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2024.6.7
岡田美術館の『「東海道五十三次」で旅気分』!箱根で江戸時代を追体験
箱根・小涌谷に2013年に開館した岡田美術館。全5階、展示面積約5000平方メートルの広い館内には、日本や東洋の絵画や陶磁器などの美術品が常に約450点ほど展示され、「箱根の美の殿堂」として多くの美術ファンの人気を集めています。
目次
その岡田美術館では、6月9日から『「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も―』が開催されます。2024年は東海道五十三次の最後の宿場、庄野宿の完成から400年の節目に当たる年です。見どころをご紹介します。
江戸時代の美術と楽しむ東海道。江戸の琳派に京都の応挙、若冲も登場!
歌川広重「東海道五十三次 日本橋 朝之景」江戸時代 天保4〜5年(1833〜34) 岡田美術館蔵 ※前期展示
絵画や工芸ともに画家や作家がさまざまな個性を発揮した江戸時代。本展では「東海道五十三次」に加えて、出発地の江戸と到着地の京都を中心に、同時代の美術から東海道に因んだ作品が展示されます。
「東海道五十三次蒔絵書箪笥」江戸時代後期 19世紀 岡田美術館蔵
「東海道五十三次蒔絵書箪笥」とは、右下の日本橋にはじまり、たんすの側面を4周して、天板の京都へと連なる53の宿場を蒔絵で表現したもの。行き交う旅人や犬なども表されているほか、もちろん箱根も登場します。
今回公開される保永堂版「東海道五十三次」とは、広重が生涯に20種以上制作した東海道シリーズの第一作で、新規の版元・保永堂(竹内孫八)と組み、広重と保永堂の出世作を収めた作品です。全55枚が前期と後期に分けて展示されます。
伊藤若冲「雪中雄鶏図」(部分)江戸時代中期 18世紀後半 岡田美術館蔵
さらに江戸琳派の酒井抱一と鈴木其一や、京都の人気絵師である伊藤若冲や円山応挙の名品も公開されるというから見逃せません。
箱根や小田原を題材とした作品も!「東海道五十三次」に描かれた富士山とは?
歌川広重「東海道五十三次 箱根 湖水図」江戸時代 天保4〜5年(1833〜34) 岡田美術館蔵 ※前期展示
近年、日本のみならず、世界中から多く人々がやって来る富士山。全55図の「東海道五十三次」には、今も昔も万人に愛される富士山のすがたを、神奈川県から静岡県に及ぶ7図に見ることができます。
歌川広重「東海道五十三次 原 朝之富士」江戸時代 天保4〜5年(1833〜34) 岡田美術館蔵 ※後期展示
本展では富士山に着目!箱根の険しい山を美しい色合いで表現し、芦ノ湖越しに積雪の富士を描いた「東海道五十三次 箱根 湖水図」や、シリーズ中、意外にも富士山を唯一主役として描いた「東海道五十三次 原 朝之富士」などを展示します。
歌川広重「箱根温泉場ノ図・箱根湖上ノ不二」(部分)江戸時代後期 19世紀中頃 岡田美術館蔵
また広重は実際に箱根を訪れ、同地を題材とした作品を数多く残していますが、湯本から近い塔ノ沢と富士山を望む芦ノ湖を描いた「箱根温泉場ノ図・箱根湖上ノ不二」も披露されます。
このほか、後三年の役で奥州に出向く源義光が、足柄山の山中で笙という楽器を吹くすがたを描いた冷泉為恭の「足柄山図」や、小田原藩主に仕え、小田原城天守閣にも作品が所蔵される岡本秋暉の「孔雀図」など、箱根や小田原にゆかりのある作品にも注目しましょう。
名所旧跡から名産品まで。「東海道五十三次」をガイドブックとしての性格に着目!
歌川広重「東海道五十三次 鳴海 名物有松絞」江戸時代 天保4〜5年(1833〜34) 岡田美術館蔵 ※前期展示
「東海道五十三次」はガイドブックだった? というのも、同シリーズには古くから親しまれた名所旧跡をはじめ、鳴海宿(現在の名古屋市緑区)の有松・鳴海絞(染物)や、鞠子宿(現在の静岡市駿河区)のとろろ汁など、各地の名産品が描かれているからです。
尾張藩が特産として保護し、発展した有松絞は、浴衣や手ぬぐいとして使われ、旅人たちに大人気の土産物。その絞り染めが並ぶ店の前を女性たちが歩く光景を「東海道五十三次 鳴海 名物有松絞」で見ることができます。
歌川広重「東海道五十三次 草津 名物立場」江戸時代 天保4〜5年(1833〜34) 岡田美術館蔵 ※前期展示
「東海道五十三次 草津 名物立場」に登場するのは、現在の滋賀県草津市でも名物として知られる「姥が餅」です。本作には姥が餅を出す「うばもちや」の前を、旅人や荷物を載せた駕篭などが行き交う様子が描かれています。東海道の道中では滋養のつく餅が好まれたとされ、「東海道五十三次」には二川宿(現在の愛知県豊橋市)の柏餅や、大津宿(現在の滋賀県大津市)の走井餅も描かれています。
横山大観「霊峰一文字」(部分) 大正15年(1926) 岡田美術館蔵
最後にぜひ見ておきたいのが、特別展示としてお披露目する横山大観の水墨画の傑作、『霊峰一文字』です。縦約1メートル、横約9メートルにも及ぶ大パノラマ画面に描かれるのは、湧き上がる雲の中からすがたを見せる霊峰富士。文楽の語りの名人、三世竹本津太夫が大病から半年ぶりに復帰するのを祝し、大観が描き贈りました。
江戸時代、幕府が関所を設けたこともあり、宿場町として発展した箱根。その後も豊かな温泉地が人気となり、江戸時代後期には観光地として大変な賑わいを見せるようになりました。
岡田美術館には現代日本画家、福井江太郎によって描かれた風神・雷神の大壁画を眺めながら楽しめる足湯カフェ(100%源泉かけながし)や、美しいお庭を眺めながら食事ができる開化亭などの付帯施設も充実しています。
『「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も―』にて、あなたも箱根を旅しながら、江戸時代の風景を追体験してみてください。
※画像写真の無断転載を禁じます。
展覧会情報
『「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も―』 岡田美術館
開催期間:2024年6月9日(日)~12月8日(日)
※前期:6月9日(日)~9月12日(木)、後期:9月13日(金)~12月8日(日)
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
アクセス:JR線・小田急線小田原駅より伊豆箱根バス・箱根登山バス(40分)小涌園バス停下車すぐ。箱根登山鉄道小涌谷駅より伊豆箱根バス・箱根登山バス(2分)小涌園バス停下車すぐ。駐車場あり(80台)
開館時間:9:00~17:00
※入館は16:30まで
会期中無休
入館料:一般・大学生2800(2550)円、小中高生1800(1550)円
※( )内は前売り料金
※足湯入湯料:美術館ご利用の方は無料/足湯のみご利用の方は500円
公式サイト:『「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も―』
画像ギャラリー
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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