EVENT
2022.1.31
シュルレアリストたちの傑作を楽しもう!『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』展
人々の意識の深層にまで影響力を与えた、20世紀最大の芸術運動のシュルレアリスム。
時代を先駆けようとする優れたクリエーターたちの表現には、時にシュルレアリスムの理念と重なり合うものもあり、モードの世界にもシュルレアリスムに通底するような斬新なアイデアを垣間見ることができます。
現在、東京都庭園美術館にて開催中の『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』展では、そのような自由な想像力と発想力のアイデアが散りばめられたさまざまな作品がご覧になれます。
シュルレアリスムとは?
20世紀最大の芸術運動であるシュルレアリスム。
その言葉は、フランス語の「シュル=超」という接頭語に、「レアリスム=写実主義、現実主義」という名詞を組み合わせ、日本語では一般的に「超現実主義」と訳され、現代の「シュール」という言語表現のもとにもなっています。
シュルレアリスム運動は「夢と現実の矛盾した状態を肯定するもの」を理想とし、まるで夢の中を覘(のぞ)いているような独特の現実感を持つ作品が創作されました。
活動当初は、おもに美術と文学で用いられた前衛的な表現スタイルでしたが、その後芸術全体にわたって幅広く用いられるようになったそうです。
小谷元彦《ダブル・エッジド・オブ・ソウト(ドレス02)》1997年、金沢21世紀美術館所蔵
奇妙な世界を写実的に描くシュルレアリスム作品の特徴で、ダリ、マグリット、エルンスト、ミロなどが主要な画家としてあげられ、彼らの作品は鑑賞者に強い混乱を起こす内容と対照的に、親しみやすい写実的な画風から一躍人気を博しました。
そんなシュルレアリスムの表現は絵画だけでなく、映画、文学、彫刻、音楽、ダンス、演劇、ファッションなど芸術表現の大半に適用できる表現方法として知られ、さらにマンガ、アニメーション、ゲーム、インターネット動画など現代の芸術表現でも利用されています。
アート×ファッション 相互の感性に注目!
シュルレアリストたちと親交のあった女性ファッションデザイナーのエルザ・スキャパレッリは、シュルレアリスムの潮流のなかで示された特異な感覚を、モードの世界に積極的に取り込んでいきました。
またシュルレアリストたちも、靴、帽子、手袋といったファッションアイテムを霊感の源として、絵画や写真のほかに、オブジェといった作品のなかに生かしました。
衣裳へのトロンプ・ルイユ(だまし絵)的なイラストの導入や、内側と外側の意識を反転させたようなデザイン等、シュルレアリスムを契機として出現したユニークな発想力は、まさに「奇想のモード」として今日にまで影響を与えつづけています。
会場では、シュルレアリスムの感性に通ずるような作品群にも注目し、現代の私たちからみた“奇想”をテーマに、歴史的なファッションプレート、花魁の装いからコンテンポラリーアートまで、古今東西の作品をご覧になることができます。
シュルレアリストたちの傑作を楽しもう!
本展覧会は、シュルレアリスムがモードに与えた影響をひとつの視座としながら、モードの世界にセンセーションをもたらした美の表現に迫ろうとするものです。
ぜひ不思議な相互の関係性に思いを馳せながら、人間の自由な創造力と発想力によって、生み出された斬新な個性が遺憾なく発揮された、シュルレアリストたちの傑作の数々をご堪能ください。
また、ミュージアムショップでは、本展覧会の内容と絡めて、昆虫をモチーフにしたレザー商品や身につけられるアクセサリーのほか、シュルレアリスムの絵柄を用いた布バッグやポーチなどが取り揃えられています。
そして、レストランでも本展覧会とコラボレーションし、蕪(かぶ)を眼に見立てたメニューや羽をモチーフにしたデザートなどがお楽しみいただけますので、そちらも合わせて足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材・撮影・文:新麻記子
『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』展
会場:東京都庭園美術館
会期:2022年1月15日(土)〜4月10日(日)
時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日 *ただし3月21日は開館、3月22日(火)は休館
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp/

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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