EVENT
2022.10.19
青森の景色がピンク色に染まる?アート列車に乗ろう!『青森をアートでたどるプロジェクト』
青森県西部、弘前市と黒石市を結ぶ弘南鉄道弘南線。今から約95年前に一部区間が開業した歴史ある鉄道は、地域の人々の重要な足として利用されてきただけでなく、岩木山を望む美しい田園風景が楽しめることでも知られ、鉄道ファンからも根強い人気を集めてきました。
目次
弘南鉄道弘南線の車内より沿線風景を望む。左正面は青森県の最高峰の岩木山(標高1625m)です。
そして現在、弘南鉄道の沿線をアートの視点で見直し、住民や観光客にも新たな体験を提供しようとする『青森をアートでたどるプロジェクト 原 高史 〈AOMORI MAPPINK MEMORY 「記憶の未来」〉』 が開催中です。見どころをご紹介します。
まずは弘南鉄道弘南線弘前駅へ!ホームに入線するピンク色に染まったアート列車
まずは弘南鉄道弘南線の起点となる弘前駅へと向かいましょう。JR奥羽本線との乗り換え駅でもある同駅は弘前市の玄関口。弘南鉄道のホームは東側の城東口に位置しています。
改札口を抜ければ鮮やかなピンク色にラッピングされた2両編成の列車が登場。これこそが現代アーティストの原高史(はら たかふみ)が手がけたアート列車なのです。
もちろん車両の中も窓から床、手すりなど、あらゆる箇所がピンク色に染まっています。そもそも弘南鉄道では、アート列車の車両をスイスから取り寄せたというピンク色のシートに改装。さらに原のピンクへのこだわりは半端なく、扇風機の羽や吊り革の広告部分までもピンク色のカッティングシートにて覆っています。
現代アーティスト、原高史がアート列車を制作したきっかけとは?
原はどのようなコンセプトで車両をピンク色にしようと考えたのでしょうか? きっかけはプロジェクトの依頼を受けて訪ねた冬の青森でのことでした。吹雪の青森はとても寒く、冷え切った体を温めようと沿線の津軽尾上にある大和温泉に入った原は、地元の人たちが集う洗い場に緊張感を覚えたとともに、それぞれに個性的な洗い方で体を洗っているすがたに青森の人々の生きる力を感じたとしています。
そしてお湯に浸かりながら辺りを見た瞬間、大人に怒られないようにじっと湯舟に入っていた子どもの頃の記憶が蘇り、タイムスリップしたような感覚にとらわれたと言います。この時の印象から作品のテーマを「タイムトラベル」に決定し、青森の風土に育まれた情熱やりんごを想起させるピンク色をテーマカラーとしたアート列車を制作したのです。「ピンクが過去と未来を繋ぎ、これからどうしていくのかという生き方を考える作品にしたい」とも語っています。
アート列車で時代を行き来する。雄大な岩木山を望む車窓もおすすめ
アート列車の床や窓には西暦を示す数字をはじめ、「どの時代に行きたいですか?」といった言葉が記され、一人一人が空想や記憶の中で時代を行き来できるような空間が築かれています。
ピンク色の窓から見える景色もアート列車の楽しみ方の一つです。弘前駅を出てしばらくすると列車は田んぼやりんご畑が連なる田園地帯へ入りますが、そうした風景もすべてピンクに染まり、朝焼けとも夕焼けとも違った新鮮な視覚体験を得られるのです。
特に平賀駅から境松駅までの風景がおすすめです。ここでは弘前駅から東へ向かっていた列車が北へと大きくカーブし、ちょうど西側の車窓に岩木山を望むダイナミックな光景を目にすることができます。ピンクに染まる岩木山とは、何とも幻想的ではないでしょうか。
黒石高等学校情報デザイン科の生徒によるグラフィックアート
『弘南鉄道沿線風景2022 高校生による「記憶の未来」』展示風景
ピンクのアート列車は2両編成のうちの1両。もう1両では連携企画として、黒石高等学校情報デザイン科による『弘南鉄道沿線風景2022 高校生による「記憶の未来」』が開催されています。
『弘南鉄道沿線風景2022 高校生による「記憶の未来」』展示風景
これは同デザイン科9名の生徒と原とのワークショップの成果展で、生徒が地元の人や観光客に聞いた未来へ向けたエピソードなどを窓上広告や中吊り広告にグラフィックアートとして公開しています。企画からインタビュー、制作に至った期間は約5ヶ月。コロナ禍の中、生徒たちと原はリモートによる打ち合わせを重ね、展示を実現させました。
アート列車の運行日と運行パターン。注意点とは?
