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2021.12.10

メルヘンの世界からやって来た?ユニークな建物も楽しい「多治見市モザイクタイルミュージアム」の魅力

岐阜県の南東部に位置し、1300年もの美濃焼の歴史を受け継ぐ多治見市。いまも窯元にて職人が器を作り続ける「焼きものまち」として知られていて、陶器商の商家や蔵を改築したショップが立ち並び、岐阜県現代陶芸美術館や多治見市美濃焼ミュージアムといった文化施設も点在しています。

2016年にオープンした「多治見市モザイクタイルミュージアム」2016年にオープンした「多治見市モザイクタイルミュージアム」

その多治見市に2016年、新たな名所としてオープンしたのがモザイクタイルミュージアムです。「縄文建築」の建築家とも呼ばれる藤森照信(ふじもり てるのぶ)が設計を担い、モザイクタイルの全国一の生産量をほこる同市笠原町に建てられました。「採土場」からイメージされたという、まるでメルヘンの世界から飛び出してきたような建物でも人気を集めています。

2016年にオープンした「多治見市モザイクタイルミュージアム」

タイルの原料となる粘土の鉱山をイメージ。モザイクタイルミュージアムのユニークな外観

まずは小山のような外観に目を向けてみましょう。すり鉢状の敷地に位置するモザイクタイルミュージアムは地上4階建て。しかし真正面に立つとまるで山の断面のように見えるので、何階建てであるのかわかりません。また上下に連なる窓と、建物からすれば驚くほどに小さな玄関もかわいいのではないでしょうか。

正面には、カラフルなタイルの欠片が埋め込まれている

そして正面にはタイルの原料となる土を塗り込んだような表情が作られ、カラフルなタイルの欠片が埋め込まれています。よって天気が良いと陽の光を受けてキラキラときらめくのも魅力です。

建物を横から見ると厚みがあり外観がユニークである

歩いて横や裏側に回ると「厚み」があることが見てとれ、確かに建物であることが分かりますが、平面的と呼べるような外観もユニークに思えました。屋根の縁に植えられた松の木を髪の毛に見立てれば、不思議と人の顔のように見えてくるかもしれません。

土の温もりを感じる館内。光に誘われながら登り窯をイメージした大階段を上がる

土の温もりを感じる館内には光に誘われながら登り窯をイメージした大階段がある

すり鉢を降りるようにアプローチを歩き、ワクワクしながら木の扉をくぐり抜けると、スタッフの方がチケットを扱う受付で温かく出迎えてくれます。そして右手にロッカー、また左手にミュージアムショップとタイルを使った工作ができる体験工房がありました。

登り窯をイメージした4階へと続く大階段登り窯をイメージした4階へと続く大階段。床、天井、壁がすべて同じ仕上げになっています。一度、4階まであがり、順に3階、2階と降りながら観覧するのがおすすめです。

さらに2階、3階、4階に3つの展示室とギャラリーが続いていて、巨大な土のトンネルのような大階段で行き来するように作られています。もちろんバリアフリーの観点からエレベーターも設置されていました。

タイルが埋め込まれた手すり

内部においても外観と同じく土の感触が作られていて、タイルが埋め込まれた手すりや、ランダムに幅を変えた白とグレーの漆喰のストライプの壁からは温もりも感じられました。

外壁にタイルが貼られている

なお外壁にタイルを貼る際は、モザイクタイルミュージアムの準備に関わってきたタイル業界の有志が中心となり、素材となるタイルの提供や、ハンマーでタイルを割る作業が行われました。地元の方との協働も重要だったようです。

ここはタイルの天国!「タイル・ガーデン」と生活に使われたさまざまなタイル製品

4階「展示室1」。地元の有志が集めて保存し、藤森照信がセレクトしたモザイクタイルの世界が広がります。4階「展示室1」。地元の有志が集めて保存し、藤森照信がセレクトしたモザイクタイルの世界が広がります。

光へと誘われるように大階段を4階まで上がり切ると、一転しての真っ白く明るい空間が姿を現しました。これこそがミュージアムで最も個性的な天井に穴の空いた展示室で、1995年頃から笠原町の有志が全国各地から収集したタイル張りの製品やモザイク画、また銭湯のタイル絵などが展示されています。

