プライズ)2024』

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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