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2024.10.15

ミケランジェロの『ダビデ像』を徹底解説!何がすごい?大きさは?

ルネサンス時代の巨匠、ミケランジェロ・ブオナローティが制作した『ダビデ像』。あまりに美しい姿から今でも「理想の男性の体型」なんて言われることもあります。

今回はそんなダビデ像を解説します。当時、ミケランジェロはどうしてこの作品を作ったのか、なぜここまで高く評価されているのか、見どころは? などを網羅的に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!

ダビデ像の概要

ミケランジェロのダビデ像, Public domain, via Wikimedia Commons.

ダビデ像はルネサンス期を代表する彫刻作品の一つです。ルネサンスの三大巨匠の一人、ミケランジェロ・ブオナローティによって、1501年~1504年にかけて制作されました。

まずはそのサイズが圧倒的です。高さは517cm、幅は199cmととんでもない存在感があります。当時、このサイズの彫刻を3年で作り上げたミケランジェロは、まさに「神のごとき」のひと言です。

旧約聖書の英雄「ダビデ」とは

「ダビデとゴリアテ」(オスマール・シンドラー作、1888), Public domain, via Wikimedia Commons.

そもそも「ダビデ」とは、旧約聖書に登場するイスラエルの第二代の王です。ダビデは若い頃、羊飼いでした。イスラエルはペリシテ人と闘いを繰り返しており、ペリシテ最強の戦士業・ゴリアテに恐れを抱いていました。

そんななか、ダビデは投石によってゴリアテを倒し、英雄になりました。ダビデ像の左腕が曲がっているのは、ちょうど投石機を左肩にかけているからです。

ダビデ像が制作された背景

本来の位置に置かれたレプリカCC3.0, via Wikimedia Commons.

そんなダビデ像は、いったいなぜ制作されたのでしょうか。

そもそもダビデ像の制作プロジェクトは、とてもぐだぐだでした。1464年、イタリア・フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ教会の運営は実質、フィレンツェ羊毛業組合が支配していました。

彼らは旧約聖書の物語に基づく英雄の彫像を12体設置することで、市民の士気を高めようとします。そのなかの一体がダビデ像でした。

そこで彫刻家・アゴスティーノやロッセリーノに「ダビデ像」の制作を依頼しましたが、途中で契約破棄になってしまいます。カッラーラ採石場から大理石を運んだのにも関わらず、制作は進まず、なんと25年も石の塊を放置することになりました。

そんななか1501年に制作を依頼されたのが、当時26歳のミケランジェロです。既に大御所だったダ・ヴィンチなども候補に挙がるなか、大抜擢でした。

ミケランジェロによるダビデ像の制作秘話

Miguel Ángel, por Daniele da Volterra (detalle), Public domain, via Wikimedia Commons.

抜擢されたミケランジェロは当時、代表作の一つ『ピエタ』を完成させ、名声を高めていった時期でした。

彼の制作スタイルは、とてもストイックです。現代風にいうとワーカホリックな人でした。例えば『ピエタ』の際には、自分でローマからカッラ―ラ採石場まで400km弱移動しました。

また、2つ以上の作品を同時に制作することを嫌い、1つの作品に集中するのが基本です。集中力が削がれるため、制作を他人に見せることを嫌いました。そのため『ダビデ像』の制作中は、大きな仕切りで土台と大理石を覆っていました。

唯一、市長が来た際は「作業するふりをしてごまかした」というエピソードが残っています。「歴史的瞬間を見たぞ!」と喜ぶ市長を見て、ほくそ笑んでいたというユーモラスなエピソードも残っています。

こうして3年後にダビデ像は完成し、ミケランジェロは当時芸術の中心地であったフィレンツェで最高の芸術家として名をはせることになりました。

ミケランジェロについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。

関連記事:ミケランジェロ・ブオナローティとは|生涯とともにピエタ、最後の審判などの代表作、すごさを紹介

ダビデ像の3つの見どころ

フィレンツェのミケランジェロ広場に設置された銅製のレプリカ, Public domain, via Wikimedia Commons.

そんなダビデ像の見どころを3つに分けて紹介します。

ダビデ像見どころ①コントラポストによる自然なポージング

ダビデ像は右足に重心が置かれています。左右非対称でありながら、均整の取れた像となっているのが特徴です。これを「コントラポスト」といいます。

そのため体の自然なねじれや重心の移動が生まれ、静止した彫像でありながらもダイナミックでより人間に近い印象を与えています。

「コントラポスト(Contrapposto)」は、古代ギリシャ彫刻に起源を持つ芸術的な技法で、人物が自然な立ち姿で体重を片足にかけ、体のバランスを取っているポーズを表します。この姿勢は、片方の脚に体重が乗り、もう片方の脚がリラックスしているため、肩や腰が斜めに傾き、体全体に柔らかいS字形のラインが生まれます。

このポーズは、静的で対称的な姿勢から脱却し、より自然で動きのある表現を可能にするもので、人物像に生命感や動きを与えます。

ダビデ像見どころ②解剖学的な人体のデザインと、あえての不格好さ

正確な人体構造を把握するために解剖をおこなった人物としては、ダ・ヴィンチが有名ですが、ミケランジェロも多くの解剖をしています。その結果として、さまざまな彫刻作品で正確に人体表現ができています。

ダビデ像も美しくデザインされていることが特徴です。ただし、観覧者が下から見上げる構図になるため、下半身と比べて上半身、頭をあえて大きく作っているといわれています。

ダビデ像見どころ③実は目がハート!緊張感を感じさせる表情

ダビデ像の表情にも注目です。引き締まった口元から、敵のゴリアテと対峙する直前の緊張感が伝わる表情となっています。また、少し遠くを見つめているように感じます。こうした表情のリアルさによって、見る側はドラマを感じられます。

またダビデ像の瞳はハート型に彫られています。これは独特の表現で、瞳にうつる陰影を表現した結果、ハート型になったようです。

今でも驚くほどのハイクオリティさを感じるダビデ像

今回はミケランジェロがつくった『ダビデ像』について、制作背景や見どころを紹介しました。今でもイタリアをはじめ、世界中で絶賛されている、まさに傑作です。

2023年に「アメリカの小学校でダビデ像を子どもに見せた校長が「ポルノを見せた」と抗議され、辞職に追い込まれた」という事件がありました。この際にフィレンツェをはじめイタリアは激怒してアメリカに猛抗議しましたが、それほどまでに本国でもプライドを持って守っている美術品です。

ダビデ像は、今でもフィレンツェのアカデミア美術館で見られます。筆者は一度観にいったことがありますが、まずそのサイズ感に圧倒されます。ぜひ、一度は見ていただきたい作品です。

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ジュウ・ショ

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アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

アート・カルチャーライター。サブカル系・アート系Webメディアの運営、美術館の専属ライターなどを経験。堅苦しく書かれがちなアートを「深くたのしく」伝えていきます。週刊女性PRIMEでも執筆中です。noteではマンガ、アニメ、文学、音楽なども紹介しています。

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