「モザイク浪漫館」と名付けられた倉庫兼展示場に保存されていたものが配置されている。

いずれもかつて笠原町内に「モザイク浪漫館」と名付けられた倉庫兼展示場に保存されていたもので、ミュージアムが開館する際に藤森照信が選んで配置しました。

1つ1つの年季の入ったタイルからは長く使われてきた生活の痕跡が感じられる。

昭和20〜30年代の立派な銭湯のタイル絵から、マリリン・モンローを描いたタイルアートなどが所狭しと並んでいますが、明治時代から昭和30年代あたりまで使われていたタイルの流し台や調理台、それに便器もタイル製品の歴史を語る上で貴重な資料かもしれません。1つ1つの年季の入ったタイルからは長く使われてきた生活の痕跡が感じられました。

藤森照信のアイデアによる「タイル・ガーデン」藤森照信のアイデアによる「タイル・ガーデン」。「タイルのすだれ」、または「タイルのカーテン」とも呼ばれています。

丸い穴の空いた天井には「タイル・ガーデン」と題し、色とりどりのモザイクタイルの欠片がカーテンのようにして連なっています。これは藤森照信が考案し、制作の一部に笠原町の人々も携わった作品で、タイルは青空のもとで宝石のような光を放っていました。

星屑のようなタイルから放たれた色を浴びる体験ができる場所

星屑のようなタイルから放たれた色を浴びる体験。まさにモザイクタイルミュージアムでしか得られないのではないでしょか。タイルの天国にいるかのようでした。

多治見のモザイクタイルの製造や歴史とミュージアムの建設過程を学ぶ

3階「展示室2」より。右は手動でタイルの形を成型するハンドプレス機3階「展示室2」より。右は手動でタイルの形を成型するハンドプレス機。

さまざまなタイルを鑑賞したのちは、3階、そして2階の展示室へと進んでみましょう。まず3階では「コレクション展」として、タイルの製造工程や笠原におけるモザイクタイルの歴史を紹介。昭和30年頃にタイルの製造の際に使用していたハンドプレス機をはじめ、貼り板やモザイクタイルなどの資料が多く展示されています。

旧笠原鉄道売店ショーケース。昭和25年頃から使われていました。旧笠原鉄道売店ショーケース。昭和25年頃から使われていました。

かつて多治見と笠原をつなぎ、昭和53年に廃止となった旧笠原鉄道の笠原駅の商品ケースも目を引くのではないでしょうか。中にはアンティークな陶製のキセルやタイルを貼り付けた灰皿などが収められていました。

多種多様のタイル

一口にタイルと言っても姿やかたちは多種多様です。竹をかたどったものから鯉タイルなどを見比べながら、タイルの形状について学ぶこともできます。「小さい頃に田舎の家で見たことあるかも?」と思うような懐かしいタイルも少なくありませんでした。

『藤森照信とモザイクタイルミュージアム』展示風景『藤森照信とモザイクタイルミュージアム』展示風景

また現在、3階では企画展『藤森照信とモザイクタイルミュージアム』を開催中です。(2022年1月10日まで)ここではスケッチ、サンプル、試作などを通して、藤森がどのようにミュージアムの建物を設計したのかについて紹介されています。

『藤森照信とモザイクタイルミュージアム』展示風景。左奥ではタイルが貼られた外壁の構造を工程順に紹介しています。『藤森照信とモザイクタイルミュージアム』展示風景。左奥ではタイルが貼られた外壁の構造を工程順に紹介しています。

ここでは屋根のタイルや外壁の構造模型、そして「タイル・ガーデン」の試作再現、さらには建築工事の光景をとらえた写真などが展示されています。どのように古い建物が解体され、ミュージアムが生まれたのかを分かりやすく理解することができました。

「モザイクタイルミュージアム工事写真」(複製)。かつてこの地にあった旧笠原町役場の庁舎解体よりミュージアムが造られる光景が記録されています。「モザイクタイルミュージアム工事写真」(複製)。かつてこの地にあった旧笠原町役場の庁舎解体よりミュージアムが造られる光景が記録されています。

藤森がアイデアを記したメモも見逃せません。中にはカフェの紙ナプキンに記したものもあり、場所を選ばずに構想を練っていたことが分かりますが、それらを見ているとまるで藤森の頭の中をのぞき込むような気分にさせられます。建築ファンにとってもたまらない展示ではないでしょうか。

「タイルのある生活」デザインブースで感じるタイルの新たな可能性

2階「展示室3」より。産業振興エリア「タイルのある生活」デザインブース2階「展示室3」より。産業振興エリア「タイルのある生活」デザインブース

「まるで住宅展示場?!」つい思ってしまうのが、最新のタイル情報と産業振興のための2階の展示室です。

一般財団法人たじみ・笠原タイル館が管理するフロア

一般財団法人たじみ・笠原タイル館が管理するこのフロアでは、現代の生活の中でタイルをどのように活用したら良いのかを16のシーンに分けて紹介。キッチンやシャワールームから、子ども部屋やリビング、それに寝室といった空間をインテリアデザイナーが提案しています。

