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2021.12.9
タイガー立石ワールドを堪能せよ!大規模個展「大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!」レポート
現在、埼玉県立近代美術館とうらわ美術館にて「大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!」(2021年11月16日〜2022年1月16日)が共同開催されています。
目次
タイガー立石(本名:立石紘一(たていしこういち))は1960年代から90年代にかけて絵画、漫画、イラストレーション、絵本など幅広いジャンルで活躍し、国内外で大きな成果を残したアーティストです。その縦横無尽にジャンルをまたぐ独創的なスタイルは、現代の若いアーティストたちにも刺激を与え続けています。
生誕80周年を迎える2021年、全国3か所を巡回してきて、いよいよ最終会場の本展では、漫画や絵本の原画、関連資料が追加され、フィナーレを飾るにふさわしい大ボリュームの内容となっています。タイガー立石を知っている人にも知らない人にもおすすめしたい、過去最大規模の個展をレポートします。
膨大な量の作品を体感しながらタイガー立石の歩みをたどる
生涯で膨大な量の作品を手がけた立石。その歩みをたどることで「立石ワールド」の魅力に迫ります。
和製ポップアートの先駆けとして注目され、連載漫画も大人気
太平洋戦争がはじまった1941年に筑豊の炭鉱の街・伊田町(現・福岡県田川市)で生まれ、漫画や演劇を愛し、サーカスやディズニー映画を夢中で見ていた立石少年。中学時代に既に画家か図案家か漫画家になることを決意。1961年に大学進学のため上京。1963年に前衛芸術の牙城「読売アンデパンダン展」で玩具や流木を大画面にはりつけた作品を発表し、注目を浴びます。
《立石紘一のような》1964年 高松市美術館蔵(埼玉県立近代美術館で展示)
その後、時代や社会のイメージを組み合わせたインパクトのある絵画を制作し、和製ポップアートの先駆けとして高く評価されます。同じ頃に「タイガー立石」の筆名で新聞や雑誌に漫画を連載、セリフのないナンセンス漫画は海外でも紹介されました。
ミラノで「コマ割り絵画」を開発。イラストレーションの仕事でも活躍
しかし立石は日本で売れっ子漫画家になりそうな危機を感じ、1969年にイタリア、ミラノに移住、再び絵画に取り組みます。
《Cubic Worlds》1973年 うらわ美術館 埼玉県立近代美術館蔵(うらわ美術館・埼玉県立近代美術館 両館で展示)
漫画のように画面を分割し、時間とストーリーの要素を盛り込んだ「コマ割り絵画」を精力的に制作する一方、建築やデザイン界からも注目され、イラストレーションの仕事でも活躍します。
再び日本へ。絵本、陶彫、掛け軸、巻物。多岐にわたる表現に挑戦
またイラストレーションの仕事で売れっ子になることにアイデンティティの危機を感じた立石は、13年間のミラノ生活を終え1982年に帰国。
《百虎紀行》1989年 田川市美術館蔵(埼玉県立近代美術館で展示)
漫画やイラストの仕事をしつつ、絵画制作にも注力します。この頃、絵本の制作を開始し1984年から晩年までほぼ1年に1冊のペースで発表しました。
1990年には「立石大河亞」と改名(絵本はタイガー立石の名義のまま)。陶彫作品や掛け軸や巻物などにも挑戦し、56歳の若さで亡くなるまで旺盛な創作意欲で作品を生み出し続けました。
埼玉県立近代美術館とうらわ美術館、共同開催
今回は2館同時開催ということで、それぞれの美術館のフォーカスポイントが違う点も注目です。
埼玉県立近代美術館
埼玉県立近代美術館では画業を全体的に回顧。大型の油絵が多く展示され、立石が描き出す迫力ある奇想天外な世界をじっくり鑑賞できます。
明治、大正、昭和の時代を描いた3部作《明治青雲高雲》《大正伍萬浪漫》《昭和素敵大敵》は圧巻の迫力。画面には各時代の人物や美術作品のイメージがぎっしり散りばめられ、隅から隅まで見逃せません。
下絵も展示されています。
