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EVENT

2022.12.7

全国にある〈デザインの宝物〉を見つけよう!『DESIGN MUSEUM JAPAN展  集めてつなごう 日本のデザイン』

現在、国立新美術館にて開催している『DESIGN MUSEUM JAPAN展  集めてつなごう 日本のデザイン』。

DESIGN MUSEUM JAPAN展

本展覧会では、世界の一線で活躍する13人のクリエーターが全国13の地域でリサーチした、日本各地の〈デザインの宝物〉を展示しています。

デザインというフィルターを通すと見えてくる、日本人が作ってきたさまざまなモノやコト…その美しい輝きに迫ってみた会場の様子をお届けします!

13人のクリエーターたちと全国13地域でリサーチ

国立新美術館展示風景 田根剛 「縄文のムラ」国立新美術館展示風景(田根剛 「縄文のムラ」 1万年前の住空間にもデザインがあった

縄文時代より1万年以上ものあいだ、独自の生活文化を育んできた日本…そこには、世界がまだ気づいていない、豊かな物語を持つ〈デザイン〉があります。

NHKでは、全国47都道府県にある放送局のネットワークを駆使し、第一線で活躍するクリエーターたちとともに各地の生活文化のリサーチをはじめました。

雪国の暮らしを支えた山形の緞通(だんつう)、新潟・佐渡の船大工が暮らした町並み、世界最先端の富山のスポーツウエア、山梨の織物産業の起源というべき絹織物、静岡の水辺の暮らしにある名もない人々の工夫、石川・金沢の工業デザイナー・柳宗理のデザインプロセス、和歌山の博物学者・南方熊楠による収集のデザイン、岡山で作られるプロペラの合理的な美しさ、福岡の祭り“博多祇園山笠”がつなぐものなど。

本展覧会では、13人のクリエーターたちと全国13地域でリサーチした〈デザインの宝物〉を、その背景にある歴史や物語とともに紹介しています。

〈デザインの宝物〉とは?

国立新美術館展示風景(廣川玉枝 「博多祇園山笠」 更新されながら受け継がれる情熱の結晶)国立新美術館展示風景(廣川玉枝 「博多祇園山笠」 更新されながら受け継がれる情熱の結晶)

一見すると、どれも私たちの普通の生活の中にあるものばかりで、「これもデザインなの?」と疑問に思ってしまうかもしれません。

しかし、クリエーターたちにとっては触発され、ドキドキワクワクした気持ちとなり、次の面白いことを組み立てるための原動力になるものです。

国立新美術館展示風景(須藤玲子 「最先端スポーツウエア」 発想源は富山の「あんどん祭」)国立新美術館展示風景(須藤玲子 「最先端スポーツウエア」 発想源は富山の「あんどん祭」)

それらを〈デザインの宝物〉と呼び、鑑賞者である私たちも本展覧会をきっかけとして、身の回りにある〈デザインの宝物〉を探してみることで、日々が喜びと驚きに満ちたものへと変わっていくことや、豊かさと活力を与えてくれていることに気づけるでしょう。

強い意志が込められている各地のテキスタイル

国立新美術館展示風景(皆川明 「山形緞通」 〈雪国のくらし〉を支えるデザイン国立新美術館展示風景(皆川明 「山形緞通」 〈雪国のくらし〉を支えるデザイン

筆者が心惹かれたのはテキスタイルに関連するモノやコトを紹介している展示でした。

「minä perhonen(ミナ・ペルホネン)」のデザイナーとして知られる皆川明氏がリサーチしたのは、山形の手織りで作られる厚みのある絨毯「緞通(だんつう)」です。

「緞通」は、雪で閉ざされた冬場の仕事がない地域に雇用を生み出そうと、戦前の日本に中国から導入され、素足で生活する日本の生活様式に合うように改良されたものです。

その中でも皆川氏が注目したのは、戦後に素材である羊毛が手に入らない時期に作られた“葛の根の糸”で織られた緞通…なんとしても作り続けようというものづくりへの強い想いが感じられました。

国立新美術館展示風景(森永邦彦 「ノロの装束“ハブラギン”」 着る人を守る意思が生んだデザイン)国立新美術館展示風景(森永邦彦 「ノロの装束“ハブラギン”」 着る人を守る意思が生んだデザイン)

また、「ANREALAGE(アンリアレイジ)」のデザイナーである森永邦彦氏がリサーチしたのは、鹿児島・奄美で祭祀を司ったノロが着用した装束「ハブラギン」です。

「ハブラギン」は、柄と無地、シルクとコットンなど性質が異なる布を繋いで縫い合わせられています。また、ハブラ(ハベラ)は、奄美の言葉で蝶や蛾を意味し、それは浮遊している人間の霊魂を指します。そのため、「ハブラギン」は、ひとつひとつの布が蝶や蛾を表す三角形になっています。

その中で森永氏は、自身の原点であるパッチワークの概念を遥かに超えたものである、本物のハブラギンやその周辺の資料も展示し、着る人を守るという強い意志が込められているデザインを紹介しています。

最後に…

DESIGN MUSEUM JAPAN

この記事(上記2例)で紹介したのはほんの一部に過ぎません。会場では、人の想いがさまざまな形となった〈デザインの宝物〉を見つけることができるでしょう。

毎日が喜びと驚きに満ち溢れていることに気づける本展覧会で〈デザインの宝探しの旅〉に出かけてみてはいかがでしょうか。

また、本展覧会と関連してNHK では特集番組「DESIGN MUSEUM JAPAN」が12月10日(土)15:05〜15:50に放送されます。そちらも合わせてご覧になることで、より本展覧会への理解が深まることでしょう。


取材・撮影・文・新麻記子

展覧会情報

DESIGN MUSEUM JAPAN 展 集めてつなごう 日本のデザイン
会期:11月30日〜12月19日
会場:国立新美術館 企画展示室 1E
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
料金:無料
ホームページ:https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/dmj/

【海外巡回会場】
日程:2023春〜2024年に3地域を巡回
会場:ジャパン・ハウス3拠点 サンパウロ(ブラジル)、ロサンゼルス(アメリカ)、ロンドン(イギリス)

【写真7枚】全国にある〈デザインの宝物〉を見つけよう!『DESIGN MUSEUM JAPAN展  集めてつなごう 日本のデザイン』 を詳しく見る
新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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