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2022.3.2
西洋絵画史を彩る珠玉の名作が一挙来日!メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
今年、話題の美術展の一つとして大きな期待を集めている『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』。
1月16日(日)に閉幕した大阪展(大阪市立美術館)が巡回し、2月9日(水)から東京展(国立新美術館)が開幕しました。
▼大阪展のレポートはこちら
500年で変わったもの、変わらないもの。メトロポリタン美術館展に見る西洋絵画の歴史
https://irohani.art/event/5858/
この記事では、国立新美術館にて開催されている東京展の様子をお伝えします。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館とは?
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』2022年 国立新美術館 展示
世界屈指のミュージアムとして知られる、ニューヨーク・メトロポリタン美術館(通称「MET(メット)」)。コレクション数は150万点以上とも言われており、世界3大美術館の1つとして数えられている、世界的にも有名な美術館です。
美術に精通していない方でも一度は耳にしたことのある有名作家の名画や、古代エジプトからアジアの名品とジャンルも幅広く、17の部門に分かれて作品が楽しめる常設展示に加え、毎年見応えのある特別企画展が開催されるなど、一生に一度は訪れてみたいアートスポット。
また、現在は『VOGUE(ヴォーグ)』の編集長アナ・ウィンターが主催者を務める、世界的スターたちが一堂に会する年に一度のファッションの祭典『Met Gala(メットガラ)』の会場となり、アート界隈のみならず、多くの方々の関心を集めているのではないでしょうか。
46点もの作品が日本初公開!本展覧会の見どころは?
ミケランジェロ(本名 ミケランジェロ・メリージ)《音楽家たち》1597年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 52.81 展示風景
本展覧会では、そんなメトロポリタン美術館の豪華なコレクションのうち、ヨーロッパ絵画の2500点余りから選りすぐりの名画65点が来日し、うち46点は日本初公開となる大変貴重な機会です。
会場では、15世紀の初期ルネサンスから19世紀のポスト印象派まで、500年の歴史を彩った巨匠たちの名作が並び、第1章「信仰とルネサンス」、第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」、第3章「革命と人々のための芸術」と時代順の3章構成となっています。
ルネサンスや宗教改革、市民社会の確立、産業革命へと移り変わっていく時代とともに、キリスト教の教えや神話世界を主題にしてきた絵画は、次第に人々の暮らしや都市の風景を表現するものへと裾野を広げていきました。
それでは、それぞれの章の見どころ作品をお伝えします。
第1章「信仰とルネサンス」
エル・グレコ(本名 ドメニコス・テオトコプーロス) 《羊飼いの礼拝》 1605–10年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rongers Found 1951 05 42 展示風景 Rogers Fund, 1905 05.42
第1章「信仰とルネサンス」では、フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコらが紹介されていきます。
イタリアのフィレンツェで15世紀初頭に花開き、16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛したルネサンス文化。
中世の絵画は、キリストや聖母の姿を平面的に描き、神性が強調されていますが、その一方でルネサンスの絵画では、古代美術を手本として人間らしく立体的に描写され、 人物を取り巻く空間も遠近法を用いて表現されるようになりました。
そんな作品のなかから、エル・グレコの《羊飼いの礼拝》を取り上げたいと思います。
画面中央に配された幼子イエスは、その身体から白い光を発して、周囲の聖母や羊飼いたちの表情や仕草を暗闇のなかに浮かび上がらせています。
奇跡的なシーンの神秘性を強調するためのドラマティックな明暗表現、細部描写を省略した大胆で生き生きとした筆遣い、エル・グレコならではの技量が際立つ本作品をぜひ会場でご鑑賞ください。
第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」
ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》1670−72年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 32.100.18
第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」では、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェの作品がご覧になれます。
君主が主権を掌握する絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点により紹介されています。
第2章の目玉作品の一つが、フェルメールの《信仰の寓意》です。
プロテスタントを公認の宗教としていたオランダで、結婚を機にカトリックに改宗したとされるフェルメールの本作品は、抽象的な概念を擬人化した「寓意画」で、「信仰」を擬人化した女性の姿を描いています。
胸に手を当てる仕草は心の中の信仰を表し、女性の片足が地球儀の上に置かれている描写は、カトリック教会が世界を支配していることをほのめかしているのだそうです。
第3章「革命と人々のための芸術」
クロード・モネ《睡蓮》1916-19年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Louise Reinhardt Smith, 1983 1983.532
第3章「革命と人々のための芸術」では、ゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌらの作品が紹介されます。
市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの作品を展覧しています。
なかでも注目したいのが、クロード・モネの《睡蓮》です。
1897年頃からジヴェルニーの自邸の庭に造った睡蓮の池をモチーフとし、約30年間もの長きに渡って描きつづけたクロード・モネは、晩年期に白内障に侵され、本作品では遠近感のない不思議な光景を描いています。
縦横無尽な筆致で彩られ、抽象化された画面は、抽象表現主義の先駆けとして評価されました。
最後に…
特設ミュージアムショップでは、デスク周りを華やかにする盛りだくさんのグッズなどさまざまなアイテムが展開されています。東京展だけの「すみっコぐらし」とのオリジナルコラボグッズもぜひチェックしてみてください。
また、メトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門の所蔵品約2500点のデータをビジュアライズした年表や、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》の作品世界に入り込むことができるフェイスチェンジャーなどのデジタル展示企画も楽しめます。
その他、本展の展示作品を中心にメトロポリタン美術館の学芸員と、美術史家の高橋明也氏が主要な展示作品を読み解くレクチャー動画も展覧会ホームページにて好評配信中(有料)です。
ぜひ、メトロポリタン美術館の豪華なコレクションを鑑賞しに行ってみてください!
取材・撮影・文:新麻記子
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』(東京展)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月)
時間:10:00~18:00、金土は20:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館)
料金:一般2,100円、大学生1,400円 高校生1,000円
※事前予約制(日時指定券)を導入
展覧会ホームページ:https://met.exhn.jp/

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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