これまであまり紹介されることのなかったイタリア時代についても、アイデアノートやラフ、手帳などの資料を交え詳しく紹介され、立石の制作工程や活動の裏側を知ることができます。
大画面で制作されたコマ割り絵画は人気で次々に売れ個人の手に渡り所在不明のものも多いですが、当時100点ほど制作されたそう。
《Peacock Moon》1979年 埼玉県立近代美術館 撮影可能エリアにて(うらわ美術館でも展示)
立石はその一部を自選し、自身によってシルクスクリーンの版画に再構築。10版以上を用いたシルクスクリーンのコマ割り絵画は油彩よりも鮮明な色彩が印象的です。(コマ割り絵画はうらわ美術館でも展示されています)
うらわ美術館
「本をめぐるアート」をコレクションのテーマとするうらわ美術館では立石の全画業を漫画や絵本の視点から辿ります。
晩年に至るまで断続的に制作されたたくさんの漫画や、絵本の原画、関連資料を展示。絵画と織り交ぜて展示され、ジャンルを自由に行き来する立石の表現を感じ取ることができます。
1967年から連載していた漫画「コンニャロ商会」の原画も展示。作中によく登場する「ニャロメ」という言葉は、当時交流のあった漫画家の赤塚不二夫さんの作品にでてくるキャラの名前の由来となっています。
1984年にはじめて制作された絵本『とらのゆめ』の原画全ページと、アイデアノートや試作本も展示されています。この絵本は知っている!という人も多いのではないでしょうか。
同じ部屋には「虎」がモチーフの絵画が展示されており、同じモチーフを繰り返し描き、新たな表現に何度も登場させる立石の作風が見てとれます。
1992年に発表された全6巻の絵巻物《水の巻》は現物の一部を展示(5・6巻。前期後期、展示替えあり)。全長約54mにおよぶ全貌は映像作品(映像・中川陽介/音・西原尚)となって3面の壁に投影されています。(現物・映像は埼玉県立近代美術館でも展示されています 1〜4巻。前期後期、展示替えあり)
「とら割」を活用して2館をはしごしよう
見応えたっぷりの2館。どちらも鑑賞するのにお得な「とら割」を活用しましょう。1会場目で「一般」または「大高生」のチケットを購入すると、2会場目の観覧料が200円割引になります。2会場目のチケット購入の際に、1会場目で配布される「とら割券」を忘れずに提示してくださいね。
本展では、多岐にわたる表現方法を自由自在に横断した立石の、一貫した作風や思想が感じとれるまたとないチャンス。タイガー立石という特異なアーティストの魅力をじっくり堪能できるこの機会をお見逃しなきよう。
埼玉県立近代美術館
所在地:〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9丁目30−1
アクセス:JR北浦和駅西口より徒歩3分(北浦和公園内)
開館時間:10:00~17:30(展示室への入場は17:00まで)
休館日:月曜日(2022年1月10日は開館)、12月27日~2022年1月6日
料金:一般1,100円/大高生880円/中学生以下無料
うらわ美術館
所在地:〒330-0062埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ3階
アクセス:JR浦和駅西口より徒歩7分
開館時間: 10:00〜17:00 (展示室への入場は16:30まで)金曜日・土曜日は10:00〜20:00(展示室への入場は19:30まで)
休館日:月曜日(2022年1月10日は開館)、12月27日~2022年1月4日、11日
料金:一般620円/大高生410円/中学生以下無料
画像ギャラリー
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絵本やインスタレーションアート系の展示が好きなデザイナーです。趣味は街中の銅像探し。
藤子・F・不二雄先生を大尊敬しています。その他好きなアーティストはミヒャエル・ゾーヴァさん、馬場のぼるさん、三沢厚彦さんなど。
絵本やインスタレーションアート系の展示が好きなデザイナーです。趣味は街中の銅像探し。
藤子・F・不二雄先生を大尊敬しています。その他好きなアーティストはミヒャエル・ゾーヴァさん、馬場のぼるさん、三沢厚彦さんなど。