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2023.2.10

30年ぶりとなるエゴン・シーレの作品50点が集結!『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』展レポート

20代で早世した天才画家として広く認知されているエゴン・シーレ。
そんな彼の激動の人生を追体験しながら才能に触れられる50点作品とともに、ウィーン世紀末を生きた強烈な個性を放つ画家たちによる約120作品も合わせて鑑賞できる展覧会が開幕しました。

20代で早世した天才画家として広く認知されているエゴン・シーレ。
そんな彼の激動の人生を追体験しながら才能に触れられる50点作品とともに、ウィーン世紀末を生きた強烈な個性を放つ画家たちによる約120作品も合わせて鑑賞できる展覧会が開幕しました。

上野・東京都美術館にて開催中の『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』をご紹介します。

エゴン・シーレってどんな人?

展示風景

エゴン・シーレ(1890〜1918年)は、世紀末を経て芸術の爛熟期を迎えたウィーンに生き、28歳の若さながらスペイン風邪によりこの世を去った画家です。

彼は16歳という最年少でウィーンの美術学校へ入学し、10代にしてクリムトに才能を認められると、若い仲間たちと新たな芸術を起こすべく「新芸術家集団」を結成します。

ウィーン分離派を初めとして象徴派や表現主義に影響を受けつつも、独自の絵画を追求し、強烈な個性を持つ画風に加え、意図的に捻じ曲げられたポーズの人物画を製作しました。

《悲しみの女》エゴン・シーレ 1912年 レオポルド美術館蔵

そんな当時の常識にとらわれない創作活動によって、逮捕されるなどの波乱に満ちた生涯を送りつつも、人間の内面や性を生々しく表現しながら、見る者に直感的な衝撃を与える作品を生み出しました。

2017年、日本国内で公開された映画作品『エゴン・シーレ 死と乙女』では、エゴン・シーレの生涯のうちウィーン美術アカデミーを中退して仲間たちと「新芸術集団」を結成し、1910年から1918年に病死するまでを、モデルとなった女性たちとの関係を中心に病死直前の数日間の姿を交えながら描いています。

動画配信サービスなどでご覧になれるので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。

30年ぶりとなるエゴン・シーレの作品50点が集結!

《ほおずきの実のある自画像》エゴン・シーレ 1912年 レオポルド美術館蔵

現在、30年ぶりとなるエゴン・シーレの作品50点が集結する大規模な展覧会が、上野・東京都美術館にて開催されています。

会場では、220点以上ものエゴン・シーレの作品を所蔵し、世界最大のコレクションで知られるレオポルド美術館(ウィーン)の所蔵作品を中心に、有名な作品である『ほおずきの実のある自画像』など、初期から晩年までの油彩や素描50点を通して、シーレの激動の画家人生を振り返ります。

展示風景

また、合わせてクリムトやモーザー、ゲルストル、ココシュカをはじめとする、強烈な個性を放つ同時代の作家たちによる、約120点の作品を展示し、ウィーン世紀末美術の諸相を紹介しています。

全体的にエゴン・シーレに焦点を当てながらも、同時代の作家たちによる作品も展示することで、普遍的な時代の共通性が感じられるだけでなく、その中にもシーレ独自の表現を追求している様子が、見る者を捉えては離さない人間の内面をえぐるような生々しい作品から伺えることでしょう。

年代、写真、言葉、作品…エゴン・シーレが身近に感じられる展示構成

展示風景

初期から晩年までの作品だけでなく、年代、写真、言葉も合わせて構成に組み込まれていることで創作の背景に触れることができ、より身近に感じられました。

「この年代にはどんな言葉を残しているんだろうか…」「この年代にはどんな作品を描いたんだろうか…」…鑑賞者を引き込み、エゴン・シーレの激動の画家人生を疑似体験できる展示構成。

1918年の『すべての芸術家は詩人でなければならない』という言葉にある通り、どの言葉もシーレの思想や独自の哲学が垣間見え、その強い言葉と同期するようにどんどん生々しさを増し、独自の表現を模索しながら挑戦を繰り返す作品からは、彼の人間性にも触れられて誰しもが惹きつけられてしまうことでしょう。

《吹き荒れる風の中の枝の木(冬の木)》エゴン・シーレ 1912年 レオポルド美術館蔵

特に筆者のおすすめはキリスト教絵画の伝統的な聖母子像を思わせる構図に収められた《母と子》。

《母と子》エゴン・シーレ 1912年 レオポルド美術館蔵

目と口をしっかりと閉じた母親の表情は世界との断絶を感じさせますが、その一方目を見開いた子どもは恐怖心をあらわにしています。平和や愛情の象徴というより死や不安をほのめかしており、幼すぎた父の死などが影響を受けているのかと想像が膨らんでしまいます。

最後に…

《しゃがむ二人の女》エゴン・シーレ 1918年 (未完成)レオポルド美術館蔵

今回、シーレの早熟な人生、完成された表現、円熟した作品からは、言葉にできない孤独や苦悩を抱えていたこと、そして死が身近であったことなどが伺えます。

その作品が表すように28歳で亡くなってしまったシーレ…もしも、もう少し長く生きていたらどんな作品を描いていたのか、そんなことを想像せずにはいられません。

今と等しく大戦や疫病などで困難な時代、新しい表現に挑戦した人々の歩みが鑑賞できる本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか。


取材・撮影・文:新麻記子

展覧会情報

『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』 
会期:2023年1月26日(木)~4月9日(日)
会場:東京都美術館
   東京都台東区上野公園8-36
   アクセス:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成電鉄京成上野駅より徒歩10分
開館時間:9:30~17:30
※金曜日は20時まで開館
※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般2200円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1500円、高校生以下無料
※オンラインでの日時指定予約制
https://www.tobikan.jp
https://www.egonschiele2023.jp/

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新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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