STUDY
2024.7.19
恋多き画家・竹久夢二の女性関係とは?探し続けた永遠の女性像
竹久夢二(1884年–1934年)は、正規の美術教育を受けることなく独学で自身の画風を確立し、日本の詩人、画家、そしてグラフィックデザイナーとして知られています。
彼が生み出した作品は大正ロマンを象徴し、「夢二スタイル」として認識され、今でも多くの人々に愛されていますが、その中でも〈夢二式美人画〉と称される叙情的な美人画は人気を博しました。
竹久夢二 - Wikipedia, Public domain, via Wikipedia.
そんな〈夢二式美人画〉に影響を与えた要素として、竹久夢二の私生活や女性関係については、しばしば言及されます。
この記事では、そんな美人画のモデルをつとめた女性たちを紹介するとともに、永遠の女性像を探し続けた夢二の恋多き人生に迫ります。
〈夢二式美人画〉のモデル・岸他万喜(きし・たまき)
竹久夢二 - Wikipedia, Public domain, via Wikipedia.
岸他万喜(きし・たまき)は、夢二の生涯のうちで唯一戸籍に入り、“結婚”という形式で一緒に生活した女性です。
明治39(1906)年、兄を頼って上京し、夢二と出会い、翌年に結婚。明治42(1909)年には性格の不一致から協議離婚するも、その後数年間にわたって同居と別居をくり返します。大正3(1914)年、夢二デザインの小間物をあつかう「港屋絵草紙店」の女店主となりました。
「大いなる眼の殊に美しき人」といわれた他万喜をモデルにして生まれた〈夢二式美人画〉は大評判となり、また他万喜は日本画の知識もあり、夢二の未完成の才能を開花させるのに一役買いました。
大きな魅力的な瞳と激しい気性を持ち、美しい他万喜が夢二の最初の恋人でなかったら、彼の生涯はまた別のものだったかもしれません。
京都へ…九州へ…元祖追っかけ!笠井 彦乃(かさい・ひこの)
竹久夢二 - Wikipedia, Public domain, via Wikipedia.
笠井彦乃(かさい・ひこの)は、夢二にとって「最愛のひと」であり「永遠のひと」です。
東京・日本橋の紙問屋の娘として裕福に育ち、女子美術学校の学生だった彦乃は、夢二の才能に惹かれ夢二の大ファンであり、絵を習いたいと「港屋絵草子店」を訪問し、そのことがきっかけとなり交際が始まりました。
大正6(1917)年から父親の反対を押し切り、他万喜と別れた夢二と京都で同棲をはじめ、大正7年(1918年)に九州旅行中の夢二を追う途中に別府温泉で結核を発病させてしまい、父の手によって東京に連れ戻され、東京・御茶ノ水の順天堂医院に入院した彦乃は、わずか25歳でその生涯を閉じました。
夢二は、前妻と離縁した自分を京都まで追いかけ、果ては九州にまで共にいることを願い、抑えきれない情熱のまま行動する彦乃のことを深く愛していたようです。死後しばらくショックから立ち直れず、『彦乃日記』をのこすほどでした。
画家の才能を引き出す人気モデル・佐々木カ子ヨ(ささき・かねよ)
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佐々木カ子ヨ(ささき・かねよ)は、通称:お葉として画家の才能を引き出す人気モデルです。
大正8(1919)年、彦乃と引き離されて、絵筆をとれないほどに憔悴しきっていた、夢二を気遣う友人たちの紹介によって出会いました。
竹久夢二のモデルになる前には、女性をモチーフとした画壇で注目された洋画家の藤島武二や日本画の伊藤晴雨のモデルをつとめるなど、画家の才能を引き出し、個性的な作品を導く、モデルとして類い稀な魅力を兼ね備えた女性と言えます。
菊富士ホテルに逗留していた夢二のモデルとして通ううちに同棲し、大正13年(1924年)には夢二が設計した世田谷「少年山荘」に一緒に移り住み、夢二の子供たちも同居しました。その後一児をもうけるものの夭折し、翌14年にお葉は自殺を図り、半年後には別離しました。
夢二好みの立居振舞を身につけたお葉は、夢二の絵から抜け出したような美人といわれ、「黒船屋」のモデルの時にもきっと魅惑的で、儚げで、美しく、艶かしくポーズをとっていたに違いありません。
最後に
上記で紹介した3人以外にも、自身が装幀を担当した小説『流るゝままに』の著者である山田順子、銚子にて逗留中に知り合った宿の隣家の娘である長谷川カタの名前が上がるなど、恋多き男の夢二は恋愛遍歴についても数々の評伝があり、自身の日記や手紙などで語られる愛の言葉は、後世の多くの創作の題材ともなっています。
夢二は感受性が強くて生きづらいほど繊細だったからこそ、恋愛で心を痛めることも人一倍多かったでしょう…しかし、恋愛による気持ちの振幅があったからからこそ、彼にしか描くことのできない女性像を表現できたのだと思います。
上記で紹介した人物達は、「夢二をめぐる3人の女性」としてしばしば取り沙汰され、夢二の日常生活や創作活動を通じて強く影響を与えたとして、モデルとして美人画や詩文など数多くの夢二芸術を彩っています。
夢二作品を鑑賞する際には、そこに魅力的に描かれている、この記事で紹介した岸他万喜・笠井彦乃・佐々木カ子ヨ(お葉)に思いを馳せながらご覧になってみてくださいね。
現在、東京都庭園美術館では夢二の作品が展示される、「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」が開催されています。ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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