各ブースに使用されているタイルは注文可能

また各ブースに使用されているタイルは、同ミュージアムを協賛する地元企業のタイルメーカーなどがいまも生産する製品のため、コンシェルジュカウンターにて注文することもできます。

2階「展示室3」にあるコンシェルジュカウンター。タイルに関する質問をなんでも受け付けています。2階「展示室3」にあるコンシェルジュカウンター。タイルに関する質問をなんでも受け付けています。

タイルと暮らすアイデアが散りばめられたスペースと言えるかもしれません。住宅でタイルというと水まわりばかりを想像してしまいますが、もっと幅広い用途で使われていく可能性を感じる展示でした。

ミュージアムショップに体験工房も!未来へ羽ばたくモザイクタイルミュージアム

多治見駅からのバスはモザイクタイルミュージアムの目の前にバス停にとまります。多治見駅からのバスはモザイクタイルミュージアムの目の前にバス停にとまります。

最後にアクセスに関する情報です。モザイクタイルミュージアムが位置するのは多治見駅から
道なりで南に5.5キロほど離れた笠原町です。笠原中央公民館に隣接していて、JR多治見駅からは東鉄バスにて約20分弱かかります。バス停「モザイクタイルミュージアム」からは目の前ですが、バスの本数がおおむね1時間に1本程度と少ないため、あらかじめ時刻表で確認しておきましょう。

1階に展示されたモザイクタイルの車『タイル大好き号』。2008年の岐阜県現代陶芸美術館で開かれた特別展をきっかけに作られました。1階に展示されたモザイクタイルの車『タイル大好き号』。2008年の岐阜県現代陶芸美術館で開かれた特別展をきっかけに作られました。

1階のミュージアムショップも充実していて、アクセサリーや箸置きといった地元タイルメーカーの商品も多く販売されています。それに体験工房ではタイルを自由に貼って小物を作ったり、タイルのシート加工を体験するワークショップも行われています。お子さんを交えてファミリーで参加するのも楽しいのではないでしょうか。

大正時代にはじまった「美濃焼タイル」

大正時代にはじまった「美濃焼タイル」は、戦争を経ながらも、昭和と平成にかけて全国各地のさまざまな建物をモダンに彩りました。中でも表面積が50㎠以下を指すモザイクタイルは、かたちを組み合わせることで複雑なパターンを生み出すことができます。そして笠原には最盛期に100を超えるタイル工場が存在し、現在も町全体でタイルを生産し続け、モザイクタイルのシェアは日本一を誇ります。

タイルは人々の暮らしを支えてきたという価値がある

すでにタイルは一般家庭に広く普及し、国外へも輸出されていますが、バブル崩壊後は生産量が年々落ちていったそうです。また基本的に建築に用いられる素材であるため、解体時には廃棄物として捨てられてしまいます。しかしその1枚1枚のタイルには作り手の技をはじめ、量産を可能にした技術革新の成果、それに人々の暮らしを支えてきたという確かな価値が存在するのです。

多治見の歴史を学べるモザイクタイルミュージアム

単純に建物がインスタ映えするだけでなく、タイルと暮らしの関係、それにタイルを作り続けてきた多治見の歴史を学べるモザイクタイルミュージアム。一度は行ってみたいミュージアムとしてこれからも人々に愛されていくのではないでしょうか。


※モザイクタイルミュージアムでは新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、当面の間制限を設けながら開館しています。土日祝日の入館、および体験工房については事前予約が必要です。(体験工房は曜日を問わず予約制。電話のみ。)お出かけの際はご注意ください。

『開館5周年企画展 藤森照信とモザイクタイルミュージアム』 多治見市モザイクタイルミュージアム
開催期間:2021年11月20日(土)〜2022年1月30日(日)
所在地:岐阜県多治見市笠原町2082-5
アクセス:JR線多治見駅南口から「多治見駅前」2番バスのりばより東鉄バス笠原線「東草口行き」または「羽根行き」に乗車、「モザイクタイルミュージアム」下車。(駅からの所要時間:約17分)
開館時間:9:00〜17:00
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日~1月3日)
観覧料:一般310円、団体(20名以上)250円。
 ※土日祝日は事前予約制。
https://www.mosaictile-museum.jp

はろるど

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。