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STUDY

2023.5.23

モダニズムってなに?現代アートを理解するためのイロハを解説

現代アートにまつわる語彙として、「モダニズム」や「モダンアート」という言葉を聞いたことがありませんか? 「新しい」や「近代的な」ニュアンスが感じられるものの、具体的になにを指しているか意外とわからない言葉ではないでしょうか。

この記事では、現代アートをより深く理解するために、「モダニズム」や「モダンアート」がなにを指すか解説していきます。

モダニズム=資本主義社会・市民社会の芸術

ポール・ゴーギャン『死霊が見ている(マナオ・トゥパパウ), Public domain, via Wikimedia Commons

「モダニズム」は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて西洋社会で起こった哲学的・芸術的運動を指します。モダニズムが起こったきっかけは、都市化や芸術革新を通じて西洋社会に生まれた大きな変革でした。

新しく社会の主流となった産業化の流れに合わせ、芸術家たちは新しい形の芸術を求めるようになりました。ここでいう「新しい芸術」とは、「古く伝統的な芸術」から脱却した今までにない表現を指します。

社会変革の中で不安定になった「自己」を問い直し、未知のものを説明しようする欲求が、モダニズムの原動力でした。

モダニズムの中心は「抽象芸術」

ピート・モンドリアン(ピエト・モンドリアン)『Farm with laundry』,Paradise Chronicle, Public domain, via Wikimedia Commons

モダニズムを理解するために重要なキーワードとして「抽象芸術」が挙げられます。モダニズム芸術では「伝統的な芸術」や「写実主義の美学」を明確に否定し、認識したものを自己意識に基づいて実験的に表現しようとしました。

このコンテクストにおける「伝統的な芸術」とは、物語的で写実的な19世紀までの芸術です。ある美術史家は「伝統的な芸術」の否定は、ブルジョア的世界観に対する反発が一因となったとも主張しています。

モダニズム芸術家は進歩した技術や社会の中で、存在のあらゆる側面を再検討・再構築することを目指していました。目の前にある事象の「本質」を追求し、特質を作品に落とし込むためには、「伝統的な芸術」はもはや適していないと考えられたのです。

19世紀末以降はヨーロッパ以外の地域の芸術を目にする機会が増えたことも、モダニズムが浸透するための重要な要素でした。ルネッサンス以降は遠近法を用いた現実再現を中心に据えていたヨーロッパ芸術において、色と形が「芸術の本質」であると考えるきっかけを与えたためです。


モダニズムの2つのアプローチ:「印象派」と「象徴派」

クロード・モネ『印象・日の出』, Public domain, via Wikimedia Commons

モダニズム芸術には1860年代ごろからとくにフランスにおいて2つの大きな潮流が生まれました。「印象派」と「象徴派」です。印象派も象徴派も、写実主義とは正反対の抽象的な特徴があります。

印象派は物質を表現するより人が目でとらえる光の表現に注力しました。これまでの絵画で主流だった光沢のある質感から脱し、印象派では強い筆致とインクの凹凸が残っている特徴があります。

▼関連記事:印象派の作品はここに注目!アート初心者さんでも楽しめる3つのコツ
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エドヴァルド・ムンク『叫び』, Public domain, via Wikimedia Commons

一方、象徴派(象徴主義)は直接的な描写よりも暗示的な意味合いが込められた芸術を目指しました。自然主義や写実主義に対する反発を含み、絶対的な真理を比喩によって象徴的に表現する点が特徴です。

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まとめ

モダニズムは哲学的で精神的な芸術運動であり、理解するのは簡単ではありません。しかし、作品を鑑賞においては直感的に芸術家の見たものを感じられるものも多く、背景知識がなくても楽しめる芸術ジャンルの1つです。

過去や伝統にとらわれない革新的な芸術として、ぜひ鑑賞を楽しんでくださいね。

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はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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