Facebook X Instagram Youtube

EVENT

2023.8.3

27年ぶりとなる待望の大規模個展「デイヴィッド・ホックニー展」

現代で最も革新的な画家のひとりであるデイヴィッド・ホックニー。

現在、東京都現代美術館にて開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」は、全8章構成で120点余りが展示され、日本におけるこれまでで最も充実した内容となっています。

本記事では、そんな「デイヴィッド・ホックニー展」の見どころをご紹介します。

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年  《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》(2007)テート蔵 © David Hockney

デイヴィッド・ホックニーとは?

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年 《自画像、2021年12月10日》(2021)作家蔵 © David Hockney

イギリスを代表する現代アーティストのデイヴィッド・ホックニーは、1960年代よりアメリカの西海岸でも活動しました。20世紀の現代芸術を代表するひとりとして大きな影響を与え、最も多才なアーティストとしてその名を確立しています。

1937年イングランド北部のブラッドフォードに生まれ、同地の美術学校とロンドンの王立美術学校で学び、1964年ロサンゼルスに移住してからさまざまなアーティストと交流。アメリカ西海岸の陽光あふれる情景を描いた絵画で一躍脚光を浴びました。

60年以上にわたり美術表現の可能性を探る試みをつづけ、現在はフランスのノルマンディーを拠点にしています。近年はiPadを用いて作品制作をおこなうなど、86歳を迎えても今尚精力的に新作を発表しつづけ、ホックニーの美術への探求は衰えることを知りません。

本展覧会「デイヴィッド・ホックニー展」について

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年

日本では27年ぶりとなる大規模な個展では、イギリスで生まれたホックニーの60年以上にわたる、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった多彩な作品が展示されています。

1960年代にアメリカの西海岸で描いた初期の代表作をはじめ、近年の集大成というべき故郷ヨークシャー東部の自然を描いた大型絵画のシリーズ、新型コロナウイルスによるロックダウン中にフランス北部のノルマンディーで描いた全長90メートルにも及ぶ新作まで、ホックニーの作品を全8章・120点余を紹介する、日本におけるこれまでで最も充実した内容です。

会場では、想像をはるかに超える巨大で鮮やかな作品が揃い、歳を重ねても今尚新しい表現を探求しながら、「見る / 描く」喜びに満ちた数々の作品をご覧になれることでしょう。

日本では27年ぶりとなる待望の大型個展

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年  右:《No.118、2020年3月16日 「春の到来 ノルマンディー 2020年」より》(2020)作家蔵 © David Hockney  左:《花瓶と花》(1969)東京都現代美術館蔵 © David Hockney

デイヴィッド・ホックニーの国内の美術館における大型個展は、1996年以来、実に27年ぶりです。

欧米を中心に個展が相次いで開催され、2012年ロイヤル・アカデミー(ロンドン)での個展では60万人以上、2017年ポンピドゥー・センター(パリ)での個展でも60万人以上の来場者数を記録しています。

本展は、現在世界で最も人気のある作家の1人であるホックニーの代表作多数とともに、60年以上におよぶ画業をたどる展示です。

本展冒頭の第1章「春が来ることを忘れないで」では、東京都現代美術館所蔵のエッチングによる《花瓶と花》(1969)と、iPadで制作された《No.118、2020年3月16日「春の到来 ノルマンディー2020年」より》(2020)の絵画が展示されています。

2つの作品の制作期間は50年もの隔たりがあるにもかかわらず、ホックニーの制作の根底に流れている、常に身近な世界をテーマにする姿勢は変わりません。世界をどのように絵画で表現するかという探究心はもちろん、初期作から一貫する明快な世界観が伝わってきます。

近年の代表作〈春の到来〉シリーズ、日本初公開

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年 《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》(2011)ポンピドゥー・センター蔵 © David Hockney

会場では、幼少期に慣れ親しんだホックニーの故郷である、イギリスのヨークシャー東部で2011年に制作された、幅10メートル、高さ3.5メートルの油彩画《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》(2011年)が、大判サイズのiPad作品12点とともに日本で初公開されます。

大型の油彩画とiPadドローイングで構成され、豊かな色彩感覚によって芽吹きの季節をダイナミックにとらえた会心作です。

今を生きる画家ホックニーの世界を体感する

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年 《ノルマンディーの12か月》(2020-21)作家蔵 © David Hockney

2023年に86歳を迎えてもなお一層制作に打ち込み、自らの芸術を刷新しつづけながら、60年以上にわたり現代美術の第一線で活躍し、新作を発表し続けるホックニーの「今」をご紹介します。

全長90メートルを超える絵巻物のような大作《ノルマンディーの12か月》(2020-21)は、コロナ禍においてホックニーが周囲の風景を見つめながら、日ごとに劇的な変化を遂げる世界と向き合い、移ろい行く儚い季節をありのままに描いたものです。

コロナ禍において同じ時代を生きている私たちにしか感じ取ることができないメッセージがあるはずなので、2023年だからこそ出会える作品の数々を、ぜひ直接会場で体感してみてください。

最後に…

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、東京都現代美術館 2023年 © David Hockney

一見するとポップでカジュアルで親しみやすいホックニーの作品は、積み藁や睡蓮を生み出したモネのように光の探求がみられるだけでなく、燃えるような色彩からゴッホを彷彿とさせるほか、ピカソのキュビズムからの影響が感じられるアングルなど、美術史に残る巨匠たちの影響を受けていることがわかります。

また、絵画への探究心から新たな手法を次々と試みるばかりでなく、アクリル、ポラロイド、そして近年のiPadといった、時代を象徴する新しい機器を積極的に取り入れ続けています。新手法を自身の表現に生かしながらも、身近な世界を表現するテーマは変わりません。

80歳を超えた現在もその旺盛な活動は衰えることなく、変革を恐れずさらなる多作へとチャレンジしながら、日々進化を続ける現代アートの巨匠・ホックニーの活躍がご覧になれる本展覧会。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

(取材・撮影・文:新麻記子)

展示会情報

デイヴィッド・ホックニー展
会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室1F/3
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
開館時間:10時~18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
※7/21、7/28、8/4、8/11、8/18、8/25(すべて金曜日)はサマーナイトミュージアムを開催。21時まで開館
観覧料:一般2300円  大学生・65歳以上1600円  中高生1000円 小学生以下無料
公式サイト:デイヴィッド・ホックニー展

【写真7枚】27年ぶりとなる待望の大規模個展「デイヴィッド・ホックニー展」 を詳しく見る
新 麻記子

新 麻記子

  • instagram
  • twitter
  • note

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

新 麻記子さんの記事一覧はこちら