EVENT
2022.2.4
超絶技巧の中国漆芸 貴重なコレクションを鑑賞しよう! 企画展「中国の漆器」
お正月の定番料理であるお雑煮などを食べるお椀や、和装のアクセサリーである帯留めなどの漆工芸品…じつは日本だけでなく中国でも漆工芸が盛んだったんですよ!
そんな中国の細密な文様を彫り出すさまざまな技法が楽しめる、中島香雪美術館にて開催されている企画展「中国の漆器」をご紹介します。
珍しい技法を用いた中国の漆器の魅力に迫る!
龍文存星大合子 明時代 万暦47年(1619)個人蔵(作品一部)
古くは漢代を中心として漆絵の技法が全盛を誇りましたが、唐代以降に漆を幾重にも塗り重ねることで厚みを出し、漆の層から細密な文様を彫り出す「彫漆(ちょうしつ)」の技法が登場し、宋代以降もっとも一般的な技法として広く行われました。
中国で漆器は生活品や装飾品として先史より作られ使われ、日本の伝統的な漆器では見られない珍しい技法が用いられています。
本展覧会は、これまであまり紹介されてこなかった香雪美術館の所蔵品を中心に、中国の漆器の魅力を広く知っていただく大変貴重な機会です。
さまざまな技法で飾られた盆に注目!
最表層が赤色のものを「堆朱(ついしゅ)」、黒色のものを「堆黒(ついこく)」をはじめとし、複数の色漆を塗り重ねて彫る深さを変えることでさまざまな色を出す「彫彩漆(ちょうさいしつ)」、花を赤色に、葉を緑色に、彫り表すものを「紅花緑葉(こうかりょうよく)」という名称で珍重されています。
さらに、薄く切った貝片を用いて文様を作り出す「螺鈿(らでん)」、線彫りした区画内を彩漆で埋めて文様をあらわす「存星(ぞんせい)」、漆の表面に金箔を貼る「箔絵(はくえ)」や貴石や動物の骨を嵌め込む「嵌骨(がんこつ)」など、さまざまな技法も考案されたことで、中国漆工芸の世界は豊かなものになりました。
その中でも全面に曲線的な幾何文様を彫り出した彫漆は、日本ではこれを「屈輪(ぐり)」と呼んで愛好され、同種の文様は鎌倉彫りなどにも取り入れられました。
企画展だけでなく、館内の他コンテンツも楽しんで!
中国の漆器は保存が難しいといった理由もあり、世界的に見てもまとまったコレクションはごくわずか。
そうした中で、今回公開されているコレクションは、その質と量はもちろんのこと、用いられた技法の多様さでも、きっと世界屈指のものと言えるでしょう。
本展を開催している中之島香雪美術館は、書跡、茶道具、刀剣・武具、仏教美術、近世絵画など、多岐にわたる美術品を所蔵しており、日本の文化財を守ろうとした朝日新聞社の創業者・村山龍平氏の想いが詰まった美術館です。
館内では、多彩な展示に対応する企画展示室をはじめ、村山氏が辿った歩みがわかる村山龍平記念室、そして国指定重要文化財「旧村山家住宅」に建つ茶室「玄庵」の再現展示が楽しめますので、そちらもあわせて鑑賞してみてはいかがでしょうか?
取材・撮影・文:新麻記子
企画展「中国の漆器」
会場:中之島香雪美術館
会期:2021年12月11日(土)〜2022年2月23日(水・祝)
時間:10:00〜17:00 (最終入場時間 16:30)
夜間特別開館2月17日(木)は10:00~19:30(最終入場時間 19:00)
休館:月曜日
祝日の場合は翌火曜日
HP:https://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/
画像ギャラリー
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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