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STUDY

2021.9.14

西洋美術史を流れで学ぶ(第9回) ~盛期ルネサンス編①~

「アートに詳しくなりたいけど、なんだか敷居が高い」

そんな方でも楽しく流れを掴めるよう、難しく語られがちな西洋美術史をフランクにお伝えするこの企画。第9回からは「盛期ルネサンス」と、その美術作品を紹介します。

・関連記事:西洋美術史を流れで学ぶ(第8回) ~初期ルネサンス編~
https://irohani.art/study/4896/

前回(初期ルネサンス編)では「ルネサンスってなに?」「作品が教会から金持ち市民のものに」「線遠近法の発明」などについて紹介しました。今回はいよいよルネサンス本番の「盛期ルネサンス」に突入です。

まずはルネサンス時代のパトロン「メディチ家」とメディチ家のお抱え画家・ボッティチェッリについてみてみましょう。

当時の大パトロン・メディチ家

特に今のK-POPアーティストを見ていると「いかに事務所の規模が大事か」が分かります。タレントであればスポンサー、相撲でいうとタニマチ……偉大な人の背景にはいつだってパトロンがいるわけです。その財力をもって活動ができ、プロモーションになり、知名度が高まるといった仕組みなんですね。

ルネサンスで教会や君主だけでなく、市民が作品の発注をするようになったのは前回書きました。なかでも大パトロンが銀行業で財を築いた「メディチ家」です。メディチ家はルネサンス前の14世紀なかごろからめちゃめちゃ儲かりはじめ、政治にも参入するようになり、15世紀末に没落するまで、芸術家に肖像画を描かせました。

パトロン・メディチ家Pontormo, Public domain, via Wikimedia Commons

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ヴァザーリ、ブロンツィーノ、アッローリなど、メディチ家の恩恵を受けたアーティストはたくさんいますが、なかでもボッティチェッリはその最たる人です。

メディチ家と一緒に浮き沈んだボッティチェッリ

ボッティチェッリはもともとメディチ家主宰の「人文主義者サークル」という、今聞くとどことなくヤバい集まりに参加していました。簡単に説明すると「古代ギリシャ・ローマ時代という昔に回帰することで、人の本質に迫ろう」というコミュニティです。

そこで彼は多神教だった「古代ローマ・ギリシャ」と「一神教のキリスト教時代」との融合を絵画で試みるわけです。そしてメディチ家から依頼を受けて「ヴィーナスの誕生」をつくります。誰もが知っているであろう、超有名な作品ですね。ちなみに横300cm、縦170cmとかなりデカいです。

ヴィーナスの誕生Sandro Botticelli, Public domain, via Wikimedia Commons

もう画面全体から「愛って最高!」が伝わってきそうな装飾たっぷりの躍動感ある作品になってます。

中央はヴィーナス、向かって左の『星のカービィ』くらい息を吹きかけている夫婦は西風の神・ゼフィロスとフローラで貝殻を岸に運んでいます。右の上着をかけようとしているのは季節の神・ホーラです。ホーラの服、可愛いですよね。2019年くらいの大学生はみんなこういう花柄ロングワンピ着てましたよね。
と、登場人物は古代ギリシャの神です。ヴィーナスの立ち姿(恥じらいのヴィーナス)も古代の彫刻から着想しています。

キリスト一神教の時代に多神教の古代ローマ・ギリシャの作品を描いた、という点で本当は「異教的だ!焼き払え!」となるNGな作品なんですね。そこをメディチ家の保護もあり、現在まで残されている珍しい作品となっています。

このように古代ローマ、ギリシャに帰ろうとするところが、ルネサンスを象徴していますね。

ボッティチェッリはこの他にも、「春」ではキリスト教の聖母マリアのような「受胎」のモチーフで古代ギリシャの「ヴィーナス」を描くという、「混ぜるな危険」を平然とやってのけます。メディチ家の依頼じゃなかったら、余裕で教会から燃やされてると思います。

ボッティチェッリの作品Sandro Botticelli, Public domain, via Wikimedia Commons

そして登場人物はみな表情豊かでルネサンス的。右の黒いのはさっきのゼフィロスで、彼が恋に落ちて勢いで襲っている「ジョーズで最初に死ぬ人」みたいな表情をしているのが、のちに奥さんとなるフローラです。ちなみに「何言ってんだ?」と思われそうですが、右から3番目の人もフローラです。もともと神話なのでこうした細かいことはもう気にしないんですね。


今回は「盛期ルネサンス」のパトロン・メディチ家と、彼らが最も仕事を依頼していた画家・ボッティチェッリについて紹介しました。次回は盛期ルネサンス第2弾。ルネサンス御三家「ダヴィンチ」「ミケランジェロ」「ラファエロ」が登場する時代を、彼らの作品を通してみていきましょう。

ジュウ・ショ

ジュウ・ショ

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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。