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2024.9.27
国立西洋美術館にて『モネ 睡蓮のとき』が開催!〈睡蓮〉に囲まれながらモネの世界へと没入
印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840〜1926年)。その晩年の制作に焦点をあてた『モネ 睡蓮のとき』が、10月5日から東京・上野の国立西洋美術館にて開かれます。
目次
展示の流れに沿って出展作品をご紹介します。
【第1章】セーヌ河から睡蓮の池へ〜50歳を超えたモネが見つめた水辺の景色
クロード・モネ《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》1897年 マルモッタン・モネ美術館、パリ(エフリュシ・ド・ロチルド邸、サン=ジャン=キャップ=フェラより寄託) © musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB 1896年から1898年にかけ、ジヴェルニーからほど近いセーヌ河の眺めを主題とする連作を約20点描いたモネ。毎朝3時半に起床しては、早朝の光と大気の変化にしたがい、14点ものカンヴァスを並行して手がけたといわれています。
1890年、7年前に移住したノルマンディー地方の村、ジヴェルニーの家を買い取って、終の棲家としたモネ。50歳を迎えた彼はこの頃、同じモティーフを異なった時間や天候のもとで繰り返し描く連作の手法を確立します。
そして主要なモティーフのひとつで、身近な存在だったセーヌ河の水辺の風景には、水面の反映がかたちづくる鏡像も見られ、のちの〈睡蓮〉のシリーズを予感させます。
クロード・モネ《睡蓮》1907年 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet 1907年に手がられた約15点の同構図の作例のひとつ。 画面の上部では、木々の反映と睡蓮の葉が輪郭を失い、混然一体と化しています。
3年後に庭の土地を買い足したモネは、セーヌ河の支流から水を引いて睡蓮の池を造成。さらに池の拡張させた1903年から1909年の間に描かれた約80点もの〈睡蓮〉の連作において、まなざしは水面へと急速に接近していきます。
そして周囲の実景の描写が影をひそめると、いつしか水平線のない水面とそこへ映し出される像、さらに光と大気が織りなす効果のみが画面を占めていきます。こうして睡蓮の池は晩年のモネにとって最も大きな創造のインスピレーションとなったのです。
【第2章】水と花々の装飾〜花々による装飾から、壁一面に水面とその反映を描く
クロード・モネ《藤》1919〜1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB 現存する8点のフリーズ(帯状装飾)の習作の中でも最も大きなもののうちのひとつ。明るい色彩と伸びやかな筆触が印象に残ります。
装飾芸術が隆盛した19世紀末のフランスでは、 多くの画家が装飾画を制作したように、モネも1870年代から装飾画に取り組みました。
1890年代に入ると、睡蓮というひとつの主題からなる装飾画を構想します。一方で1909年の「水の風景連作」展以降、視覚障害の兆候や妻の死といった不幸により、一時的に制作に空白期間が生じます。その後の1914年になって創作意欲を取り戻すと、かつて抱いていた装飾画の構想に取り組みはじめました。
クロード・モネ《アガパンサス》1914〜1917年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet 3点のパネルからなるアガパンサスの装飾画のための習作です。
当初は睡蓮だけでなく、池の周囲に植えられた花々もモティーフとして想定したモネは、庭を色彩豊かな花々で彩りました。しかし彼は最終的に花々による装飾の構想を破棄し、壁一面に池の水面と反映を描くことを選びます。
【第3章】大装飾画への道〜モネが追い求めた大装飾画とは?