黒石駅のMAPPINK STAION。中でインタビュー映像が公開されています。
この他、弘前れんが倉庫美術館や駅舎の一部がピンクに彩られ、沿線の弘前市、黒石市、平川市、田舎館村に暮らす27名の人々にインタビューした映像も美術館や黒石駅、JR弘前駅 津軽ラウンジ内で上映されています。
弘南鉄道弘南線黒石駅駅舎。弘前駅から25分ほどで到着します。
A、B、Cの運行パターンに分かれたアート列車は1日約9往復。元東急7000系の古い車両を用いているため、点検などで運休や変更になる場合もあるので注意が必要です。日々の運行予定は弘南鉄道の公式Twitter(@konantetsudo)にてチェックしましょう(ダイヤは同鉄道WEBサイトにて公開)。
アート列車の運行は11月13日(日)まで。乗り降り自由な一日乗車券MAPPINK TICKETと、美術館への観覧料が割引になるなどの特典の付くMAPPINK BOOKがセットになった「わのパス MAPPINK TICKET」も販売中です。※価格は1100円(税込)。販売先は弘南鉄道弘南線の弘前、弘前東高前、平賀、津軽尾上、黒石の各駅窓口と、弘前れんが倉庫美術館のCAFE & RESTAURANT 「BRICK」。
『青森をアートでたどるプロジェクト 原 高史 〈AOMORI MAPPINK MEMORY 「記憶の未来」〉』にて、ピンクに染まった岩木山などの豊かな自然の景色を眺めながら、青森の魅力を再発見してみてください。
イベント情報
『青森をアートでたどるプロジェクト 原 高史 〈AOMORI MAPPINK MEMORY 「記憶の未来」〉』
開催場所:弘前れんが倉庫美術館「市民ギャラリー」、弘南鉄道弘南線 車両及び主要駅(弘前駅・平賀駅・ 黒石駅)、JR弘前駅「津軽ラウンジ」
開催期間:2022年9月14日(水)~11月13日(日)
開催地:青森県弘前市、黒石市、平川市、田舎館村
アクセス:弘南鉄道弘南線―JR奥羽本線「弘前駅」より乗り換え。弘前れんが倉庫美術館―JR奥羽本線「弘前駅」より弘南バス・土手町循環100円バスにて「蓬莱橋」下車、徒歩約5分
開館時間、休日、料金:各開催地の営業日時・運行状況・料金に準ずる
周遊チケット:「わのパス MAPPINK TICKET」1100円
※弘南鉄道弘南線1日乗車券 + プロジェクトの特別冊子付き
※「わのパス」持参で弘前れんが倉庫美術館が100円引など特典あり
※アート列車の運行は1日9往復を予定。車両点検で運休となる日あり
※電車の最新の運行状況は弘南鉄道 Twitter(@konantetsudo)にて要確認
http://nanjo.com
https://konantetsudo.jp
https://www.hirosaki-moca.jp
画像ギャラリー
あわせて読みたい
-
EVENT
2023.09.01
世界に3つしかない世界最高精度レプリカが紐解く、ツタンカーメン青春の謎
つくだゆき
-
EVENT
2023.08.28
天才?問題児?ダリの晩年を描いた映画『ウェルカム トゥ ダリ』9月1日(金)全国ロードショー!
明菜
-
EVENT
2023.08.23
【パリ】「モードの帝王」のリアルな息遣いさえも感じられる『イヴ・サンローラン美術館』
新 麻記子
-
EVENT
2023.08.15
【フランス・北部】もう1つのルーヴル美術館へ、『ルーヴル・ランス』へ行ってみよう!
新 麻記子
-
EVENT
2023.08.08
【パリ】安藤忠雄が手掛けた、歴史と現代が対話する壮大なアートの殿堂『ブルス・ドゥ・コメルス』
新 麻記子
-
EVENT
2023.08.03
27年ぶりとなる待望の大規模個展「デイヴィッド・ホックニー展」
新 麻記子
このライターの書いた記事
-
NEWS
2023.09.29
富山、青森から最後の巡回地、東京へ。『棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ』の見どころとは?
はろるど
-
NEWS
2023.09.28
【国立西洋美術館】50年ぶりの大キュビスム展。『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命』が見逃せない!
はろるど
-
NEWS
2023.09.26
【東京・立川】「まいにち」を豊かにする。陶芸家・アーティストの鹿児島睦の個展がPLAY! MUSEUMにて開催!
はろるど
-
NEWS
2023.09.15
【京都市京セラ美術館】気鋭の現代美術家、井田幸昌の個展が開催!過去最大規模の約350点公開。
はろるど
-
NEWS
2023.09.01
【9月のおすすめ展覧会5選】『超絶技巧、未来へ!』から『めぐりあう大津絵』、『永遠の都ローマ』まで。
はろるど
-
EVENT
2023.08.02
「さいたま国際芸術祭2023」が開催!現代アートチームの目[mé] がディレクション。
はろるど

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
はろるどさんの記事一覧はこちら