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2023.7.12

ソール・ライター生誕100年記念  渋谷ヒカリエで開催中の「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」の見どころとは?

「カラー写真のパイオニア」と称されるニューヨークの伝説の写真家であるソール・ライター。

2017年と2020年の2回にわたってBunkamura ザ・ミュージアムで行われ、大きな反響を呼び起こしたことでも記憶に新しいソール・ライター展。

この夏、過去に開催されたBunkamuraの休館に伴い、展覧会「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」が、渋谷ヒカリエ9F・ヒカリエホールにて開催されています。

ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライターとは?

《ライトボックスを見るソール・ライター》 2013年 ©Margit Erb

1946年、画家を志してニューヨークへと向ったソール・ライターは、この地で意欲的な若い芸術家たちと交流し、写真の表現メディアとしての可能性に目覚め、絵筆とともにカメラで自分の世界を追求していくようになります。

1958年、ヘンリー・ウルフがアートディレクターに就任した『ハーパーズ・バザー』誌でカメラマンとして仕事をはじめ、80年代にかけて数多くの雑誌で唯一無二のセンス溢れるファッション写真を撮影しました。

50代でキャリアの表舞台から姿を消し、富にも名声にも一切の関心を示さず、淡々と自らの美意識に忠実に生きていたソール・ライター。

2006年、世界中の写真ファンを魅了し続けるドイツのシュタイデル社から刊行された初の写真集『Early Color』によって、80代になってから再び脚光を浴びることになります。

2013年、享年89歳でソール・ライターがこの世を去り、翌年に創設されたソール・ライター財団によって、未整理だった作品をアーカイブし、データベース化するプロジェクトが着手されました。

未整理の作品は数万点にものぼり、業績の全貌が明らかになるには、数年の歳月が必要とも言われており、没後にも関わらずソール・ライターは常に新たな発見が続く“発展途上” の作家でもあります。

ソール・ライターによる400点以上の作品が楽しめる本展

ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

本展では、新たに発掘された作品による大規模なカラースライド・プロジェクション、未公開のモノクロ写真、絵画など最新作品群を含む400点以上の作品が展示されています。

これまで紹介していなかった知られざるソール・ライターの素顔とともに、「カラー写真のパイオニア」 と称され世界中を驚かせ続ける色彩感覚の源泉に迫っています。

ここで、本展覧会の見どころをご紹介します!

見どころ①1950〜1960年代頃、黄金期のニューヨークを写し撮った 未公開スナップ写真を多数展示

ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

本展がフォーカスするのは、当初画家を志していたソール・ライターが写真に取り組み始めた1950年〜1960年代です。

この頃に撮影されたモノクロによるスナップ写真は、絶妙な構図と黒と白で織りなされる美しいプリント表現(大部分のプリントはソール・ライター自身によるもの)によって、詩情あふれる日常の物語を想起させます。

画家であったソール・ライターだからこそ、写真というメディアでしかなしえることのできないスナップ写真の特性を生かし、構図や被写体などカラー写真との共通点も認められ、すでに独自の世界観が形成されていることが確認できます。

見どころ②ソール・ライターによる後に巨匠と称されるアーティストたちのポートレート

ソール・ライター 《アンディ・ウォーホル》 1952年頃 ©Saul Leiter Foundation

当時、芸術の新たな中心地として若きアーティストたちが集まったニューヨーク。

そこで出会った友人のアーティスト、リチャード・プセット・ダートから本格的に写真術を学んだソール・ライターは、身近なアーティストたちのポートレートを数多く残しています。

本展では、アンディ・ウォーホルをはじめ、作曲家のジョン・ケージ、ジャズピアニストのセロニアス・モンクなど、後に巨匠と称されるアーティストのポートレートを紹介しています。

当時のアートシーンの息吹を感じさせてくれると同時に、これらの写真から若きソール・ライターが野心あふれる芸術家たちの輪の中に身を置き、自らの表現を追求していったことを物語っています。

見どころ③唯一無二のセンスあふれる 『ハーパーズ・バザー』でのファッション写真を一挙公開

ソール・ライター 『ハーパーズ・バザー』 1963年2月号のための撮影カット ©Saul Leiter Foundation

会場には、1958年〜1960年代にかけて同誌に掲載されたソール・ライターによる写真が一堂に会します。

1958年、ヘンリー・ウルフがアートディレクターに就任した『ハーパーズ・バザー』誌でカメラマンとして仕事をはじめたソール・ライター。

当時は商業的な用途で使われることが多かったカラー写真ですが、『ハーパーズ・バザー』誌のカメラマンとしてファッション写真を任され、「カラー写真は、宣伝広告やいわゆる深刻ではないもの用である」という当時の偏見を微塵も持つことなく、「仕事」においても自らの美意識を存分に発揮していきました。

見どころ④ソール・ライターの色彩の世界を体験できる カラースライド・プロジェクション

ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

会場ではソール・ライター自身が作品鑑賞のフォーマットとして使用したカラースライドや、10面の大型スクリーンを駆使した大規模プロジェクションで、2020年以降に発見された作品を含むカラー写真の数々も紹介されています。

1つめは、ソール・ライター自身が自宅でカラー写真を映写していた壁面サイズでの代表作『Early Color』の作品群の投影です。類まれなカラー写真で 再び脚光を浴びることになったソール・ライターの名作を振り返ることができます。

2つめは、ヒカリエホールの大空間を利用した10面の大型スクリーンによる大規模プロジェクションです。2020年以降に発見されたカラースライドを含む最新の作品群約250点を投影する迫力の展示で、その作品世界に没入しながら ソール・ライターの卓越した色彩感覚を再発見します。

見どころ⑤カラーの源流や終の棲家

ソール・ライター 《無題》 1960年頃 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライターは「画家の眼を持つ写真家」として、写真家として成功したのちも、生涯絵筆を折ることはなく、世間から隠遁後も日記を綴るように絵を描き続けました。

縦横無尽に色と一体化し、遊ぶように描かれた絵画作品は、ソール・ライターが唯一無二のカラー写真の世界を創り上げることが出来た秘密を解き明かす鍵となります。

ソール・ライターが60年間住み続けたニューヨークのイースト・ヴィレッジのアパートは、現在ではソール・ライター財団の事務所として使用されています。会場には、膨大な作品と資料が現在も息づくアトリエの一部が再現されています。

最後に…

ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

前回よりもスケールアップして開催される展覧会「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」。

今となっては当たり前となったカラー写真ですが、ソール・ライターの手にかかれば、身近な生活の切り取り方でさえ、芸術的な表現に驚かされるばかり。

今回の知られざるソール・ライターの素顔とともに、世界中を驚かせ続ける色彩感覚の源泉から、カラー写真の魅力に改めて気付かされるのはもちろん、色に溢れた世界の美しさを再確認できることでしょう。

ぜひ、この夏は「カラー写真のパイオニア」と称されるニューヨークの伝説の写真家である、ソール・ライターの作品世界を楽しんでみてください。

展覧会情報

ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
会期:2023年7月8日(土)〜8月23日(水)
会場:ヒカリエホール ホールA(渋谷ヒカリエ9F)
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1
時間:11:00〜20:00(最終入場は 19:30 まで)
休館日:なし
ホームページ:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_saulleiter/

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新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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