EVENT
2022.3.7
可愛いデザインが心をときめかせる『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』展
世紀末芸術の爛熟期にあったウィーンで生まれ、結婚を機に京都に移り住みながらも、自身のデザイン表現を追求し、明るくて華やかなデザインを生み出した上野リチ。
1月16日(日)に閉幕した京都展(京都国立近代美術館)が巡回し、2月18日(金)から東京展(三菱一号館美術館)が開幕しました。
▼京都展のレポートはこちら
京都のウィーン人、上野リチ・リックスが生んだ魅力あふれるデザイン世界
https://irohani.art/event/5980/
目次
こちらの記事では、三菱一号館美術館にて開催されている本展の模様をお伝えします。
上野リチの世界初の大規模展覧会!
フェリーツェ・リックス(愛称リチ、結婚後は上野リチ・リックスを名乗る)は、20世紀のデザインの方向性に大きく関わったウィーン工房に所属したスターデザイナーです。
第二次世界大戦前の不穏な世界情勢の中、日本人建築家・上野伊三郎と結婚して京都へ移住、その後デザイナーとして生涯活躍しました。
本展覧会では、上野リチの大規模コレクションを所蔵するウィーン、ニューヨーク、京都から作品が集結し、彼女のデザイン世界の全貌を展観する世界初の回顧展です。
また、サブタイトルにも含まれている“ファンタジー”は、日本語ではおとぎ話や空想の世界を想起しますが、リチのいうドイツ語の「ファンタジー(Phantasie)」には、日本語とは異なり「想像力」といった意味もあり、他の影響を受けずに想像力を発揮し、独自性を獲得したものといった、独特の含意があったと考えられます。
章毎の展示作品の特徴をご紹介!
会場では、自由な線と生命感あふれる色彩と身近な自然を組み合わせたデザインで、テキスタイル、ガラス、壁紙、陶器、七宝などのジャンルで、日用品や室内装飾を手がけた多くの作品がご覧になれます。
また、三菱一号館美術館の特性を生かした展示スタイルにもぜひ注目してみてくださいね。
「プロローグ:京都に生きたウィーン人」
上野リチ・リックス スケッチブック4 1950年頃 京都国立近代美術館
こちらでは、ポートレートやスケッチブック等により人物を紹介。
自身が身につけていたものや大切にしていたものなどから、リチ自身の息遣いが聞こえてきそうな品々がご覧になれます。
「第一章:ウィーン時代―ファンタジーの誕生」
上野リチ・リックス(装飾)/ヨーゼフ・ホフマン(形)《リキュールグラス》 1929年 京都国立近代美術館
本章では、ウィーン工芸学校卒業後、所属することになるウィーン工房時代の作品を展示しています。
第一世代の直線的で限られた色彩のデザインを脱し、第二世代の色彩豊かで装飾的なデザインへ変化させながら、華やかな色彩、自由な描線、絶妙なモチーフを組み合わせた、魅力あふれるリチデザインが誕生しました。
「第二章:日本との出会い―新たな人生、新たなファンタジー」
本章では、日本人建築家である夫・上野伊三郎と結婚し、京都へ移住してからの作品を紹介しています。
日本の染め型紙をはじめとし、桜などをモチーフにしたものや、ヨーロッパ調の色彩で塗られたこけし、そして京都の地場産業との協働で生まれた七宝やテキスタイルなど、日本文化とのコラボレーションした作品がご覧になれます。
「第三章:京都時代―ファンタジーの再生」
上野リチ・リックス《七宝飾箱:中国芝居》再製作1987年頃 京都国立近代美術館
本章では、日本人建築家である夫・上野伊三郎とリチ自身が内装デザインを手がけた店舗のスケッチや、かつて存在していた日生劇場レストラン「アクトレス」の壁面の一部を展示しています。
建築、デザイン、工芸などジャンルを横断した視点から考察した、夫婦二人の息が揃った創造の実践が伺えることでしょう。
エピローグ
こちらでは、第二次世界大戦後に教育者として指導時に制作したデザインや、没後彼女のデザインを受け継いで制作された作品などを紹介しています。
1967年に亡くなってしまった上野リチですが、その彼女のデザインは今日まで伝えられています。
可愛らしいリチデザインのグッズやメニュー
ミュージアムショップ「Store 1894」では、トートバッグやがまぐちの小物入れなど、彼女のデザインを引用したさまざまなオリジナルグッズが展開されています。
また、ミュージアムカフェ・バー「Café 1894」では、展覧会にちなんだタイアップしたランチメニューやデザートが召し上がれます。
ぜひリチデザインをふんだんにあしらったグッズやメニューもチェックしてみてくださいね!
取材・撮影・文:新 麻記子
『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』(東京展)
会期:2022年2月18日(金)〜2022年5月15日(日)
※展示替えあり
前期:2022年4月10日(日)まで
後期:2022年4月13日(水)から
会場:三菱一号館美術館
時間:10:00〜18:00 (最終入場時間 17:30)
祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日、開館記念日の4月6日は21:00まで(最終入場時間 20:30)
休館日:月曜日 展示替えの4月12日(火)
※ただし3月21日、3月28日・4月25日、5月2日、5月9日は開館
サイト:https://mimt.jp/lizzi/
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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