EVENT
2022.7.21
「岡本太郎さんの力を借りることができた」小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ
小松美羽(こまつ・みわ)さんといえば…テレビや雑誌など数々のメディアで引っ張りだこで、主に日本の風土が生み出すものをテーマとし、世界にメッセージを発信する新進気鋭のアーティストです。
そんな彼女が手掛けた初期作品から最新作品はもちろん、今回初披露となる東寺の奉納画《ネクストマンダラ―大調和》までご覧になれる、「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」が川崎市岡本太郎美術館にて開催中です。展覧会の内容をご紹介します。
小松美羽(こまつ・みわ)さんとは?
小松美羽(こまつ・みわ)さんは、万物に魂が宿る八百万神の概念や、古くから伝わる神話に登場する神獣など、「見えない何か」からインスピレーションを得て、日本の伝統的な文化と現代的な芸術感を融合させた独自の表現をしています。
女子美術大学短期大学部在学中に銅版画作品《四十九日》が賞賛されてプロへの道を切り開き、銅版画からスタートさせ、近年ではアクリル画、有田焼などに制作領域を拡大し、祈りをテーマに力強い表現力で作品を発表しています。
長野の豊かな自然の中で生き物の生と死を間近に見てきた経験から、独自の死生観を形作ってきた小松さんの制作過程として最も特徴的なのが「祈り」。
幼い頃から長野の自然や動物に囲まれ、寺社が身近な存在であった彼女は、日常的に命あるものに対して祈り、生きとし生けるものに宿る霊性を感じ、浮かんだものをキャンバスに描いています。
躍動感あふれるライブペインティング
プレス内覧会当日は、川崎市岡本太郎美術館のシンボルタワー『母の塔』の真下で、小松美羽さんによるライブペイントがおこなわれました。
灼熱の炎天下で、遠くから轟く雷鳴…報道陣にも緊張感が高まるなか、3度のお辞儀からスタートしたライブペインティングは1時間にも及び、一心不乱に筆を振りながら描く彼女の姿に、その場にいた誰しもが魅了されていました。
終了後の本人インタビューでは「描いている時の記憶がほとんどなく…岡本太郎さんの力をお借りできた気がする」と語る小松さん。
その言葉通り、日本人の意識の底にある力強い生命力や美を見出し、作品にぶつけつづけた岡本太郎と同調するように、国境や宗教を超えた世界観で表現したようなモチーフが描かれています。
2023年に東寺へ奉納する《ネクストマンダラ―大調和》が初披露
会場では、「1章 線描との出会い:死、自画像、エロティシズム」、「2章 色彩の獲得:大いなる「目」との邂逅(かいこう)」、「3章 開かれた「第三の目」:存在の律動(リズム)」、「4章 霊性とマンダラ:「大調和」の宇宙(コスモロジー) 」、「5章 未来形の神話たち:抽象と象徴の冒険」の全5章からなり、初期から中期作品、そして最新作品まで、絵画・立体作品約100点が展示されています。
その中で注目すべきは、会場の中心にある「4章 霊性とマンダラ:「大調和」の宇宙(コスモロジー) 」。2023年、東寺(教王護国寺)真言宗開創1200年記念法要に向け、東寺より正式に依頼を受けて奉納することが決定した、約4m×4mの超大作《ネクストマンダラ―大調和》が披露されています。
また同展示室には、岡本太郎の彫刻作品《渾沌》(1962)の周辺に黒曜石を散りばめた作品をはじめとして、《Area21-Whole Earth》(2022)や、仲睦まじい白と黒の山犬が描かれている《NEXT MANDALA ―魂の故郷》(2021)など、間近で数多くの大型作品がご覧になれます。
また、通常奉納作品は一般公開されることはないのですが、2023年に東寺に奉納されることが決定し、掛軸として表装される前の《ネクストマンダラ―大調和》や、2014年に小松美羽が出雲大社へ奉納した《新・風土記》など、作家たっての希望により、貴重な作品が展示されるまたとない機会ですので、このチャンスをお見逃しなく!
最後に…
生と死や神獣をモチーフとして独特のタッチで描かれる作品からは力強さがみなぎっており、一見するとおどろおどろしくもありますが、言葉にできない優しさも感じられ、その作品が持つ力強さと不思議さに引き込まれることでしょう。
小松さんの作品の根底にある日本の伝統と現代美術、そして多様な文化をまとめ上げる調和力が、今後の世界の新しい可能性を見出すとともに、今の世に求められているものだと感じました。
取材・撮影・文:新麻記子
『小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ』
会場:川崎市岡本太郎美術館 企画展示室
会期:2022年6月25日(土)~2022年8月28日(日)
開館時間:9時30分~17時(入館16時30分まで)
休館日:月曜日(7月18日を除く)、7月19日(火)、8月12日(金)
観覧料:一般1000(800)円、高・大学生・65 歳以上800(640)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
ホームページ:https://www.taromuseum.jp/
※日時指定予約制
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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