STUDY
2023.6.13
美術鑑賞がもっと楽しくなる「単眼鏡」とは?おすすめポイントや選び方を解説
美術館で、小さな筒のようなものを片目に当てて、作品を見ている人を見かけたことはありませんか?
これは「単眼鏡(たんがんきょう)」といって、美術鑑賞をもっと楽しくしてくれるアイテムです。望遠鏡をコンパクトにしたようなイメージで、近くのものを拡大して見たり、遠くのものをよく見たりするのに使います。
目次
単眼鏡にはコンサートやスポーツ観戦などさまざまな用途があるのですが、各メーカーから美術鑑賞に特化した単眼鏡が発売されています。
単眼鏡を使うと、作品の新たな魅力に気づくことも。ぜひこれからの美術鑑賞のお供にしていただきたいので、美術ライターの明菜が単眼鏡の魅力をご紹介します!
単眼鏡があると美術鑑賞がこんなに楽しい!
さっそく、単眼鏡を使った美術鑑賞の楽しさをご紹介します。主には以下の3点でしょうか。
①細かな装飾や筆致まで鑑賞できる
②遠くの作品でも間近で鑑賞できる
③作品と自分だけの世界に浸れる
①細かな装飾や筆致まで鑑賞できる
細かな絵付や彫刻、螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)など、細密な装飾が施された作品を見るとき、「肉眼では物足りないな……」と感じたことはありませんか? 顕微鏡で拡大して見たくなるような作品に出会うこと、ありますよね。
そんな私たちの願いを叶えてくれるのが、単眼鏡です。4倍や6倍といった倍率でも、十分に大きく拡大してくれるので、細かな装飾をよく見て楽しむことができます。肉眼ではわからなかった圧倒的な印象に、ため息が出ることもしばしば。
絵画の筆致など、作家が作品に残した痕跡を見たいときにもおすすめです。「近くのものをぐっと近くで見せてくれる」、これが単眼鏡の底力です。
②遠くの作品でも間近で鑑賞できる
近くだけでなく、離れた位置にある作品を見るときにも使えるのが単眼鏡です。観劇の際にオペラグラスを使うのと同じように、単眼鏡を使って作品を鑑賞することができます。
たとえば、作品がケースの奥にあって距離を縮められないときや、美術館が混雑していて作品に近づけないときなど。離れた場所から鑑賞するしかないときにも、単眼鏡を活用してみましょう。
ただし、作品の目の前に立ったときの圧倒される感覚も、美術鑑賞の醍醐味だと思います。作品に近づけるときは、ぜひ近づいて鑑賞してほしいです……! 肉眼で鑑賞する楽しみと、単眼鏡を活かした楽しみを両取りしたいですね。
③作品と自分だけの世界に浸れる
私がいちばん重要だと思うのが、単眼鏡が世界を切り取ってくれるので、「この世界に作品と私だけ……」というロマンティックな鑑賞ができることです。
スマホのレンズに単眼鏡を当てて撮影した写真。実際は像がもっとくっきり見えます。
単眼鏡は、作品の全体や一部をピンポイントで切り取ってくれます。美術館の壁やほかの鑑賞者などは、ほとんど視界に入りません。作品と自分だけの世界で、集中して鑑賞することができるのです。
この感覚は、単眼鏡を一度でも使ったことがある方には、ご理解いただけるのではないでしょうか。想像が湧かない方には、ぜひ単眼鏡を試して体験していただきたいな、と思います。
ただし、あまり鑑賞に夢中になりすぎると、周囲の迷惑になってしまう場合があります。通行の妨げとなったり、作品が見やすい位置を長時間独占していたり……。周囲への配慮を忘れず、自分の楽しみ方を見つけましょう。
単眼鏡がおすすめな理由
お伝えしてきたように、単眼鏡は美術鑑賞の世界を広げてくれる嬉しいアイテムです。
「拡大する」という用途なら、オペラグラスやバードウォッチング用の単眼鏡や双眼鏡も選択肢に入りますが、「美術鑑賞用の単眼鏡」がおすすめです。以下の理由で、実用性がバツグンだからです。
①小さくて軽い
②ちょうど良い倍率
①小さくて軽い
美術鑑賞用の単眼鏡は小さくて軽いです。付属のストラップで首から下げても、軽いのでそこまで肩が凝りません。
美術館って意外と歩き回りますし、1周だけでなく2周、3周と見て回る方は結構な運動になっていると思います。そのうえ単眼鏡が重たかったら、鑑賞が充実するどころかストレスになってしまうかもしれません。小さくて軽い、美術鑑賞用のモデルがおすすめです。
②ちょうど良い倍率
美術鑑賞用の単眼鏡の倍率は4倍か6倍が一般的です。観劇やスポーツ観戦用の双眼鏡では8倍や10倍と倍率の高いモデルもあるので、4倍や6倍だと物足りないのでは? と心配な方もいるかもしれません。
ですが、美術鑑賞なら4倍か6倍がぴったりなんです! 作品から何十メートルも離れているわけではないからです。「近くのものをより近くに見る」なら、4倍や6倍で十分……というより、最適な倍率だと思います。
倍率が高すぎる双眼鏡や単眼鏡で美術品を見ようとしたら、逆に見づらくて酔ってしまった……という方もいるそうです。倍率が高ければ良いわけではないのだな、と私も勉強になりました。
単眼鏡の種類と選び方
というわけで、美術鑑賞用の単眼鏡の倍率は4倍か6倍のものが多いです。ヨドバシカメラなどの家電量販店に行けば、双眼鏡や単眼鏡のコーナーで試せることが多いので、ぜひ実際に使って比べながら選んでください。
6倍はより大きく拡大できるので、離れた場所にある作品の鑑賞におすすめです。大きな仏像や彫刻の顔、天井画など、物理的に近づけない作品でもよく見ることができます。
4倍は、近くの作品により近づきたいときにおすすめです。装飾が細かい工芸品や刀剣、ジュエリーなど、「鼻がぶつかるくらい近づいて見たい!」と思ったときに向いていると思います。
使い方はどちらも簡単で、単眼鏡を片目に当てたらダイヤルを左右のどちらかに回し、ピントを合わせるだけです。
ちなみに私は、ケンコートキナーが販売する博物館・美術館での使用に特化した「ギャラリーアイ」の4倍を使っています(6倍も販売されています)。視界が広くて明るく、目が疲れにくいのでおすすめです。
まとめ
遠くのものを拡大したり、近くのものをもっと拡大したり、単眼鏡があると美術鑑賞がより楽しくなります。「肉眼での鑑賞で十分」と思っている方にこそ、試していただきたいです。
何より、「作品と自分だけの世界」を一度体感すると、美術鑑賞の新たな魅力に気づけると思います。鑑賞をより充実した経験にするためにも、ぜひ単眼鏡を試してくださいませ。
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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