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EVENT

2022.11.22

240点余の作品からマン・レイの生涯をたどる展覧会『マン・レイと女性たち Man Ray and the Women』

マン・レイをご存じですか?

20世紀を代表する芸術家として、絵画をはじめ、オブジェ、映画などジャンルを超えて活躍し、1920年代〜30年代成熟期を迎えつつあった写真という新しいメディアの可能性を追求したアーティストです。

そんな彼のまなざしが捉えた「女性たち」に光を当て、240点余の作品からその創作の軌跡を追う、神奈川県立美術館 葉山 にて開催中の『マン・レイと女性たち Man Ray and the Women』をご紹介します。

マン・レイって、どんな人?

1890年、ウクライナとベラルーシ出身のユダヤ系の両親(父は仕立屋、母はお針子)のもと、アメリカのフィラデルフィアで生まれたマン・レイ(本名:エマニュエル・ラドニツキー)。ニューヨークで育ち、ニューヨーク大学から建築を学ぶための奨学金受給資格を得ますが、辞退して絵画に専念することを決意します。

20代から本名のエマニュエル・ラドニツキーを改め、「マン・レイ」と名乗るようになりました。

マン・レイという名前のうち、マンは英語で「人」ですがフランス語の「手」に発音が似ており、レイは「光線」で「視線」という意味にもなるそうです(解説パネルより)。

マン・レイは名前を改めて新しい人生に乗り出しました。親の職業や家庭環境から切り離すことにこだわっていたそうですが、その環境で得られたモチーフや技術は、後々の作品に影響が残っています。

そんな彼はダダやシュルレアリスムのどちらの正式のメンバーではなかったものの、各ムーブメントを推進した重要な人物です。ダダではマルセル・デュシャンらとともにニューヨーク・ダダの活動において重要な役割を果たしています。シュルレアリスムにおいては作品制作だけでなく、シュルレアリストたちの集合写真やポートレイトなどを撮影して記録化させることに貢献しています。

写真においては「レイヨグラフ」と呼ばれる技法を用いたり、前衛的な映画も4本制作したりしています。また、マン・レイの助手として活躍した写真家であるリー・ミラーが、偶然にも発見した「ソラゼリーション」とよばれる技法を使用しています。

マン・レイの生涯と眼差しをめぐる展示構成

本展覧会では、マン・レイが芸術家として歩み始めたニューヨーク、シュルレアリスム運動に参加し写真活動を開花したパリ、第二次世界大戦を逃れ移住したハリウッド、晩年に再び戻ったパリの4章で構成。

会場では、絵画、オブジェ、彫刻など多様な作品からマン・レイの生涯を辿って紹介されています。

解説パネルには、章毎の説明や作品のポイント、年表やモデルとなった人物についてなども記載されており、彼の歩みや交友関係など作品への理解が深められる手助けをしてくれています。

また、マン・レイの生涯と共に彼の眼差しにも注目し、時代の最先端をゆく女性たちの姿も捉えています。

恋人でモデルであったキキ、助手でもあったリー・ミラー、ファッションデザイナーとして頭角を現したココ・シャネルやシュルレアリストたちと共作を生み出したエルザ・スキャパレッリ、詩写真集『容易』のモデルであるニュッシュ・エリュアール、作家ガートルード・スタインといった個性豊かな女性たち。

マン・レイの視点でどのように映し出しているのか、レイヨグラフやソラゼリーションの手法とともに、写真の構図やモデルのポージング、失敗さえも作品となる面白さも含めお楽しみいただけると思います。

特集:マン・レイと日本のセクションにも注目!

神奈川県立近代美術館 葉山 では、独自に「マン・レイと日本」が特集されています。

マン・レイの幅広い創作活動は、彼がニューヨークからパリに移った1920年代後半から、日本でも紹介されることになり、戦前の前衛芸術家たちに影響を与えました。

特集「マン・レイと日本」では、日本のシュルレアリスム運動を牽引し、詩人、批評家、翻訳家として活躍した瀧口修造(1903–1979)と山中散生(ちるう、1905–1977)が海外のシュルレアリスと交わした書簡、写真、書籍などの資料を展覧し、日本におけるマン・レイの受容の一端を紹介しています。

展示室では、マン・レイが詩人ポール・エリュアールと共作した詩画集から、瀧口が阿部芳文[展也(のぶや)](1913–1971)と編んだ詩画集『妖精の距離』(1937)への流れを追っています。

また、戦後にその瀧口や阿部の導きで渡欧した彫刻家の宮脇愛子(1929–2014)は、1960年前後から晩年のマン・レイと交流を結び、彼のモデルもつとめました。

宮脇とマン・レイ二人の交流を示す書簡やオブジェを展示するとともに、1960年代後半、平面から立体へと変貌を遂げていった宮脇の創作を振り返っています。

DIC川村記念美術館でもマン・レイの展覧会が開催中

現在、千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館では『マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち』が開催されています。

そちらでは、作家が活動の後期より「我が愛しのオブジェ」と称したオブジェ作品に注目し、国内所蔵のオブジェおよそ50点を軸として、関連する作品や資料を合わせた約150点を展観しています。

同時期に2つの大きな美術館でマン・レイが取り上げられているチャンスをお見逃しなく!


取材・撮影・文:新麻記子

展覧会情報

『マン・レイと女性たち Man Ray and the Women』

会期:2022年10月22日(土)~2023年1月22日(日)
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館:月曜(2023年1月9日を除く)、12月29日(木)〜2023年1月3日(火)
URL:http://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2022-man-ray

【写真10枚】240点余の作品からマン・レイの生涯をたどる展覧会『マン・レイと女性たち Man Ray and the Women』 を詳しく見る

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新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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