クロード・モネ《睡蓮》1916〜1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet 1914年以降、池の水面に映し出される空と雲の反映は、モネの制作において重要なモティーフのひとつとなりました。
大装飾画とは、睡蓮の池を描いた巨大なパネルによって楕円形の部屋の壁面を覆うという、モネが長年にわたって追い求めた装飾画のプランでした。そして70歳を超えた彼は、その制作過程において、水面に映し出される木々や雲の反映をモティーフとする作品を精力的に描きます。
クロード・モネ《睡蓮、柳の反映》1916〜1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet 二股に分かれた枝垂れ柳の幹がかたちづくるゆるやかなS字形の反映像が、オランジュリーの大装飾画のうち《木々の反映》の中心的モティーフをなしています。
モネは巨大化した作品のサイズに応じ、新たに広大なアトリエを建設すると、幅4メートルにも達する装飾パネルの制作に取り組みます。それは自然の印象から出発して、印象を記憶とともに内面化しつつ再構成する試みでありました。
そして彼はごく少数の例外を除いて、大装飾画に関連する作品のほとんどを生前に手放すことなく、1926年の死の間際にいたるまで試行錯誤を重ねました。
【第4章】交響する色彩〜アメリカ抽象表現主義の先駆に位置付けられる
クロード・モネ《日本の橋》1918〜1924年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet 太鼓橋のモティーフは、モネがコレクションしていた葛飾北斎や喜多川歌麿の浮世絵から着想を得たともいわれています。
1908年頃から顕在化しはじめた白内障の症状は、晩年のモネの色覚を少なからず変容させます。画家は悪化する視力に苦痛を訴えながらも、1923年まで手術を拒み、時に絵具の色の表示やパレット上の場所に頼って制作を続けました。
クロード・モネ《ばらの庭から見た家》1922〜1924年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet モネの手になる最後のイーゼル画の連作のひとつで、自らが40年にわたって暮らした家を、ばらの花が咲き誇る庭から眺めた情景を描いています。
1918年の終わり頃から最晩年にかけて、大装飾画の制作と並行して、“水の庭”の池に架かる日本風の太鼓橋や枝垂れ柳、“花の庭”のばらのアーチがある小道などを描いた小型連作を手がけます。
これらの作品における画家の身振りを刻印する激しい筆遣いと鮮烈な色彩は、後にアメリカで台頭した抽象表現主義の先駆に位置づけられ、モネ晩年の芸術の再評価へとつながりました。
【エピローグ】さかさまの世界〜無限の水の広がりに包まれる瞑想体験
クロード・モネ《睡蓮》1916〜1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB オランジュリーの大装飾画のうち、《朝の柳》の左パネルに関連する習作。画面の左半分を占める柳の実像と虚像の境界は、それと識別できないほど曖昧になっています。
第一次世界大戦が勃発し、大装飾画の制作が開始された1914年、モネは以下のような言葉を残しています。
「大勢の人々が苦しみ、命を落としている中で、形や色の些細なことを考えるのは恥ずべきかもしれません。しかし、私にとってそうすることがこの悲しみから逃れる唯一の方法なのです。」
1918年に休戦を迎えると、彼は時の首相であり旧友のジョルジュ・クレマンソーに対し、戦勝記念として大装飾画の一部を国家へ寄贈することを申し出ます。
モネが大装飾画の構想において意図していたのは、無限の水の広がりに鑑賞者が包まれ、静かに瞑想することができる空間でした。
クロード・モネ《睡蓮の池》1917〜1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet 1917年から1919年にかけ、約20点の横長の画面に、ほぼ同じ視点から眺めた睡蓮の池を描いたモネ。第二次世界大戦中に画面の右側が損傷を受けたために、切断されています。
パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開作品7点を含む約50点の作品が来日し、「光の画家」と呼ばれるモネ最後の挑戦をたどる『モネ 睡蓮のとき』。
本展ではモネ晩年の最も重要なテーマ、〈睡蓮〉の作品20点以上が公開されるほか、2メートルを超える大画面の〈睡蓮〉に囲まれながらモネの世界に浸ることができます。
また日本国内に所蔵される名画も加えた、国内外のモネの名作が一堂に集結する充実のラインアップとなります。
画家が生きた時代から現代にいたるまで、苦難の中に生きる人々が永遠の世界へと想いを馳せる拠り所ともなった、モネの〈睡蓮〉とじっくりと向き合ってください。
関連記事:モネの『睡蓮』の見どころは? 池の場所、鑑賞できる美術館も紹介
関連記事:【クロード・モネ】印象派とは?睡蓮とは?画家の生涯と合わせて解説
展覧会情報
『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館
開催期間:2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火・祝)
所在地:東京都台東区上野公園7-7
アクセス: JR上野駅下車(公園口)徒歩1分、京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅下車 徒歩8分。
開館時間:9:30~17:30(会期中、金・土曜日は~21:00)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、10月15日(火)、11月5日(火)、12月28日(土)〜2025年1月1日(水・祝)、1月14日(火)。ただし、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)、2025年1月13日(月・祝)、2月10日(月)、2月11日(火・祝)は開館。
観覧料:一般2300円、大学生1400円、高校生1000円、中学生以下無料
展覧会HP:『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館
※【京都展】京都市京セラ美術館:2025年3月7日(金)〜6月8日(日)、【豊田展】豊田市美術館: 2025年6月21日(土)〜9月15日(月・祝)
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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